第333話「龍人王」 セジン

 龍平永元九年春始。新大陸で新境天国などと構想を立ち上げて、あっさり打ち砕かれてから二年に迫る。あの龍人化したとはいえ本来の肉体――あれも実は仮初だったかもしれない――はかの地で骨になっているのだろう。

 魔都の戦いで首を断たれ、死に、目覚めた後は絵に集中している。新しい身体は己の年齢に見合った並の龍人である。

 自分には傀儡の術と比べれば下位に当たる分魂の術の才があった。魂の無い肉体に自分の魂、意識を移せるらしいが自発的に行ったことはない。その術は他者に施術して貰って別の肉体に復活する反魂受肉の術に繋がるので繰り返し死すという経験が出来た。これらを極めれば黒龍公主のように己の肉体をいくつも用意して実質の不老不死を実現出来ると見られる。

 身体を替える度に違和感はあるが記憶の混乱、欠損、自覚出来るものはない。何か代償を支払っている気はする。記憶を継承した、他人にも自分にも分からない全くの別人のような気もしなくもない。そもそもどこから魂という分からない概念的なものを引っ張り出してまたどこかへ入れるというのか? 真実を知っているのはあの約五千年妖怪ババアだけだ。

 ……ああ、もしかしたら本物がどこかに保存されていて、自分はその複製なのかもしれないな。どこかで本物が己の動きを見ているのかもしれない。

 さて、そんな些事よりも今ある脳内より褪せぬ内に描き切らねばならない絵がいくらでもある。下絵は全て仕上げ、諸所の色指定もして一つ一つ仕上げていく段階にあるが、それでも細部を忘れてしまいそうなのが恐いのだ。本当に本物がいるのならば今ここにやってきて堪らず手を出して筆を握っているはずだ。間違いない。ならば拘束でもされているのか?

 今はまず、一番にそのままのを忘れてしまいそうな龍道龍脈における長い苦難と苦痛、嫌気と呆け、山と谷、塩の砂漠と柱と嵐、赤い沼の洞穴、犠牲になった龍行軍の面々を思い出して描いているが、多くの記憶の割には描くことが少ない。変化に乏しいのだ。あの茫漠というか、虚無というか虚脱感、果てしなさを損なわずに描きたいがどうも絵にすると躍動感を得て、あの時に熱がこもっていたような印象になってしまう。赤いあの光景がどうも活力的になってしまうようだ。あの精神世界を筆運びで御せるか? 悩ましい。

 絵に集中するために、絵には関係無い情報も耳に入れている。気になることを知って気にしなくて良くするのだ。

 遂に和平条約、進展の運びとなった。帝国連邦との停戦条約を取り付けたサウ・ツェンリーが軍事境界線上の最大都市であるヘンバンジュにて条約締結に向けて動いている。仲介国のエデルトも含め、複数の外交官がかの都市に集まって条項、解釈を調整中。

 天政の伝統に外れないように和平を結ぶというのは負け戦ならば難しい作業だ。相手側に認めさせるような伝統的文言を作るというのは大変に繊細な作業になり、結果は大抵、第三者には理解が不能になる。字面だけを読んでも誤解が生じるようなことになるだろう。だから事前に話し合い、文言の解釈を共有する必要がある。天政の外、外地で完結する条約ならばその辺りが難しくないのだが、今回は内地が関わっている。文章に技術が必要になるが、そこはサウ・ツェンリーに任せておけば問題ないだろう。何か足りないところがあればあちらから要請が来る。後は邪魔しないようにするだけ。

 面白いことに帝国連邦側の外交代表団の中には両陸按察使テイセン・ファイユンなど、あちらに降伏して占領統治に協力している者達が含まれている。裏切りは許さない、などという幼稚な話を抜きにすれば色々と小手先が効く。敵対する両国に仕える、矛盾する立場というのは便利な役回りなのだ。特に天政においては。

 我々には理解が難しい共和革命派への理解も必要ということであのお豆ことピエターも出席している。今回の和平条約には直接的に絡まないがアマナ戦線におけるランマルカとの話し合いも今後必要になってくる。

 しかしピエター、黒龍公主の傀儡の術で愛玩動物化していたのかと思い込んでいたのだが、違うのか? 傀儡にしても頭の方は健全なままなのだろうか。まだまだあの術の全容は把握していない。把握させてこなかったからこそ確認出来るだけでも三千年以上黒幕として動いてこれたのだろう。しかしほぼ不老不死の政治存在など厄介なことだ。痴呆程度ならともかく慢性的な疑心暗鬼に罹ったら誰が最終的な治療を施すというのか。

 さて、しかし悩ましい。あえて墨一色、単色で……いやいや、嘘というよりそれは逃げか。絵にならぬ内心を描いてこそ画家ではないか? 色使いの工夫がそもそも腕の見せ所。黒と朱と紙の白の三色で仕上げる? それで歩きながら意識を失い、龍脈の分かれ道に迷い込んで行った者達のあの後ろ姿の倦怠さを出さねばならない。

 悩んで描くと描いている者達それぞれに悩みがあるようになってしまうな。悩みどころではなかった。精神が空気に溶かされていくようだったのだ。

 これはもっとこう、頭を呆けにして描いてみるか。つまり無心。無心で描く、そうか! 見えたぞ!

