22.明るくなった城下町
時計を見ると現在10時半。
昼食まではまだ時間がある。
「ねぇ側近。ちょっと城下町見に行かない? 」
「今回は私もご一緒してもよろしいのですか? 」
「うん。お願い。」
「わかりました。では行きましょう。」
そうして僕は一昨日ぶりの城下町へと向かった。
門を出るときに門番のチェックを受け、僕らは城の外へ出た。
「ちゃんと門番も仕事してくれてるね。これならとりあえずは安心。」
「そうですね。例の件もこのまま杞憂で終わってくれると助かるのですが···。」
町に出るといつも通り活気に溢れていた。
いや、むしろ一昨日よりも街の雰囲気が明るい。
歩いているとこの前の八百屋のおばちゃんを見つけた。
むこうがこちらに気づき挨拶をしてくれた。
「魔王様こんにちは。」
「こんにちは。なんかみんなこの前よりも元気そうに見えるね。」
「えぇそれは当然でございます。魔王様たちのお陰で人間軍を追い払うことができて、私たちも助かったからでございます。本当に勇気をもらえました。町のみんなにも笑顔が戻ってきました。ありがとうございます。」
そう言って深々と頭を下げた。
僕たちの戦いが城下町にも勇気を与えていたとは考えてもいなかったがそうだとわかるとほんとに嬉しい。
「それはほんとに良かった。そう言ってもらえると戦ってるみんなも喜ぶと思うよ。だからこちらこそありがとう。それじゃあ僕たちはそろそろ行くね。お仕事頑張って。」
「もったいないお言葉ありがとうございます。」
こうして僕は手を振って別れた。
「あの勝ちがみんなに勇気を与えられたって聞いてなんか嬉しくなったよ。」
「私もです。もっとこの笑顔を増やすために頑張らなくてはいけませんね。」
「うん。そうだね。僕たちが頑張らなきゃね。」
そうしてまた歩きだす。
おばちゃんの言ってた通り町のみんな以前よりも明るい笑顔を見せていた。
それを守るためにも頑張らなきゃ、と気持ちが引き締まる。
するとゴブリンの子どもがこちらに走ってきた。
「まおーさま〜。こんにちは〜。」
「こんにちは。」
すると子どもが走ってきた方向からお母さんらしきゴブリンも走ってくる。
「魔王様、急にうちの子が走っていってしまいまして、申し訳ありません。うちの子が何か失礼なことしませんでしたか?」
息を切らしながら母親は謝ってきた。
謝ることなんて何も無いのにと思いながら微笑んで答えた。
「大丈夫ですよ。子どもに好かれるのは嬉しいことですし。それに何より子どもは元気が1番。この子ぐらい元気じゃなきゃ。」
「そう言って貰えると助かります。本当にありがとうございます。」
「まおーさまー。こっちに来て一緒に遊ぼ? 友だちもいっぱいいるんだ。」
「こら。失礼なことを言うもんじゃない! 魔王様はお忙しいのだからそんなこと言うもんじゃありませんよ。」
「いえいえ。いいんですよ。ねぇ側近。今何時? 」
「11時20分です。10分だけなら遊んであげてもよろしいですよ。」
するとその子の顔は晴れやかになっていった。
「なら10分だけだけど遊ぼっか。もちろん側近も一緒だよ。」
「やったー!! わーい! 」
「え、私もですか? 」
「もちろん。」
「わ、わかりました···。」
「本当にわがままを聞いて頂いてありがとうございます。」
そう言って母親は深く頭を下げた。
そうして近くの広場のようなところへ行くとゴブリンの子どもたちが10人ぐらいいて、サッカーのようなことをしてた。
「じゃあまおーさまは赤チームでそっきんさまは青チームね。」
「よーし。頑張ろう。」
こうして子どもたちとサッカーをして遊んだ。
小さい頃は僕も隼人たちとサッカーたくさんしたなぁなんて思いながら。
昔の感覚を思い出してドリブルをしてみると案外体は覚えているらしくすいすいできた。
逆に側近はというとこういう遊びの経験がないのか思うようにボールが蹴れず四苦八苦している。
それを見た子どもたちは大笑い。
これには側近も苦笑いを浮かべるしかなかった。
こういう楽しい時の時間というのはあっという間に過ぎていくものですぐに10分は経ってしまった。
「まおーさま、バイバーイ。」
「うん。またね。」
こうして楽しい時間を過ごした僕と少ししか動いてないはずなのにヘトヘトに疲れている側近は城へ帰った。
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