第327話「魔都、直撃」 バース=マザタール
「……本日始め、夜間分に選定致しました名簿をこれで終わらせて頂きます。次に、早朝分を読み上げさせて頂きます」
御所。魔神代理のお膝元、暗く洞窟のようになった御前にて、魔なる眷族を選定する使命を果たしている。
三千九百九十九年九月二十日最終のまとめ、二十一日入りの夜に魔導評議会が作成し終えた魔族候補名簿を閉じ、同日早朝に作成された名簿を開く。項数は、一応休憩時間とされる深夜帯にも作業が続いていたせいか、今閉じた名簿より五割り増しに厚い。
ランプに油を足す。節目に注ぎ足すようにしておかないと忘れてしまうことがある。
「ラコニオンのユラ氏族のアイオン家のラドリウスの息子イスパルタス。大内海連合州海軍に在籍、櫂走式軍艦タイレーン号の運用員として勤務。赤銅水竜勲章を二度受勲。魔術式操帆技術に長けております。年齢三十八歳、品行は……過度の飲酒による出勤遅滞を度々繰り返しております。若い頃に上官との口論で一度、水兵同士の喧嘩で四度、鞭打ち刑を受けております。それ以外は水兵として目立った失態はありません」
出自明確。技術はあり、実戦経験あり。失態の程度は気の荒い船乗りならばままある程度。これが盗難や命令違反であれば不合格であった。しかし、このような、当人には失礼だが雑兵の類の者まで兵士にするという前提にて魔なる眷族としなければならないとは、この魔神代理領、過去に幾度も見られた共同体危機に晒されている。
「魔族の種は、”風歌い”シュリエヌス殿が最適かと存じます」
「彼は力を失いました」
「はい」
魔族の種を預かって下さっている魔神代理より、その種は力を失ってしまったことを告げられる。力が失われた種は、後は末永くその懐に抱かれる。
死ねず永遠となって自らを贄にと差し出した強靭なる者は、永遠に死ねぬというのに力だけは失ってしまう。魔族候補となることに合意したイスパルタスにそのような覚悟、あるのだろうか? 種となる儀式を受ける前に死んでしまえば名だけ永遠になってしまうが。
東の最前線ではシャミール連合州総督より、一戦線における数日の戦闘で十万名近くが死傷し、千に迫る魔族士官が戦死したと報告を受けている。これが戦の趨勢を決定する決戦ならばまだしも、指折り数えられる戦闘の一場面というのだから、もう何度かそのような事態が起きるということだ。ベリュデイン州総督の戦力強化のために魔族を増やすという意見が――彼がこのような惨事を想定していたかは不明だが――正しいと証明されてしまった。
魔族の種生存者名簿より”風歌い”シュリエヌス殿を除名する。これは選定会議をしている議員達へ早急に告げなければならない。彼等は魔族候補と種の候補を比較し、最適であるか議論してから決定している。修正は早い方が良い。
待機させてある伝令に目配せ、走らせた。
「次なるは、”飛び鮫”バイクル殿が……」
雑兵のようなイスパルタスに、このような著名な、強大な力を持つ先達を継承させようというのか? 魔族候補名簿にて民族母語、経験、魔術の才能の傾向と照らし合わせるに、シュリエヌス殿でなければ次にバイクル殿が相性の良い種の候補であると明確に記述されている。相性が悪ければ魂が奇形になり知性が壊れてしまうか死亡してしまうため好きや嫌いで選ぶわけにはいかない。しかし、悪口になってしまうが、多少海に慣れた程度で並みの、徳があるわけでもない水兵如きに、その経験や魔術の才能程度でかの異形と術の才を継がせなくてはならないのか。
安易な継承は魔族化後に本人を増長してしまう恐れがある。自らを、高慢なる意味で選ばれた、と思い込んだ者の害悪は計り知れない。以前以後での力の落差がある程危険。責任能力があり、魔神代理領共同体とそこに属する弱き者達を守る使命を自覚していると確信出来る者でなければ本来は選んではいけないのだ。
”魔なる力によって脆弱を捨てる事により、強靭なる者、魔族となる。以前とは違い、以後は違う。魔族になることは、あらゆる弱さを捨てることになる。後戻りを願うことは許されない。魔神代理の良心が届く限りの地上において、脆弱なる者達を守り指導していく責務を負い、良心に従って行動することが義務となる。己を捨て、死ねず永遠となっても魔神代理の行いを受け継ぐことが義務となる。偉大なる先達は、導きために死ねず永遠となって自らを贄にと差し出した強靭なる者達である。その力は重責であり、ただ強大な筋肉を身につけるが如きではない。遺志を継ぐということ、魔神代理の使命を託されるということである。以上のことを覚悟し、滅私せよ”との言葉、これを理解している者でなければいけないというのに。
ベリュデイン州総督、ベルリク=カラバザル総統、伝統の破壊者達よ、分かっているのか。
「……失礼しました。”飛び鮫”バイクル殿が最適かと存じます」
「こちらを」