 白紙に対峙し、考えずに筆を振るう。

 とにかく振るう。

 どうだ?

 出来た!

「ははは」

 なんと乾いた絵だろう。汁気の一つもない絵だな。

 無想描き、会得せり!


■■■


 作業が一段落したので芸術照覧会へ赴く。無想に至ったせいかこう、頭がはっきりしない。極めるのも問題なのだな!

 今の姿は並の龍人同等なので角隠しの帽子でも被れば、多少は目立つが今のヤンルーではあれこれ指差されたりおっかな吃驚に平伏されたりはしない。

 行き交う人々、特に都会な女子の髪型が目に付く。自分が考案した髪型に近い物が多く見られるのだ。全く、いとも容易く文化を前進させてしまうのだから己も罪よの。

 絵画の新作を見て回る。自惚れからかもしれないが自分の模倣作が目立つ気がする。伝統的な描き方に拘る必要は無いという衝撃が伝わっていることは確実だ。

 画風を真似る、題材を真似る、大いに結構。それに固執すると独創性が無くなってくるが、そこを極めることも悪いことではない。要は目を楽しませる物が増えることこそが大事なのだ。万人がそうなったら最悪だが、人はそんな感性をしてはいない。

 仕上げたばかりの龍道龍脈を描いた無想連作の評判を見に行けば、破廉恥絵の時のようには盛り上がってはいないようだ。やはり無味乾燥を現したのではそうなってしまうか。まあいい、あれは盛況を狙ったものではない。ただ、足を止めて見る者は根が張ったように動かないらしい。それは狙ったものだ。あれは気を呑むようにしたのだからな!

 北征巡撫サウ・ツェンリーの新作は無し。当たり前だ。

 南覇巡撫ルオ・シランの新作は、次世代型純鋼鉄製蒸気暗車型戦艦の……十分の一模型。いや、これは凄いぞ! たぶん専門家、世界最先端ランマルカの技師に見せればきっとここが変、あれが未熟と言いそうな気もするが、雛型を作れるだけ大したものだろう。これが進水出来る状態になればアマナ戦線も有利になるかもしれない。しかし東洋、南洋艦隊主力撃滅さる、という衝撃を覆すのには時間が掛かり過ぎるか。

 オン・グジン、東護巡撫に任命され、あの蛮島にて奮闘しているらしいが何年掛かりになるだろうか? 南覇艦隊がまだ戦闘可能状態で保全されている。しかし魔神代理領中央政府とは和平が成ったものの、かの共同体傘下の海賊達は油断がならない。勿論、南洋諸島のファイード朝庇護下の海賊相手にもだ。

 アマナに手出ししたことが正解だったかどうか分からなくなってくる。もし手出ししなければアマナ全土はランマルカの、労農一揆などという反乱集団の手に落ちていたことは間違いない。そうすると奴等は天政に対する最大最強の海軍基地を手に入れるということになってしまうか。いつでもどこでも天政沿岸部を襲撃できるようになる。そして無尽蔵とは言わないが辟易するほどのアマナ兵を動員出来るようにもなる。そうなると次の戦争があった時に圧倒的に不利になる。やはり軍事介入は正解だった。仮に敗退しても内戦からの疲弊でしばらくアマナは使い物にならないだろう。

 庶民が集る汚いところではなく貴人用の、茶が飲めるところで一休みする。

 軍事顧問のザリュッケンバーグ中将がいたので同席を乞う。

「お隣、よろしいですか?」

「これは特務巡撫殿。どうぞ」

 給仕が茶を持って来て、器も温めて出す。色が濃い発酵茶葉だ。

「銘柄を当てよう。君、これは遊びだから外れたら外れと言ってくれたまえ」

「かしこまりました」

 匂いを確かめ、一口。

「ホイロンシュン」

「外れでございます」

 給仕がほほ笑む。

「分かっている、試したんだ。シュンリュウタンだ」

「流石でございます」

 給仕が、おお、という顔をする。その二つ、産地は同じだが栽培場所の標高が違い、シュンリュウタンは一つ格落ちということで逆に現地以外では出回っていない。文化照覧会や、内地での平穏が続いたせいか主力品ホイロンシュンの在庫が切れたのではないかな。風雅でいて産業に与する。良いことだ。

「ビールの利き酒なら負けないんですがね」

 ザリュッケンバーグ中将も茶を飲んでいるが、香りを楽しむでもなく喉を潤すように飲んでいる。給仕も分かっているのか器を大きめに、温めに出している。そう言えば暖冬から迎えた春は寒気を感じることもなく暖かいな。

