46.戦いの終わり
側近が抱き抱えている賢者はどうやら気を失っているようだった。
「こいつどうすんだよ。」
「多分魔王様がこれ以上勇者に回復されたくないからと落としてきたのだと思います。ですから賢者を玉座の間に近づけるわけにはいきません。ですからバティとウィッチのお二人で賢者とあそこに寝てる2人の見張りをお願いできませんか?」
そう言って側近はタカシとバーデンがいる方を指した。
「あたいらはそれで構わないんだけど側近さんはどうすんだい?」
「私は魔王様の手助けに向かいます。」
そう言ってタカシたちの隣に賢者を横たえる。
「ならよ、俺も行くぜ。こういうのは多い方がいいだろ?」
「ダメです。」
「なんでだよ!もしこれでお前ら2人、共倒れにでもなっちまったらお前ら魔物も俺たち人間も救われねぇんだぞ!?それだ···。」
側近がその先は言わせないとばかりにバティの口に手をやる。
「ご心配ありがとうございます。ですがそれは杞憂に終わります。」
「なんでだよ···。」
バティは不満たらたらといった顔をしている。
それに側近は笑顔で返す。
「根拠なんて何もありません。1度やられている身で何を言っているんだと思われるかもしれませんが今の私には自信しかないのです。勇者の強さは重々承知しております。私に対しては本気じゃなかったことも分かってます。でも今は負ける気は全くしないのです。いえ、正確には|魔王様なら(・・・・・)何があっても勝つという自信があるのです。」
これに対してバティは怒りとも呆れとも取れる顔をして答える。
「な、何言ってやが···。」
それも今度はウィッチの手によって止められてしまった。
「あたいも同じ気持ちだよ。側近の言う通りだ。それにあの方はあたいたちの王なんだ。こんなところで負けるような人じゃない。」
するとバティは半ば諦めたようにそっぽを向いてしまった。
「わかったよ。仕方ねぇ。とにかくこいつらが動かねぇように見てりゃいいんだろ?たしかに見張りにも人数がいるしな。そのかわり。」
ここで一旦言葉を切り、側近を力強くみる。
「死んだら許さねぇぞ。何がなんでも勝ってきてくれ。」
「えぇ。もちろんです。ではここは任せます。」
そう言って側近は玉座の間を目指して走っていった。
全速力で魔王の元へと向かう。
1度はやられた相手。
恐怖がないといえばそれは大きな嘘となる。
それでも、いや、だからこそ側近は魔王の元へと急いだ。
度々戦闘による衝撃音が聞こえてくる。
その音がより一層側近を急がせる。
玉座の間の前にある廊下に辿りついた時それは聞こえてきた。
「「決めてやる!!!」」
その声に一拍ほど遅れて拳と拳がぶつかって砕け散ったような凄まじい衝撃音が廊下中を駆け巡った。
―――――――――
2人の声が重なるのと同時、息をぴったりと合わせたかのように僕とハヤタは飛び出した。
そしてそのまま両者が右拳を振り上げて真っ直ぐに放つ。
“グシャッ!!!”
両者の骨が砕けた音が部屋中に鳴り響く。
それに続いて壁に激突する音と床に倒れ込む音が聞こえてきた。
それを最後に玉座の間は静寂に包まれる。
僕の視界も次第に暗くぼやけていく。
側近が慌てた顔で何かを言っているのが見えた気がしたけどもう何も聞こえてこない。
そのまま僕は意識を失った。
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