岩のような骨が浮いたような壁のような、魔神代理の御身体の一部が動き、更なる深い暗闇へと続く道が開く。そして蠢く振動、黒灰色の蔦のような触腕が、死なず永遠となって干からびた、鰭と翼の中間のような腕を持ち、鮫のような顎の異形”飛び鮫”バイクル殿を運んで来た。待機させてある運搬係がその異形を、礼をした後に丁重に絹で包み、棺に入れて外へ運び出す。後は力の継承の儀式を儀場で行う。
常ならば一度儀式を行ったらまた魔神代理の下へお返しするのだが、儀式対象の者が比喩ではなく万と待っているのでしばらくは儀場へ運び入れたままである。管理上問題があるので警備を強化しているのは勿論だが、儀式後の新たな魔なる眷族達は反動に脱力してしばし人事不詳となることもあって看護要員も増やしている。また動けるようになってからは再教育の必要もある。その体制も大規模になればなるほど、種を狙う邪な者達に付け入る隙を与える。
アソリウス島事件、魔族の種の盗難、神聖教会への運び入れ。昔から力を得るために種となった方々は狙われてきた。幾ら管理を厳重にしても巧妙な詐欺師はどこからか隙を見つけ出し、奪い去る。管理するためには人を雇わねばならず、人を外から入れるということはそれだけ危険に晒される。
頭が痛い。
「バース=マザタール」
「……はい」
「お疲れ様でした」
「はい」
魔神代理にそう言われた。言われてしまった。
礼をして下がり、お膝元より出て外へ向かう。
何ということだ。お気遣いさせてしまうまで己の疲労に気付かなかったとは情けない。齢九十余でもう老衰著しいか? 先達の、齢が百や二百を超える方々が未だに壮健、前線で働いているのを考えるとこの身の弱さが情けない。人生と才能によりそれぞれ役目や運命は違うのだが、自分は然程に選ばれなかったのだと思ってしまう。自分が継承した、今はもう力を失った”図書館長”ファマール殿を馬鹿にするわけではないのだが。
幼少より神童と謳われ、魔導評議会議長には抜群の記憶力があるということで選ばれたが……悪い方向に考えている。頭の中で実在人物の幻影――ベリュデインに、既に亡くなった嫌いな連中、遥か昔の近所の――と戦い始めてすらいる。これは疲労が酷いからだ。
自分の退場を見て伝令が代わりに、魔神代理から魔族の種をお借りする役目を負う副議長を呼びに走った。その後を追うように坂を上り、暗い道だが壁に手を突くような真似はしないよう歩いて出る。空が青くて眩しい。
御所衛隊長がいつものように外壁に立って歩いて巡回している。礼をし合う。
伝令が一人、小走りに寄って来た。
「議長、お休みが明けましたら面談場へお願いします。思想怪しき候補者を四名、留保しておりますので」
「分かった」
璧門から出る前に一度振り返り、巌のような魔神代理に一礼して去る。
自宅へ帰ろう。
■■■
評議会の伝令が陸橋の高速道路へ上るために階段を駆け上がって行く姿を見て、釣られて上りそうになったところで足を止めた。集中力が著しく欠けている。急用でもないのに使おうとしてしまった。当然のように警備の警察官は「どうぞ」と道を開けたが、自分は「いや、急用ではなかった」と首を振って退いた。
馬車を用立てれば良かった。遂、ふらっと歩いて帰路についてしまった。魔族が珍しくない魔都だが、歩けば勿論目立つ。敬意を表して一々礼をしてくれる者がいるので逆に苦しい。いっそそうされるのが当然とふんぞり返れれば楽だがその性分ではない。魔導評議会は公衆の面前に顔と声を出す仕事ではないのだ。
並木の表通りではない裏通りを歩き、一々通行人に驚かれるので表通りに戻り、一々通行人に礼をされながら歩いた。返礼していてはキリが無いので堂々と歩く。木乃伊のような枯れた異形で何を堂々とすれば良いのか分からないが。せめて立派な角なり翼なりとあれば、いや、帽子付きの服を着て顔でも隠して俯いていれば良かったな。
あと三か月と少しでズィブラーン歴の三千年代が終わり、四千年代が始まる。これが創立四千年記念となると四千一年、来年である。時期尚早だが通り沿いでは千年に一度の年末だからこの商品が記念にお勧めと商人が声を上げて頑張っている。期間限定の特別、というのは割と売れ行きが良いように見える。
辻説法をしている学者が見える。偉大なる魔神代理領共同体が他の帝国と違って如何に連綿とその歴史を紡いできたかの証明を、魔なる教えと合わせて合理的に説明しようと頑張っている。少し話を聞いてみようと思ったが、通りがかった途端にその者が声を詰まらせたので通り過ぎることにした。問答で突っついてみようかと悪戯心が働いたが、今の集中力を欠き、精神が尖った頭で喋っても嫌がらせをしてしまいそうなので止めた。
「魔族のお方! 彼の弁はどうでしょうか!?」
と問いかけて来る者がいて彼等の関心がこちらに向いてしまった。沈黙に対して沈黙はいけないと思い、狡い答えで返す。
「今日、この日が存在します」
そうすると聴衆が『おお!』と応する。古の哲学者達もこのようなあしらい方をしてきたのだろうか?
