36.ヴァンパイア飯

 数分待つと食事が運ばれてきた。

 この山でとれたであろうキノコと何かは分からないけど動物の肉が入ったスープ、葉野菜のサラダが今日のメニューだった。


「ではどうぞ、召し上がってください。」

「いっただきまーす!」


 そう言ってバティはがっつき始めた。

 もうちょっと落ち着いて食べればいいのにと思いつつ僕も食べ始めた。

 この世界の人たちは料理をみな習うのだろうか、誰が作ってもほんとに美味しい。


「この肉はなんだい?」


 ウィッチも美味しそうに食べながら聞いた。


「あぁ、それはこの山でとれたうさぎの肉だよ。仕掛けをしとくと次の日の朝にはたいがいかかってる。どうだ? 美味いだろ。」

「あぁ美味しいよ。」


 そう言ってまた黙々と食べ始めた。


 そこからは他愛もない世間話やヴァンパイアたちが城から出てからの状況の話となった。

 でもほとんどのことはコウモリの偵察で彼らも知っていた。


 こうして美味しい食事を終え、用意されていた部屋に通された。

 部屋と言ってもベッドとタンスが1つ置かれただけの質素なものだった。

 壁や天井は元々洞窟だったため、ゴツゴツした岩でできている。

 横になると1日の疲れがドッと押し寄せてきた。

 目をつぶるとそのまま深い眠りに落ちていった。



 目が覚めるとゴツゴツした岩の天井が見えた。

 こちらの世界に来て7度目の朝はいつもと違う天井で迎えた。

 昨日話し合いをした場所に行くとバティと老ドラゴンが長とともに朝食をとっていた。


「おっ、魔王も起きたか。来てみろよ。このパンめっちゃ美味いぞ。」


 見るとバティは両手にパンを持っていた。

 そこまで食い意地をはらなくてもいい気はするが長はニコニコしているので良しとした。

 僕も席につき、パンを食べ始める。

 バティの言う通りめちゃくちゃ美味い。

 少しするとウィッチも起きてきた。

 みんな揃ったところで長が話を始めた。


「みなさんお揃いのようなので話を始めます。まず、その潜入作戦に我々から参加させる人物を紹介します。サリーとデニスです。ご存知の通りデグリア山の入口から案内をしていた2人です。彼らは魔王様の帰路から同行させます。」

「わかった。長たちはどうするの?」

「我々はここの片付けや会議だったり色々することが残ってますのでそれを片付けてから城に戻ります。3日もあればそちらに着くと思います。」

「じゃあそういうことで。みんな食べ終わったみたいだしそろそろ僕らは出ることにするよ。」

「はい。ではサリーとデニスを呼んで来ます。」


 するとコウモリが1匹、右側の入口側の通路に飛んでいった。

 5分もしないうちに2人は出てきた。


「じゃあサリーとデニス。よろしくね。」

「こちらこそよろしくお願いします。」

「じゃあみんな、帰ろう。」

「おう。」


 バティがパンを見ながら答えた。

 どうやらバティはこのパンにハマってしまったらしい。


「残ってるパンは弁当替わりに持って行ってください。」

「ほんとにいいのか!?」

「えぇ。もちろんです。」

「ありがとう!」


 バティは目をキラキラさせながらパンを袋に詰めた。


「じゃあね。また城で会おう。」


 そう言って僕とバティは見送りに来てくれたヴァンパイアたちに手を振った。

 こうして僕らは城へと戻る旅に出た。

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