15.出撃
そして朝を迎えた。
3回目にもなれば少しは天井にも見慣れた。
人生でここまで緊張するのは初めてだと思う。
心臓が痛いほど強く拍動している。
それをおさえながら手早く着替えを済ませ、部屋を出た。
現在時刻は6時半。
出撃までは1時間半ある。
少し覚束無い足取りをしながら食堂へと向かった。
食堂につくと兵たちは軽い食事をとっていた。
そこには側近の姿もある。
「おはよう。準備はどう?」
「おはようございます。みな準備万端です。いつでもいけます。なので魔王様も朝食を済ませてしまってください。」
「そうしたいんだけど···緊張であまり欲しくないんだ。」
「無理にでも食べておくべきです。空腹は最大の敵となります。」
「わかった。」
そうして僕も席につき、食事をとった。
喉を通らないところを無理やり流し込む。
当然ながら味がわかるわけもない。
それでも必死にかきこむ。
食べ終わり、少し休憩すると出撃の30分前になった。
いよいよだ。
とても緊張する。
それをみんなには見せないようにしながら、みんなが集まっている前に立った。
「これから作戦を開始する! とにかく死なないこと。生きてください。それ以上僕からいうことは何もありません。」
そして僕は大きく息を吸った。
「全軍、出撃!!!! 」
「オォォォ!!! 」
それぞれの部隊が動き出した。
恐らく2時間ほど進めば人間軍と対峙することになる。
ドラゴン2人に斥候に行かせた。
人間が見えれば即座に知らせるよう、言ってある。
出撃してすぐ、僕と側近、ウィッチたちはドラゴンの背中に乗った。
空は思ったより心地よい。
ジェットコースターとは大違いの乗り心地だ。
そんな心地良い空の旅をする時間は突然なくなった。
さっき行かせたはずの斥候がもう帰ってきたのだ。
「報告します! 人間軍はもうすぐそこまで来ています! あと5分もすれば見える位置に来ています! 」
「···は? え、えぇ!? もう来てるの!? 」
「はい! そろそろ目視できる距離になります!」
おかしい。
12時ごろに到着するはずの軍がまだ9時にもなっていないのに城と目と鼻の先の距離にいる。
なぜだ···。
作戦が漏れたか?
見張りが実はスパイで虚偽の報告をしたのか?
特殊な移動手段を相手が持っていのか?
うーん、わからん。
···でもそんなこといくら考えたって答えが出るわけじゃないな。
作戦に集中しよう。
「時間は想定外だったけどこのまま作戦を実行して! 慌てずに自分のやるべき事をするよう伝達を!」
「はっ!」
そう威勢よく返事をするとドラゴンは全速力で仲間の元へ飛んでいった。
こうして僕の初陣は波乱の幕開けとなったのだった。
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