37.壊滅
僕、バティ、ウィッチ、老ドラゴン、ゴーレム3人に加えて新たにヴァンパイアのサリーとデニスが仲間に加わって9人で城に帰ることになった。
今日は昨日に比べてだいぶ気温が低い。
雲ひとつない綺麗な青空が広がっていた。
「じゃあ改めてサリーとデニス。よろしくね。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
2人揃ってそう言った。
「でもなんで2人が選ばれたの?」
「これはあくまで私の推測ですが私たち2人が隠密部隊の隊長と副隊長だからだと思います。私が隊長でデニスは副隊長です。」
「なるほどね。潜入に関してはプロってことか。それは心強いよ。」
「ありがとうございます。精一杯頑張ります。」
「隊長、副隊長ってことはコウモリの数も多いの? 」
「私もデニスも2匹です。ちなみに長は
10匹もコウモリを従えています。」
「そんなに!? やっぱすごい人だね。」
これで話が終わると僕たちはまた黙々と歩き出した。
気温が低いので昨日よりもだいぶ速く進んでいる。
8時に出発したので1時には城に着くだろう。
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昼食のパンを食べ終えいよいよ城が見えてきた。
「さぁもうちょっとだ。帰ってきたよ。」
「やった。これでまた料理長さんの飯が食えるぞ。」
バティはほんとに食べることしか考えてないのかもしれない。
サリーとデニスは久々に帰ってきたためか少し緊張した面持ちに見える。
みんなの反応も少し心配なのかもしれない。
すると老ドラゴンが立ち止まって目を見開いて何かを見ている。
「······? どうしたの? 」
「魔王様、あれを見てください。煙が出ております。」
老ドラゴンが指を指す方向をよく見ると城下町の数箇所から黒煙が立ち込めていた。
「あんな所に煙が出るようなものがあったっけ? 」
「いえ、あれは|魔法(・・)で燃やした時に出る煙に見えますわ。」
ウィッチがそう答えた。
「ってことは···敵襲!? 人間が僕らのいない間に攻めてきたってことじゃない!? 」
「恐らく、そのようです。」
ウィッチは苦虫を噛み潰したような悔しそうな顔をしている。
「でも昨日の時点で偵察からはなんの報告もなかったはずなのに···。」
するとバティがゆっくりと口を開いた。
「···勇者が来たんだろうな。」
「勇者? どういうこと? 」
「勇者はな、転移魔法が使えるんだよ。場所のイメージが出来ればどこでも飛んでいける。勇者に任命された時に女神の加護を受ける儀式をするんだけどな、その時に勇者だけはその転移魔法も授けられるんだ。」
「そんな···。とにかく急ごう! サリーとデニスはコウモリを飛ばして様子を見てきて! 」
「はい!」
すると纏っていたマントの裏から2匹ずつのコウモリが全速力で飛んでいった。
「ゴーレムたちは荷物を必要最小限まで減らしておいて! とりあえず水と治療道具さえあればなんとかなるから。」
「わかりました。」
ここから僕らは全速力で城へと向かった。
城下町につくと人の気配がない。
家屋は所々全壊しているものがあり、大半は燃やされている。
「酷い···。勇者って正義の味方で人格者なんじゃないの?」
「あぁ。|人間にとって(・・・・・・)はそうだ。でも実際は自分の経験値のために無抵抗な魔物だろうが普通に暮らしている魔物だろうがこうやってお構い無しに殺していくやつだ。まぁそれが人間、いや|王族にとって(・・・・・・)は正義なんだけどな。」
言葉を失ってしまった。
昨日ここを出る時にはみんな明るく送り出してくれた。
この前側近と一緒に遊んだ子どもたちもいつも優しくしてくれる八百屋のおばちゃんも血を流して倒れていた。
助からないことは見てすぐにわかった。
色々なところで兵も死んでいる。
多分大半はこの町で死んでいるだろう。
「老ドラゴン、生きてる人を探して治療をしてあげて。1人でも多く助けないと···。ゴーレムたちも手伝って。」
「わかりました。魔王様、気をしっかり持ってくだされよ。落ち込むのは後ですぞ。」
「うん。わかってる。」
城からも煙が上がっている。
至る所で兵が死んでいる。
側近は無事だろうか。
何か嫌な予感がする。
「ねぇ、勇者はどこだろう。」
「玉座だと思います。」
「わかった。行こう。」
玉座はあることは知ってたけどあそこに座るのは恥ずかしいからという理由で1度も座っていない。
大急ぎで僕らは玉座の間へと向かった。
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