23.老ドラゴンの同行

 城へ帰ると昼食の準備が完了していた。

 いつも通りの美味しい食事を手早く済ませ、ウィッチが来るのを待った。

 集合時間の10分前にウィッチは食堂へと入ってきた。

 流石は隊長だと思う。


「じゃあみんな揃ったしちょっと早いけど老ドラゴンととこに行こうか。」

「えぇ行きましょう。」


 そうして僕らは訓練所へ向かった。


「老ドラゴンは了承してくれるかなぁ。」

「それは魔王様の説得力次第ですわ。」

「やっぱそうだよなぁ…。僕喋るの下手だから心配。」

「大丈夫です。私も微力ながらお手伝い致しますので。」

「側近がそう言ってくれるとなんか心強いよ。」


 そんな会話をしていると訓練所に到着した。

 兵士たちが大きな掛け声を出しながら一生懸命訓練をしている。

 すると例のごとく1人が僕らに気づき、挨拶をするとほかの兵も口々にこちらに挨拶をしてきた。


「僕らのことは気にせず訓練、頑張ってください。」

「はい!!」


 そうしてまた大きな声を響かせて訓練を再開した。

 すると奥から老ドラゴンが歩いてくるのが見えた。

 相変わらずしっかりとした姿勢で歩いている。


「魔王様いらっしゃいませ。今日はどういった御用時でございますか? 」

「実はね、老ドラゴンに協力してほしいことがあるんだ。」

「なんでございましょうか。」

「今後の戦いにおいて僕らはヴァンパイアの力を借りようと思ってる。そこで明日、ヴァンパイアたちに協力してもらうために交渉に行くんだけどそれに老ドラゴンも同行してほしいんだ。どう? 来てくれない?」


 そう言うと老ドラゴンは少し考える様子を見せた。


「それはどのくらいの日数がかかりますか? 」

「どれだけ少なく見積もっても2日はかかると思う。片道30kmあるから。」

「そうですか···。そのぐらいの距離であれば歩くことに関しては全く問題ないのですが2日もここを開けるのはちょっと心配なのですわ。」

「ならここを誰かに任せて行くとかはできないの? 」

「そうですなぁ···。」


 そう言ってまた考え始めた。


「ここではどういった仕事をこなせばよろしいのですか? それさえ分かれば私が引き受けようと思うのですが。」

 

 側近がそう言うとまた少し考え始めた。


「そうですな。では側近殿にお願いしますわ。側近殿は自分の仕事もあるでしょうから3時間に1回、30分ほどここで様子を見ていて下さい。何か指導を求められればその都度教えてやってください。でもみんな毎日自分のやるべきことを積み重ねている者達なので特にすることもないとは思います。」

「わかりました。私にお任せ下さい。」

「ならお願いしますわ。」

「じゃあ決まりだね。側近はごめんけどここの仕事もお願いします。」

「承知しました。」

「なら出発は明日ということで。」

「わかりました。」


 こうして老ドラゴンの同行も本人の承諾が得られた。

 いよいよ明日はヴァンパイアたちの説得だ。

 少し緊張しながら僕は今日の仕事を終えた。

 明日からは長い距離を歩くことになるので今日は早めに就寝することにした。

 緊張でなかなか寝付けなかったのだが···。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る