「将軍、もう少し和平内容をこちらに有利になるよう誘導出来なかったでしょうか。停戦後の泣き言になりますが、ジン江北岸に進出、白北道の南半を確保出来る兵力はあるはず。帝国連邦に消耗を強いれば今後の国内統制を緩ませることも叶ったはず」

 ジン江線の絶対防衛構想、理解出来る。しかしもう少し痛手を負わせられれば今後の展開も違うと思うのだが。

「帝国連邦の把握出来る戦場面積と、天政軍の把握出来る面積が決定的に違うんですな。帝国連邦軍は全左右前後の線が有機的に連携していて、機動防御、逆襲転換、戦力誘引、偽装後退、包囲形成が速やかで無駄がありません。天政軍は広いハイロウでも大軍を縦か横に、ただ隙間無く並べていただけでした。単純な攻撃か防御計画に沿うことは可能です。一つ隣の野戦軍の様子を窺って臨機応変に動くことも出来るでしょう。ただそこで計画を途中変更するなどという指示が加わった途端に麻痺し始めます。時刻を合わせてあちらが前進、こちらが後退、あっちが転回、こっちは死守などの命令を一斉に、個別に行うことも困難です。無理に複雑に動かせば軍同士の衝突、敵味方の誤認、補給部隊の迷走が発生することは間違いありません。野戦軍単体での複雑な機動は出来るでしょうが、複数の軍集団では到底できません。ルラクル湖での戦いでは敗北しましたが、機動だけなら攻撃時と後退時に成功しました。あれは敵の動ける場所に補給線が限定されていたから出来たようなものです。あそこより広い白北道となれば不可能です。前に出るだけなら可能ですが、足並みが乱れた途端に後方側面に迂回されるでしょう。足並みを乱さないように、何てことは広い戦線で複雑に攻撃されては不可能です。彼等は騎兵狩りに長けています。そうして情報と機動力を奪われ、歩兵の迷子が広大な草原を彷徨うことになります。各個撃破、同士討ち、補給線遮断、どこまでも逃げて追ってくる敵、そして主力同士で正面衝突したとしてもこちらを質で圧倒する精鋭軍を持ちます。相手などしていられません。西克巡撫がまとめた消極策が最善です」

 唸らされる。

「エデルトが西から攻撃すれば?」

「我が国はユバールと北海でランマルカなど革命勢力と対峙しています。ベルリク=カラバザルを英雄視する向きの一派がいるセレード王国、単純な敵味方の関係ではないオルフは信頼し切れませんし、完全服従させるような工作を仕掛ける余裕などありません。そして帝国連邦西部は理解不能なぐらいに強化され続けているマトラの山脈要塞群に、広大な草原と砂漠に、つつけば何百万と出て来る民兵がいて、今戦争に参加せず待機中の魔神代理領の州軍もおります。外部からの打撃でどうにかなる国ではないと思います。もし崩壊させるのならば内部からですが、ただその方法が分からない。ベルリク=カラバザルの暗殺程度で崩れるのでしょうか? そもそもあの男、今までの戦歴を聞く限りでは殺せるかどうかも分かりません。士官学校の校長をしていた時にあの男が生徒におりました。勇敢さは抜きん出ていましたが、殺し辛さまでは評価出来ませんでした」

「評価が難しい?」

「戦時で教育期間を省略して出兵していったので何か分かる前に手元を離れました。決闘騒ぎを良く起こして士官候補生を結構殺して、犯人不明の殺人事件も……血の気が多いのは確かでしょう。でも軍人としての素質を計れるだけの材料に乏しい。あぁそう、盤外戦術みたいな意表を突く動きは平気でやりましたね。うーん、何でもやれる男、というところでしょうか」

「現役時代の評価は?」

「今回の戦争に比べればささやかですが、魔神代理領軍相手に激戦を続け、生き残ったのが実力の現れでしょう。ただその程度なら他にもいます。その後に途轍もない成長、変化を遂げたのでしょう」

「対策のようなもの、曖昧でも思いつきませんか」

「何をどうすればいいのか。革新的な何か、あちらより一歩先んじる何かが無いと駄目でしょうなぁ。原理原則に従い、圧倒的な国力と兵力の用意、ですな」

「愚直でも勝てる程度に」

「それしかないでしょう」

 今でも足りないならどれほど充足すれば良いのだろう?


