残り――

 最後の日となった。

 もう終わった。ゲームは終わった。


 頭が妙にぐわんぐわんとする。

 周りの景色が妙に廻っているようにも見える。


 秘密基地から出て駐車場へ向かった。


 駐車場にはすでに仲間たちが集まっていた。


「おめでとう」


 一言でいえばそれだ。


「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」


 祝うことはなにひとつない。

 でも、ゲームに勝利した。


 もう辛くていいことはしなくていい。

 心配そうに親も駆けつけてくれた。


 良い日だ。


 ぬいぐるみに振り返り、こういった。


「ぼくの勝ちだ」


 ぬいぐるみはため息を吐き、こう返した。


『君の負けだよ。君は最後まで気づけなかった。初めから騙されているとも知らないで』


「ど、どういうこと…?」


『このゲームは生き残りをかけたゲームだ。君は仲間たちとこうして出会えた。君は、勝利したと思っているのだろうけど、実は怪物によって敗退している』


「え?」


『怪物に襲われ、ゲームオーバーとなった。残った二人は皮肉だな。実はゲームオーバーになったら無事に出られることも知らずに…』


「え、ええ…ど、どういうことだよ。だって、秘密基地でずっと耐えていたんだ。それでようやく解放されてきたんだ」


『頭を殴られたんだ。混乱するだろうな。文字通り、ここはコンティニューだ。以前に力を与えたをいま、ここで使うべきだ』


「ちから…まさか!」


『そうだ。”コンティニュー”。それがぼくからの力だ。このゲームは一度、捕まって負けて初めて理解する。ぼくたちはあくまで監視者だ。プレイヤーをただ眺め、正解にたどり着けるかどうかを見届ける。あのとき、力を託したのは、正解を握っているのに、選ぼうとしていないという点だ。君はおろかだ。その愚かさえ故のあやまち。さて、コンティニューするか』


 虎のぬいぐるみに問われる。


 ぼくは一瞬迷った。

 ぼくは答えにたどり着いたからだ。その答えがすぐ前にあったにもかかわらず、ぼくが手にすることを恐れた。


「ようやく、思い出したんだね」


 振り返った。

 そうだ、君のためだ。


 ぼくは”コンティニュー”を選択して、再び地獄の日へと舞い降りた。

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