11.作戦決定

「部隊の再編にはさっそく取り掛からせます。しかしそうなるとこれまでとっていた戦法は全て白紙となり、1から考える必要がありますがどのように致しましょうか?」


 側近がそう聞いてきた。

 これについても深く考えていた訳ではないがある程度の考えがあった。


「どうか1つの考えとして聞いてほしい。決してこれをしなさいというものじゃないから何か言いたいことがあればどんどん言ってもらってけっこうです。まず、倒すのは極力相手の将校のみにして欲しい。自分の命が危ないのに相手を殺すなとまでは言いませんができるだけ相手兵の戦死者が出ないように心がけてもらいたい。それには理由があるんだけど、将校さえ倒すことが出来れば相手の指揮系統は崩れるということがまずひとつ。もうひとつはこちらからは積極的に人を殺さないことでこちらには本当は戦いたいと思っている人がいないことを示すというもの。」


 そこで三番隊副隊長のゴーレムが手を挙げた。


「なぜそのような意思を示す必要があるのです? 」

「和解に持っていくため。こっちは元々攻撃を受けている側なわけだからこちらの要望はそれを辞めてもらうことにあるはず。それなら和解を飲んでもらうのが1番手っ取り早い。それにみんなも人殺しをしたいなんて思ってないでしょ? それなら極力その数を減らすべきだしその方がことがうまく進むと思う。」

「和解に持っていきたいのであれば圧倒的に相手を制圧して強引に飲ませることもできると思うのですが。」

「それはダメだ。まず今自分たちが劣勢だってことを理解しなきゃ。それなのに圧倒的になんてのは無理な話だし仮に出来たとして、和解に持っていってもそこには恨み辛みが残る。それじゃ本当の和解とは言えずにまた争いが起きてしまう。それだけは避けなきゃいけない。」

「魔王様はそこまで先のことを考えておられたのですか。浅はかな考えでした。それならばそのように致します。」


 ゴーレムを始めこの場にいるみんながこの意見には賛成してくれたようだ。

 ここで側近が手を挙げる。


「相手の将校のみを討つというのは良い考えだと思いますがどのようにするのが良いと思いますか? 少なくとも今まで通りの攻め方ではそんなことは不可能です。」


 すると一番隊隊長が声を出した。


「そこは俺たちの仕事だと思う。部隊を地上と空中に分けて地上部隊に敵が攻撃を仕掛けようとしているところに我々が空中から将校目掛けて攻撃すればいいだろう。」

「しかしそれでは相手が耐火装備を着ていれば打つ手なしとなってしまうのでは? 」

「うっ···。それはそうだな。」


 するとここで初めて四番隊隊長のウィッチが口を開いた。


「ならあたいらの出番じゃないかい? あんたらドラゴンがあたいらを乗せて敵将校が見えるところまで運んでくれればその後は魔法でどうとでもなるわ。もし相手が対魔法装備を着ていたとしてもその時はあんたらの火炎攻撃で倒すこともできるしね。」


 なるほど。

 そこまでは僕も考えていなかった。

 これができたら相手もこちらも犠牲を最小限に戦いを終わらせることが出来る。


「ならその戦法でいこう。」


 こうして会議が終わった。

 時計はもう午後3時を指している。

 そのことに気付いて初めて空腹を感じた。


「ではみなさん少し遅いですが昼食と致しましょう。」


 側近がそう言うと場の空気が少し穏やかになった。

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