■■■


 魔都の戦いを思い出すに、動きが激しい。前進して前線を広げ、宮中区での激闘に異形の蔦、異形の戦士達の数々。後退戦も慌ただしく混沌として、ラーシャータ要塞攻防戦に至って火鳳が飛翔。

 難しい。簡単な絵など存在しないが、あの極限の疲労の中、無意識ではないが自分ではない戦うための違う意識に乗っ取られて動き続けたあの感覚で見た光景を描こうというのだ。酒で極度に酔っぱらった時に見た物を精確に書くような困難さを感じる。その上で人と物が無数にあって、それが壊れて飛んで、燃える。細密に描こうとすると終わりが無い。抽出しなければいけない。実際見た光景の通りに描くべきだが、しかし全体の流れを一枚にまとめるには嘘で描かないといけない。連続で同じ絵を繰り返しても面白くない。

 こう、虚実の均衡を整えて見せなければいけないのが動く状況を絵にする難しさだな。現実は面ではなく立体で、そこに時間経過の移ろいがある。絵は面で時間は凍り付いたままだ。意図的に描写するものを歪ませて動きをつけることで時間経過を入れられるが瞬間的だ。あの長い戦場を描くには足りない。

 活動絵画に仕立てようか? いやこれは前にやった。芸が足りぬというか、活動絵画は手間が掛かるというか、あれは自分の趣味ではない。技法だけ誰かが真似て広めてくれと思っている。

 さて?

 ……うむ、一つ見えた。残像を描いてしまうのだ。そうだ、戦場全体を残像のように描いてしまうのだ。

 これだ! 横に極大に長く、歩きながら眺める絵巻物にするのだ。その絵巻物の中で残像を使って瞬間的な時間経過を取り入れよう。

 お、見えた、いや出来た! 頭の中で絵が出来たぞ。用意した下描きなど要らんわ。

「ふはははは!」

 あの九日間、一枚で繋がったぞ!

 この画房では狭すぎるな。廊下を借り上げよう。


■■■


 龍平永元九年霙土。熱中すると日の浮き沈みなど一瞬である。

 魔都大戦場図が出来上がり、巨大さ故に特別展示場を拡張して設けて見せている。評判は盛況である。内容の良し悪しはともかく、良いに決まっているが、とにかく巨大というものは耳目集める。そして絵だが、龍人のこの手が炎症を感じる程に微に細々拘って書き込んだ。その一つ一つを見てとろうとするならば長時間が必要だ。繰り返し見に来る者もいるだろう。

 禁城の廊下を使って絵を仕上げている間に和平条約交渉が進み、条項が大枠で決まった。

 第一項、蒼天王には伝統的な北部外地の統治を委任する。

 第二項、白北道、金北道、外北藩を合わせて三北界と改める。

 第二項補項、三北界節度使にテイセン・ファイユンを命ずる。

 第三項、境界線上またはそれに繋がる地域における土木、水利工事は両者の合意が必要。

 第四項、捕虜返還並びに戦災難民への人道的配慮をする。

 第五項、和平を実現、継続するための努力を怠らない。

 第一項は東イラングリ、ラグト、旧西陸道こと南北ハイロウ、広義のランダン、オング山脈分水嶺以北、旧北陸道ことチュリ=アリダス川流域、ウラマトイの領有を帝国連邦に認めるという解釈になる。また蒼天王呼称を用いることにより、名目上帝国連邦を天政の冊封国と見做すことによって統治を委任することが速やかに可能となり、貿易交渉再開がつつがなく行われるようになる。実態と名目の分離は著しい。

 第二項は内地である三行政区を帝国連邦へ如何に法に反しないように割譲するかという工夫が盛り込まれている。名目上は天政が命じた三北界節度使テイセン・ファイユンが管理するが、実態は帝国連邦が好きに統治するのだ。彼女自身はどうやらダシュニル共和国というあちらの新しい行政区分の長に収まるらしい。

 第一、二項によって現状の支配領域がそのまま追認されることになる。両国の地図の表記には食い違いが出て来るがそんなことは事情を分かっている者が見れば些細な違いである。それで混乱するなどという者は大地図を見る資格は無い。

 第三項は主にヒチャト回廊の堤防工事のことを具体的に指す。和平後もフォル江に対して破局的な圧力をかけられ続けては敵わない。平和的な工事ならともかく、侵略目的の工事は勿論了解ならない。

 第四項はおよそ文言そのまま。捕虜返還、交換は当たり前である。あちらが虜にした者達は目玉抉りなどで悲惨なことになっているが、こちらは天政の文化文明に目が開いてしまった者を送り返す。感情抜きで考えるとどちらも相手を害してやろうと努力している。

 戦災難民は互いの領内で孤立している者達の帰郷や脱出の妨げをしてはならないというもの。龍朝派住民、後レン朝派住民の平和的な移動も意味していて大きな人の流れになる。互いの領内に取り残されている偵察騎兵のような者達の帰還も意味する。これらには船舶移送も含まれ、帝国連邦からランマルカに対して海上攻撃を控えるように働きかけることも意味している。

 第五項は、和平後の軍事的挑発行動の禁止を示すものだが、何よりも後レン朝による軍事行動を禁じるという意味となる。

 龍朝天政的には後レン朝は存在せず、ただの巨大な山賊集団という扱いで、今では帝国連邦つまり蒼天王配下の一軍でしかない。主体的な政府としては認めることが出来ないので彼等の軍事行動を封じる項目を表記するためにはこのような文言になる。天は一つ、割ることが出来ないという建前上そのようになってしまう。

 条約全般を通し、天政と帝国連邦とでは条項文言が異なるようになっている。政治事情を互いに勘案したのだ。そして解釈は同一となるので齟齬は無い。

 項外となる金北道、外北藩より東にいるような蛮族については条約で触れていない。彼等は元から天政の外にある。帝国連邦と彼等が個別に何らかの条約を交わし、傘下に入っただけなので関わり合いになるところがない。ユロン族なる新興部族は金北道から発生したものだがこれも山賊扱い。ただの帝国連邦参加の武装集団なので特に取り扱わない。


■■■


 ゴルゴド廟を描くのに並の色では足りない。色で透明を描かなくてはいけない。宝石、玉石では光が足りない。光を描かねばならない。見えるようで捉え切れない光を描くのだ。

 光は途中が見えない。光源が見え、照射される面が見え、途中が見えない。途中を見せるには舞う埃を当てるなり、何かに当てて差をつけると分かりやすいだろう。しかし自分はあのゴルゴド廟で確かに光の橋が鏡同士で繋がっていってゴルゴド像に当たって爆発するように散って天井、壁、床、あらゆるその光を意識した彫刻に当たって乱反射に降り注いだのを見たのだ。あの廟内において、光は鉱物で液体で炎だった。

 あれを描けるか? あれも平面ではなく立体だ。

 ……うん?

 あ、まさかそんな、そんな方法があったなんて! でも出来るのか? 試すしかないだろう。

 硝子の砂絵を一枚仕上げ、それを重ねるのだ。透明度を大事にしたいから接着剤はダメだ。一枚ごとに粒の風味を大事に保存するように焼いて固定するか? 像は見えるぞ。あとは材料を集めて、絵と透明度を維持出来る焼き方を追求しなくてはな。

 まずは手っ取り早く硝子職人を召致しよう。そのように手配をする。

 手配をして時間が余る。さて、次の絵に手をかけるか? いや、今の頭の中にあるものを保ったまま次へ移ると想像が移って絵の髄にむらが出来ようというものだ。

 あまり頭を使わないような暇潰しがいいな。

 禁城の中庭に出る。いないかいないかと探し、手を叩いて呼んでみる。巨体に似合わず無音でやってきたのは馴虎である。シャンル用の愛玩動物に成り果てた異形の生物兵器だ。心なしか、いや、完全に太って腹が丸くなっている。触って撫でれば喉を鳴らしてゴロっと転がり恭順の姿に胸も股も開いている。

 何だこの生き物め! 水竜に蛇龍がいなくなった分ぶくぶく太って、何だこの腹は! だぷんだぷんではないか! 野生を削って家畜になった霊獣だが、これは一体何たるざまだ。以前に見た公安号ならば、片輪になって半分隠居したような立場になったとはいえこの腹は無かったぞ。

「あ、いた!」

 シャンルがとてとてと走って来て、このだらしない虎の腹に飛びつく。この丸虎、主を捨てて自分の呼びに参じたというのか。忠義心の欠片も無いな!

「は!? 老兄、失礼しました。あの、ご機嫌良う、ございます……」

 今更気付いたようにこちらへ挨拶するシャンル。禁城には同年代の友人もいないようで寂しい思いをさせている。お豆がいればまだマシだが、あれは仕事中だ。立場は微妙とはいえ、若い女中共よりは比べようもなく位が高く、気軽に遊べる相手でもない。それに彼女達には仕事がある。

「散歩に付き合え」

「はい!」

 腹を揺らす馴虎を連れ、二人で禁城だけではなく外周も回った。

 同年代の同性を見かけただけで物珍しそうに顔を動かす姿、どうにかしてやりたいが。それもこれも和平後、絵を仕上げた後だな。


■■■


 道具が揃った。

 砂絵に挑戦するのは初めてである。ツァンヤルの天道僧が作る砂絵を手本にしようと思ったが、描きたい画風と違った。それから粒が細かすぎると色に光を透過しないので粒というより片で描かねばならないので技術も異なってくる。異なる色の粒を使って違う色に見せる技法は学んで頭に入れておいたが、さて?

 色硝子片は大量に用意した。しかしこう、感覚を掴む前に使い切りそうな気もしてくる。あと片の大きさが不揃いで選らんで使わないといけないので少々苛つく。あ、方術で整形すればいいのか?

