エピローグ

「夏企画再開のツイートをしたのですね?」

「うん、頑張ったよ! 褒めて褒めて~」

 りんこちゃんは安堵のため息を吐いた。

 ちなみに、電話をしている。通話先はミチル。今はボイスチェンジャーを使ったような低い声だ。

「ひどい目にあったねー。慣れない事はしない方がいいねー」

「そういう問題ではないのですが……。まあ、夏企画が行われるようで良かったですわ」

「うんうん、りんこちゃんもお疲れ様ー。ゆっくりしてねー」

「ええ、そうしますわ」

 通話を切る。

 りんこちゃんは自宅のベッドでくつろぎながら、日帰りで温泉旅行を楽しんだと自分に言い聞かせていた。邪神の家族は思い出すのもおぞましい。

 ふと、スマホが鳴る。

 少佐だ。

「もしもしりんこ殿。飛行機に乗ったである」

「え、今頃どこに行きますの?」

「熱海に決まっているである」

「もう解決しましたわ」

 しばし沈黙。

 少佐は豪快に笑った。

「さすがはりんこ殿! 頼れるシステム開発者である!」

「間違っていないのに、見当はずれな褒め言葉に聞こえますわ」

「細かい事は気にしないのが良いである。次こそは役に立つから、よろしくである!」

「ええ、期待しておりますわ」

 りんこちゃんは微笑んで、通話を切った。

 ミチル企画には、確かにどうしようもない邪神がいる。

 しかし、魅力あふれる参加者や運営がいる。

 だから、続けられるのかもしれない。

「良い夢が見れそうですわ」

 りんこちゃんはそっと両目を閉じる。

 

 ふと、轟音が鳴る。


 天井にヒビが入り、どんどん割れていく。

 そして、ついに、天井に巨大な穴があいた。

「じゃっしーん☆」

 現れたのは、どす黒いヘドロだった。

 これこそミチルの真の姿! 邪悪を体現したかのようなだみ声ボイスが響く。

「レッド・◯ルー♪ 仕事を授けるー♪」

「丁重にお断り申し上げますわ。天井の修理をしてくださいまし」

「夏企画の投稿室は、早めにリハができるようにするのだー♪ 面白いのだー♪」

「邪神にしてはまともな要求ですが……天井の修理を」

「さらばなのだー☆」

 何をしたかったのか分からない邪神は、空をふよふよと飛び去っていった。

 りんこちゃんは涙目でパソコンを開く。

「もぅ! ゆっくりできると思いましたのに」

 頑張れりんこ、負けるなりんこ!

 少佐も熱海から応援しているぞ!!


※ちなみに、天井の修理代はミチルパパとミチルママが出してくれたよ。「邪悪なやつですみません」だそうだ。やったね☆

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ミチル企画ヒストリー~夏企画を守れ!~ 今晩葉ミチル @konmitiru123

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