17.勝利の雄叫び

 命令を出すとすぐにドラゴンとウィッチは両軍のあいだを炎で割いた。


「砲弾が飛んできても対応できる程度の位置まで下がらせて! 」

「了解しました! 」


 しかしどうして人間軍の統率がここまで完璧にとれているのだろうか。

 考えられることはただ一つ。


「本物の大将がまだいるのか。」

「恐らくそのようです。先程討ち取った大将は影武者ということでしょう。」


 だがそんなことを考えていても仕方がない。

 現に人間は再び僕たちの前に立ちはだかっているのだ。

 その事実だけは揺らぐことは無い。


「炎の壁を作り終えました。」

「そしたらさっきと同じで上空からの攻撃をして欲しい。無駄な殺しはせず敵の将校のみを落とすこと。頼んだよ! 」

「はい! 」


 そういって強く頷いたドラゴンとウィッチは再び空へと舞い上がった。

 成功を祈るしかない。

 そこで下を見下ろすと人間の砲撃が止んでいた。

 すると50名程が前に出てきた。

 何かするようだ。


「···っ!? まずい! 火を消される! 」


 気づいた時には遅かった。

 人間が水属性魔法を唱え、消火されてしまった。

 残っているウィッチに向けて声を張る。


「もう一度火属性魔法で炎の壁を作って!! 」


 もう一度両軍の眼前に炎が立ち上がる。

 人間軍の数人はこれに巻き込まれて火傷をおったようだ。

 しかし今はそこまで気にしていられない。

 このままではこちらが危ない。


 ドラゴン部隊、急いでくれ。


「ゴーレムは近くにある砲弾を敵陣に放り投げて! ゴブリンとデーモンは槍の投擲! ウィッチは炎の壁の修復! 」


 これで多少の時間稼ぎは可能なはずだ。

 予想通り相手は魔法の射程圏内から離れ、隙を伺っている。

 しかしこれもその場凌ぎでしかない。

 いずれ砲弾や槍は尽きる。

 それまでに敵将を落とし、退却まで持ち込まないといけない。


 見るとドラゴンとウィッチは上空で敵将を見つけ、攻撃態勢に入っていた。

 突如の急降下。

 相手ももちろん2度目だから空も警戒していた。

 弓矢の攻撃や魔法が飛び交う。

 それをドラゴンがうまい具合に避けながらウィッチの射程圏内まで直行した。

 ウィッチから魔法が放たれる。

 そして反転直上。

 すぐにドラゴンは踵を返し、空へと逃げる。


「人間軍が引いていきます! 」


 どれほどの敵将を落とせたかは分からないが今度こそ人間たちは軍を引き上げていった。

 今度こそ本当の勝利だ。


「やったぞォォォォ!!! 」

「オォォォ!!! 」


 色々なところから歓喜の声が湧きあがる。

 もう人間軍の姿は見えない。

 それを見て少しほっとした。


「全員! 帰るぞ!! 僕たちの勝ちだァァ!! 」

「よっしゃァァァァァァ!!! 」


 こうして僕の初陣は勝利で幕を閉じた。

 しかしこの時はまだ勝利の余韻に浸っており僕はまだ大事なことに気づいていなかったのだった···。

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