 急にバタンと画房の扉が開く。無遠慮に入ってくる奴など一人しかいない。

「宇宙一公主ちゃんじゃ!」

 高く細い声に一瞬疑問が浮かんだが、そんな名乗りをする奴は一人しかいない。この糞ババア殴ってやろうかと振り向けば、十代前半風の今までの成人女性姿ではない、やや小さく痩せ気味の少女姿で約五千歳が現れた。あのまま魔族の糞になってればと思ってもこのように復活する。

 殴打するか、しまいか? その細身であれば一撃死もあり得るか? 脆弱を盾にするか……その姿の理由はたぶん、こちらからの暗殺防止。幼い外見で可愛がれとでも言う気だろう。

「御用は?」

「うふふ、おっぱい大きい子、いやなんやろ?」

 その姿、確かに乳房は膨らみかけ程度。巨大だと妙に勘に障るので前よりマシだとは思うが、それは些細なこと。人の趣味に合わせて姿形を変えるなど正に妖怪変化。人の心を透かした物言いといい、この化け物め。

「用が無ければ帰って下さい」

「ね、ジンジン、知ってたの?」

「何がです?」

「ソルヒンが反乱起こしたの」

 何だこいつ、記憶障害でもあるのか? かなり前だぞ。それとも仙術に没頭し過ぎて外の状況を知らなかったのか?

「纏軍が天軍に改称して叛旗を翻したのが去年の夏ですが」

「イヤー!」

 奇声を上げて黒龍公主が膝を突いた。反応がおかしい、顔も冗談をやっているように見えず負に感情的。魔都への強行軍で精神不安定に見えたが……それはどうでもいいか。だがあの反乱、狙ってやったのではないのか? 布華融蛮策ではなかったのか? 今に至ってはどうにもならないことだが。

 ヒーン、というような声で泣き始めた……全く、良い声だな!

「なんやのこの身体、泣くの止まらん」

 少女姿の黒龍公主、割座で泣きべそを嗚咽混じりでかく。

 ちょっと見下ろしてみよう。うむ? これはどうだ。後で絵にしようか? 泣いた女子の絵など自分が、他人が描いた物を見たら下種と評価してしまうだろうがしかし、これはいいな。一部にウケるいや、遂にその惨めな姿を晒したかと喜ばれる、いや、両方か!

「ね、ジンジン、結婚しよ」

「はあ?」

 鳴きながらズボンを掴んできた。蹴飛ばすべきなのでは?

「妾とけっごんじでぇ!」

「嫌です」

 掴んで振って、滑って手が離れてはまた掴んで引っ張る。

「お願いお願い!」

「意味が分かりません」

「嫌いでいいから一緒になってぇ!」

 並の女がするならば多少見た目が悪くても心が揺れそうな哀願振りは強烈である。だが演技か真かわからない。女は本気で嘘の感情に自分を染めて騙しに来るとは父が言っていたが、これは見聞きで判断不能だ。

「突飛な申し出、理があるのでしょう。説明してください」

 砂絵に集中したいので正直政治を考える気分にならない。

「えーと、ツェンツェンがね……」

 黒龍公主は手で拭った涙と鼻水をつけながら手紙を懐より出した。呪われそうな五千年汁で濡れていないところを摘まんで読む。

”北征巡撫サウ・ツェンリーより特務巡撫レン・セジン殿に提案。

 龍帝の娘、黒龍公主殿下との婚姻によりレン・セジン殿が龍朝皇族に入り、称号龍人王を得て実質龍朝天政の最上位者となれます。これによりレン朝の正統性を取り込み、レン・ソルヒンの僭称後レン朝の正統性を破れます。その際にレン・シャンル様を養子に迎えることを公表すれば更に正統性を低下させられます。シャンル様自身が寿命を迎え、セジン殿がまだ生きていても、常人である皇太子殿下のご子息、そのまたご子息を代々後継者に据えれば継承問題は発生しません。そして再興された皇族は祭祀に専念させて伝統を復活させます。これで更に正統性を低下させられます。また増え過ぎた皇族が公費を圧迫するなら臣籍降下で対応可能です。婚姻から養子に迎えるまでの経緯は家系図から説明し、人民に秘密とせず広報して理解を求めることが最善と考えます。

 レン・セジン殿は既に生ける伝説に、宣伝次第で昇格可能です。太祖にも負けない逸話、物語に溢れております。類まれなる芸術の才を発揮し、南洋交易路を開いて莫大な富をもたらし、命を危険に晒してまで属国を救い、フォル江大洪水を未然に防ぎ、敵の首都まで焼き払って和平に導きました。各部からの信頼も厚い。そのような正統性が非常に高い、万民に支持される龍人王を前に反乱軍の面目は潰れます。

