コンティニュー後
すべて思い出した。
これはゲーム。オフラインゲーム。
十人のプレイヤーが集まり、一人の裏切り者を探すゲーム。
人狼ゲームに似ているが、違う。
役職や職業はもたないことだ。
能力や技術などもない。
心理戦に持ち込むか、怪物が唯一”変身”と”声マネ”を使って、プレイヤーを捕まえていくゲーム。
現にその術中にはまっていた。
”声マネ”でぼくらを惑わせた。
”変身”でぼくらの誰かに姿を変え、また丸太を仲間に変身させ、連れ去ったことも。
コンティニューというプレイヤーにおける唯一のスキル。監視者であるぬいぐるみに条件を満たせば、手に入ること言うこと。
条件は、怪物が”変身”・”声マネ”を使用してある状態で、プレイヤー数が三人以下(怪物覗く)の状態であること。
残り十日間切ってあること。
秘密基地にこもり、鍵をまだ入手していない状態であること。
それが条件だ。
秘密基地にこもり、十人中一人の怪物を探して秘密基地の奥にある扉の中へ押し込むことがクリアの秘訣。
鍵を手に入れることが最初の手がかり。
鍵はどこかにある。
最初は怪物が持っているが、五日以前に隠さないと、怪物自身の正体がみんなにバレてしまう(姿がバレると能力が一切使えなくなる)。
また、自転車は怪物の”変身”で形を変えられてしまうため、見つけたとしてもそこに鍵があるのかどうかも疑問を与えてしまう。
これらを踏まえたうえで、ゲームが開始した。
プレイヤーはゲームを開始したと同時に、怪物を覗いて、記憶をなくしてしまう。
秘密基地にこもり、怯える羊となって、怪物から逃げる方法を探すということになる。このとき、ぬいぐるみだけが手助けの役割となるが、詳細は伝えずただ「怪物から逃げろ」としか教わらないため、プレイヤーがいかにして怪物から逃げるかを探さないといけなくなる。
武器の使用は禁止。
体術をもって倒すしかないが、相手はその体術でも叶うかどうか恐ろしい体格に変身していたこともあって、そいつが怪物の正体だと気づくことがなかった。
食料はぬいぐるみから提供されていた。
衣類や備品とか様々なところも支援してくれていた。
また、一日ごとに仕送りされる。
食料だったり、怪物と思われるなにかしらのヒントだったりと様々。
森から出てはいけない。
森から出れば、強制的にゲームオーバー。最初のふたりと五人目の仲間はこれを破ったので退場となった。
***
さて、犯人はわかった。
コンティニューしたが、秘密基地に誘うことなく頭を勝ちなぐられ、再度リタイヤになってしまった。
同じコンティニューの力を手に入れていた怪物を倒せたとしても二度目はない。
すでに秘密を知っている怪物をどうやって秘密基地の奥へと誘い込むかを考えなくてはいけなかった。
残りの二人を救出し、ゲームは終了したが、怪物役がまかさの祥平くんだとは思いもしなかった。
「怪物の正体は大輔に変身した祥平くんだったんだな」
『正解』
「これで謎が解けたよ」
あの大輔が神流に「守ってやる」なんて、勇敢なことを言うのは変だった。大輔よりも祥平のほうが神流のことが好きであることは前々から知っている。一方で大輔は蛍のことが好きだった。
そんな大輔が神流に言うのはおかしいと思った。
『では、声がしたなぞは解けたか?』
「うん」
あのとき、大輔は生きていた。
秘密基地に帰ってこなかった。でも翌昼、森で大輔とすれ違う形でぶつかった。帰ってこなかったと思っていたのは祥平じゃなくて大輔だった。
祥平(怪物にやられた)→祥平(実は、大輔に変身していた)
声を出したのは大輔・竜介の声マネした祥平本人だった。広場で待ち、大輔たちが合流したのを見届け、丸太を神流に変身させ、自身も変身させて本当に怪物がいたことを信じさせた。
展望台から見つめていた蛍は気づいていたようだが、確信がないからあえて言えなかった。
そのあと、神流に化けてみんなと合流した。
このとき、神流は捕まえていない。まだ、駐車場にいた。
夜になり、秘密基地に戻るも神流(に化けた祥平)がいたので、近づくことができなかった。そのうえで、正体を知った。
駐車場で、先に本物の神流を抹殺した。
神流が探していたであろう鍵を手に入れるために泳がせておいた。
アイテムはプレイヤーにしか使えない。持つことができないため、プレイヤーである神流に託し、鍵を見つけたところで退場させた。
祥平のことだ、神流を退場させるのは、嫌だったのかもしれないが、このまま放置させて精神崩壊させるのも嫌だったんだろうと、個人的に思った。
駐車場で合流し、自転車から抜き取る振りをして、アスファルトの隙間からカギを取り出した。自転車はなにかを変身させたものだからだ。
大輔に渡せば、自身が怪物だと思われる可能性がある。いつもつるんでいた祥平はわかっていた。小細工が大輔には通用しないことを。
竜介に託すことで、正体を隠した。
神流に化けたため、言葉遣いがおかしくなった。
でも、これは誘いだ。
神流が怪物だと思わせて、実は蛍も怪物でしたと促すことができる。
神流が怪物で決まってしまえば、信憑性は低いが、もともと接点が少ない蛍を怪物に仕立て上げるのは簡単だ。ましてや、協力する線もあまり見受けられなかったため、騙すのは可能だろうと考えた。
でも、障害があった。
大輔は蛍のことが好きだ。
最初は信じていても、大輔と竜介のふたりが絡めば、いくら蛍が偽物だと言っても、信用性がない・言葉遣いのボロを出していることもあり、バレてしまう。
そこで、大輔を先に退場することにした。
大輔を森に誘い出し、罠なりにかけて気絶させ、怪物に変身させておいた。大輔に変身させ、森の中に誘い込み、変身が解くタイミングを見計らって怪物が大輔に変身している姿を見せつけた。
これですっかりとプレイヤーに変身することもできると証明することができた。そのあと、大輔を退場させ、神流に姿を戻って竜介に近づくだけだ。
竜介は歪んでいた。
蛍が怪物だと確証はなかった。でも、みんなと探索しなかったり力を欲しがらなかったりと怪しいところはいくつもあった。
それで、最終日になる前日の夜に蛍と一緒に退場となってしまったようだ。
鍵を見つけたにしても、怪物はすでにコンティニューをして再度戻ってきていた状態。
一人戻ってきたところで勝ち目がなく終わってしまった。
同じ力を手に入れた大輔はコンティニューを使うも、コンティニューで舞い戻ってきた怪物によってリタイヤされてしまったとぬいぐるみから聞いた。
怪物(祥平)→大輔(祥平)→丸太&怪物(祥平)→神流(祥平)→大輔(に怪物へ変身。自身は大輔に変身して竜介を連れてくる)→神流(祥平)という順だ。
この話はこれでおしまい。
十日間の秘密基地 にぃつな @Mdrac_Crou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます