21.ヴァンパイア
会議が始まるとすぐに二番隊隊長のゴブリンが手を挙げた。
「昨日の戦法はほんとうに優れたものだったと言えると思います。ですがあれも1度バレてしまえば対策をたてられ、2度目は使えないでしょう。魔王様は次の策も考えてあるのでしょうか? 」
「いや、何も考えてない。僕もあれから少し考えてみたんだけどなかなかいい案が浮かばなくて。」
すると四番隊隊長のウィッチが口を開いた。
「ヴァンパイアの手を借りるのはどうかね? あいつらがいればこの戦いもっと楽になるわ。」
その言葉にみんなが目を丸くした。
この世界にヴァンパイアがいるなんて話は聞いたことがなかった。
もちろん城の中でも見たことがない。
「そのヴァンパイアってどこにいるか分かるの? 」
僕の質問にウィッチが答える。
「あたいらにも正確な居場所までは分からないけどだいたいの目星はついてますわ。」
「じゃあ、説明をお願い。」
すると五番隊隊長のデーモンが慌てたように立ち上がる。
「ちょ、ちょっと待ってください。ほんとにあいつらの手を借りるんですか? あいつらはこの戦いが始まってすぐここから逃げ出した臆病な奴らですよ? いくら力があろうとそんな臆病な奴らじゃやられるのがオチですよ。」
ウィッチは溜息をひとつついてこれに返答した。
「あんたはあいつらがなんで逃げたのか知ってるのかい? 」
「それは知らんが···。」
「ほんとは言いたくなかったんだけどね。あんたらの説得をするためには言わんといかんね。···」
___________________________________
「···そういう事だったのか···。」
それならヴァンパイアたちを説得して僕らと一緒に戦ってもらえると思った。
以前の戦い方なら無理だけど僕なら説得できる。
そう思った。
彼らがどれほどの力を持つのか僕はまだ知らないがここにいる隊長たちの様子を見れば十分頼れる存在であることははっきりとわかる。
「ならまず、ヴァンパイアたちを仲間に引き込もう。それでヴァンパイアたちは今どこにいると思うの? 」
「あいつらは今、この魔王城から北に30km進んだところにある山の中腹に潜んでいると思う。」
「なら説得に行くためのパーティを編成しようと思う。僕とウィッチとあと訓練所の責任者の老ドラゴン。この3人で行こうと思う。」
すると側近が近づいてきた。
「私は行かなくてもよろしいのですか? 」
「うん。側近は僕がいない間のここの指揮をお願い。もし人間が攻めてきても側近なら任せられる。」
「承知しました。どうかご無事で。」
「うん。分かってる。」
「しかしどうして老ドラゴンを連れていかれるのですか? 」
「あの人なら長い間ここにいてヴァンパイアたちとも交流があるはず。それにこういう時に経験豊富なのはとても役立つから。」
「わかりました。では本日の会議はこれでお開きと致します。皆さんは昨日の疲れも溜まっているところだと思いますので休養をしっかりとってください。」
「あ、ウィッチはちょっと残ってくれる? 」
「わかりました。」
こうして会議が終わり、みんなが部屋から出ていった。
ウィッチと側近だけは残っている。
「このあと老ドラゴンが来てくれるか話に行こうと思うんだけどウィッチと側近も一緒に来て欲しい。」
「そのぐらいならお安い御用ですわ。あのじいさんとも久しぶりだし楽しみですわ。」
「じゃあ1時頃に食堂に集合で。」
「わかりました。」
そうして僕たちもこの部屋をあとにした。
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