 レン・ソルヒンは反乱前から精神不安定だったとのことで、これで追い討ちが掛かり人事不詳からの廃位も有り得ます。政権が長期に渡らない可能性が出てきます。短期で禅譲の可能性もあります。相手は帝国連邦総統ベルリク=カラバザルか光復党党首リュ・ドルホンになるでしょう。またどちらかと婚姻する策を取るかもしれません。ベルリク=カラバザルはまだ四十手前ですが、あの者の第三夫人などという身分は屈辱的であり、そもそも政略結婚を否定しているので可能性は極めて低い。リュ・ドルホンは五十過ぎなので彼の息子と結婚する可能性はあります。何れにせよ、ソルヒンより更に正統性の低い者に禅譲か実質の禅譲がされれば天命を失ったと人民に伝わり、後レン朝は自壊に至るでしょう。

 仮に後レン朝が自壊したとして、帝国連邦につくか我々につくか世論は割れると思われます。こちらへ戻ってくるのならば人を取り戻せます。あちらへ行ってしまえばその大量の人が布華融蛮の尖兵となります。後レン朝という膜が破られない限りこのような動きは最小限で緩慢でしょうが、破れて帝国連邦に直接吸収されれば最大限に急速に浸透します”

 一理ある。むしろ最大限に効果的。戦略的には非の打ちどころがないが、自分が嫌だ。それからサウ・ツェンリーが描く”私の理想の天政”が見えてちょっと、肯定でも否定でもない曖昧な気持ちが沸く。

 これを約五千歳に説明している時のサウ・ツェンツェンの面、想像しただけで腹が立つな。乳房の大小だけではなく女というだけで嫌いになってきそうだ。人を政治の道具と思ってからに。まあ、貴人とはそういう運命であるからこそ高いところに座る権利があるのだが。

 約五千歳少女の面を見る。涙に瞳が濡れて、年相応に小さい鼻から洟が垂れてる。中身を知っていなければな……いやぁ、趣味ではないが、政略結婚は趣味でするものではなかったな。

「身体接触は御免ですが、効果ありますね。そうしましょう」

「接触するの!」

 接近を手の平で額を抑えて防いだ。正直怖い。呪われそうな気がするのは事実だ。既に呪われ切っているが、重ねてまでは御免である。

「ではそのように手続き取っておいてください。私は忙しいので」

「ジンジン酷い!」

「うるさいですからあっち行ってください」

「妾、花嫁!」

「はいはい」

「ねえジンジン聞いて!」

「広報にそのように載せればいいだけでしょう。式は龍帝御前にて関係者のみで行われたことにして京内で祭事でも適当にやればよろしいのでは? 我々は半ば神秘存在なので姿をわざわざ大衆に披露する必要はありません。式の様子はこんな感じだったと人形を使って芸術照覧会で、後で再現したようにすればいいと思います。私は忙しいのです」

 頭を手で押して部屋の外へ、扉を閉めて閂を入れる。外でギャンギャン喚き始めた。

 やれやれ。妖怪ババアなりの落ち着きを失ったのか? 一度殺して元の姿に戻してやった方がマシではないだろうか。

 絵に取り掛かり、硝子片絵の試作品一枚目が出来た。これを焼き固めて光を活かせるように仕上がるか確かめなければいかない。変形し過ぎないように絵は維持出来るのか? この細密さ、どうなる? おそろしい、しかし、一歩踏み出さねばなるまい。陶芸家の神経質さを理解出来そうだ。


■■■


 龍平永元九年春半を迎えた。ゴルゴド廟の再現、今までに無い手強さだった。失敗作を感情的に粉砕することを繰り返し、ヤンルーの硝子相場を崩してしまった。あと内閣からこれ以上公費を出すのはちょっと、と叱られた。ハン・ジュカンに仕入れを強力に頼まねば手に入らないくらいだった。

 しかし己、官僚共め、この市場に出回る銀を、大龍銀船艦隊がもたらした富が幾らだと思っているのだ。

 完成したゴルゴド廟の絵というか、何だ? 粒の大きい硝子片描画によって失われた細やかさを何枚も立体的に重ねることで並の細密さを獲得した重層硝子絵の反響だが、斬新過ぎたか魔都大戦場図よりは評判が良くなかった。評判というか評価する基準が存在しないといったところか。悔しいところだが、ふと思いつく。あれをただ壁掛けにしては魅力も半減してしまうことに。展示方法が悪かった。あれは屋内展示にして灯籠のように光を当てれば良いかもしれない。いっそ夜間限定公開! 夕暮れ時には自然光、夕日で! これだ。後で手続きしておこう。

 さて、和平条約も大枠合意のまま、抜かりが無いか最終点検がされてそれも終わった。解釈の調整よりも条約外での取り決めや、和平後に再開する貿易に関しての交渉が長引いたらしい。何でも極東にいない帝国連邦の財務長官と連絡を取るのに少し掛かったとか。

 公式の和平条約調印式が行われる日は、黒龍公主と自分が政略結婚をし、龍帝御前で式が行われた、ということになった段階で調整が進む。龍人王の称号を得たこのレン・セジンが調印式に赴き、外交の場に名と顔を出して後レン朝を名乗る反乱軍頭領レン・ソルヒンの面目を潰すのだ。結婚後でなければいけない。

