12.訓練所

 食堂に場を移し会議の参加者全員で昼食をとった。

 やはり大人数でワイワイしながら食べると美味しいものだと思った。

 ふいに隼人たち元いた世界の友だちを思い出し、寂しく思う。

 彼らは今どうしてるだろうか。

 家族は心配していないだろうか。

 そんなことに思いを馳せる。

 でもその思いを無理矢理打ち消す。

 その事を考えたって帰れるわけじゃない。


 今すべきことを大切にしなきゃ。

 じゃないと僕が死んでしまう。

 あの優しい人たちが死んでしまう。


 そう思う。

 気が付くとみな昼食を終えて仕事へと戻っており、ここには僕と側近しか残っていなかった。


「部隊の再編は各隊長らに任せたが良かったか? 」

「うんいいよ。僕じゃ誰がどんな力を持ってるのか何もわからない。でもそのことも本当なら僕は知ってなくちゃいけないんだよね? 」

「あぁそうだな。」

「なら夕食までは兵の訓練の様子を見に行くことにするよ。いいでしょ? 」

「わかった。案内をしようか? 」

「うん。お願い。」


 こうして僕と側近は兵の訓練所へと向かった。

 訓練所は城の北側に隣接している。

 兵たちは連日の戦いの疲れを癒すとともに体がなまってしまわないように訓練を行っていた。

 エルフの回復魔法のお陰で身体的な疲労はある程度回復できるものの、精神的な疲労は魔法では癒せないらしい。

 兵たちはそれぞれの趣味を嗜んだり、睡眠をとったり友人との談笑を楽しんだりと個々がそれぞれ必要なことをしていた。


 1人が僕が来たことに気づき、礼をするとそれに続いてその場にいた全員がこちらに礼をした。


「僕のことは気にしないでいいからみんなは今やってることを続けて下さい。」

「ありがとうございます。」


 そう言うとみな元いた場所に戻り元々していたことを再開した。

 すると奥の方から年老いたドラゴンがこちらに歩いてくるのが見えた。

 側近に小声で尋ねる。


「あれは誰?」

「ここの責任者だ。40年ほどその仕事を続けている。」


 見た目とは違い、歩く姿勢、速さは若い人に劣らないものだった。


「魔王様、お久しぶりでございます。今日はどういったご用事でございますか? 」

「これと言って用事はないんだけどちょっと兵たちの様子を見ておこうと思って。」

「そうでしたか。それならばごゆっくりとどうぞ。今お茶を持ってきますのでお待ちください。」

「ありがとう。側近のお茶もお願いします。」

「かしこまりました。」


 そう言うとまた奥の方へと戻っていった。

 少しすると湯呑みを3つ、盆に載せてこちらへ歩いてきた。


「私も隣で見ていてもええですか?」

「もちろん。いいですよ。」


 そうして僕らは近くにあった長椅子に腰を下ろした。

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