 和平と結婚を祝うために事前に広報がされ、当日は祝日となった。各市町村、独自に祭りを始めたらしい。ヤンルーでは特に盛大に祝われた。

 ファン・ドウ・フウがお祝いを申しに来たので首を絞めて片手で持ち上げてしまった。彼に罪は無いがその見っともない姿が癪に障った。それは選挙に合格しないわけだ。

 ハン・ジュカンもお祝いに来たので、これは丁寧に応対しつつ、事実関係を明かして己の名誉を保った。

 ルオ・シランから定型文のような謙る祝辞を虹雀経由で受け取った。全くのその気分ではないが、彼より格上になってしまったのだ。

 結婚式などという無駄な行事は行われないので、調印式が行われるヘンバンジュへ出発する日が帝国連邦側との協議で決定される前に一枚仕上げたい。

 火鳳の絵は何枚か、卵から段階に分けて一枚絵として描く計画だ。あの時の様子は鮮明に覚えているので焦る必要は本来ないが、でも急いで仕上げたい。

 扉を叩く音と叩く度に音を誤魔化す鈴の音に女の細い声がやかましいが、この画房は改造により完全に内側から封印されている。それから龍道龍脈入りの術を使う要領で術妨害の術を掛け合わせると不埒な進入も防げると分かった。

 術妨害。魔都で活躍したり破られたりしたが、あれは何というから妨害したい術に、波長と言うのだろうか? 物理現象のように計測出来ないので正確ではないが、そういったものに同調しなければ効果が無い。雑に使われる術には雑な妨害で広く防げるようだがこれは研究中である。こちらの術を通し、あちらの術を通さぬという工夫も不可能ではないので次の戦いがあれば活躍するだろう。アマナでは敵方が術の類をほぼ使わないらしいので、やはり次の戦いか。

 そう言えばオン・グジンからは祝辞が来ていないな。虹雀をわざわざこちらまで飛ばす余裕は無いというところか。あちらもどうにかしてやりたいが……どうすればいいか見当もつかない。アマナは泥沼だ。


■■■


 龍平永元九年緑整一日。

 ズィブラーン暦四千年三月二十日。

 移動時間を合わせてヘンバンジュに到着した。

 調印式場は市庁舎別館の迎賓館。市長が皇族などを招く時に使う場所なので格は十分。

 エデルト王弟ラーズレク・アルギヴェンが仲介人代表として参加。

 あちらは最高指導者である帝国連邦総統ベルリク=カラバザル・グルツァラザツク・レスリャジン本人が出席。

 こちらは動けない龍帝に代わり、人前に姿を現さない黒龍公主に代わり、表で動ける最上位者として龍人王レン・セジンが出席。

 和平条約文書には、仲介人とあちらが筆で署名を、こちらは玉璽を押して効力発行とする。それぞれ三者が控えに天政官語文、魔神代理領共通語文、フラル語文文書を持つことになる。全て段取りは決まっている。

 さて調印式前に立役者に挨拶せねばなるまい。長く火鳳を制御し、魔都の戦いを終え、魔神代理領中央政府との和平をとりつけ、真っ直ぐジン江線に張り付くベルリク=カラバザルへ停戦を取り付け、事前調整を終え、この日を招いた北征巡撫サウ・ツェンリーと再会する。相変わらず疲れ知らずな顔色である。一度の居眠りで復活したか。

 サウ・ツェンリーはこちらを見るなり手を合わせて礼をしやがった。

「龍人王殿下、この度は」

「やめろ、やめろ、本当に止めろ」

「……最後の仕上げです」

「はい。サウ・ツェンリー殿、ご苦労様でした。労いの品というわけではありませんがこれを」

 火鳳羽化の瞬間、正に爆誕と呼ぶに相応しい火炎が踊って翼を広げた場面を切り取った絵が入った額縁を渡す。恭しくサウ・ツェンリー、頭を下げて両手で受け取るのでまだ見ていない。

「色々とあると思いますが、私が考えられる中ではこれ以上の物は出せません」

「は」

「どうぞ御覧に」

「では」

 頭をようやく上げて彼女は見た。

「直後に龍道に入ってその勇姿を見られなかったでしょう」

 見ろ! あのツェンツェンが、うんともはい、とも言わず黙って絵を見ているぞ! ふふん、良く分からんが勝ったな。

「さあ北征巡撫、玉璽を持て、後に続け。仕上げであるぞ!」

「……は」

 お付きの者がサウ・ツェンリーに玉璽の入った箱を恭しく手渡す。

 式場の扉の前に立つ。開閉役に立つ衛兵がいる。

 さて、ベルリク=カラバザルとやらの面、拝ませて貰おうか。蒼天王など何するものぞ!

 衛兵が扉に手を掛けるのを待たずに開け放つ。

「私が外交代表、龍人王レン・セジンである!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る