官僚家族が主に住む高級住宅街へ入る通りへ差し掛かる。この辺りは喫茶店が多く、珈琲と茶の香りが混じり、茶器に注がれる湯煙が舞って空気が緩い雰囲気。休憩、休暇中の官僚や高級軍人が店先の屋外席で仕事から日常の馬鹿話までしている。
顔見知りが多くなってくるのでここから挨拶に礼を返していく。仕事中でも仕事場でもないのに若手の者は席を立ってまで礼をしようとするので、座ったまま、と手振りで何度か抑えた。
話し声が飛び交うとはいえ、閑静で落ち着いているこの地区にて、大声で辻説法をしている者を発見。聴衆はそこそこ多いが、さてこの知識階級が多いところで周囲に黙って聞かせられるとは名手か詐欺師か? と興味がそそられた。
通り過ぎるように、しかしちょっと声が届くところまで寄ってみるに聞き捨てならなかった。
「……千年末には大異変が起きる! 何年も前から続く大戦の連続は前兆、この前の彗星は予兆、我々の胸のざわめきは勘が告げる兆候。我らの共同体に未曽有の、大氾濫の如き危機が……」
「根拠のない風説流布は止めて頂こうか」
学問の都としての性格もあれば論舌飛び交うのは結構なことだが。
「彗星に胸のざわめき、それに必ず千年末に大異変とは根拠に基づかない。私の知らない歴史をあなたはご存じなのか?」
「これは……」
相手が言葉に詰まる。うん? こいつ大分老けたが、私塾で教鞭取っていた時の教え子じゃないか!
「お前! そのようなことを教えた覚えはないぞ!」
「ひえ!? バース先生ごめんなさい!」
彼が路地裏に逃げたので追う。聴衆は「やっぱりあいつの言うことはおかしかったか」「いやでも一理ある」などなど言いながら解散を始めた。奴はなまじ美声なだけあって論拠が無くても妙に説得させる力を持っているので己の喉を過信するなと何度も言い聞かせていたのだが、数十年振りに再会すればあのような詐欺紛いのことを。
喫茶店裏の木箱の陰に、隠れているのか逃げる気が無いのか、肩を小さくして彼が待っていた。
「釈明を聞こうか」
「ベルリク=カラバザルの訪問時に一時沸いたものの、魔都の住民は変わらず平和に呆けています。外から来た者はともかく、ここに生まれて育った者達は永遠の平安の都と信じて疑っていません。何度も階級に対象も変えて問答を繰り返してみましたが、まあ、何とかなるだろぉー、ほげー、って感じです。ですから危機感を煽っています。戦争協力ということで論を振っても直ぐに冷めてしまいます。一時の熱ではいけません。戦乱の危機は既に迫っていますから、この方面で押しても既に押した後。だから千年紀で煽っています。どちらにも鈍い者はしょうがないですが、どちらかに敏感な者がいれば意味があります」
「千年などただの数字だ。十進数から変えれば元の雰囲気が消える。そのような程度だ」
「皆、そのように頭が柔らかくありません」
「煽るだけなら噂好きにも出来るが」
「続きがあります。千年末論者の中には危険な者も詐欺師もおりまして、新興宗教を作って金を騙し取る者がおります。これはまだ金勘定で動いているだけマシなのですが、暴力団化したり、中には集団自殺を図る者も出て来ています。どうしても騙される者がいるならこちらで拾うことにしました」
「拾う?」
「義勇兵を……」
「戦争は前線と、これから赴く者に任せろ。素人が素人を訓練した義勇兵が何の役に立つ。軍務省の仕事だ」
「彼等は精力を持て余しているんです。それを発散させるに義勇兵訓練と称して身体を動かさせています。目的は戦いではありません」
「何の訓練だ?」
「棒術、消火訓練、避難誘導、応急処置、色々です。頭巾と腕章も用意しております」
「健全に聞こえはする。宗教省か軍務省などに登録しているのか」
「……えーと」
「胡散臭いものな」
「しかしですね、どうせ道を誤る者達ならいっそ、柔らかく落とすべきと考えます。極端なことさえしないのならば言動が怪しいだけの一般人に留まります」
「止めろとまでは言わないが、節度は守るように」
「はい」
節度は守るように、何とも解決も何もない言葉だ。
どうしようもないことはどうも出来ない。
自宅に帰ろう。家はしばらく留守にしていたから、まずは掃除からか。
■■■
魔族になってから眠りは浅い。夜とは言え人口の多い魔都は、街区によっては昼より騒がしいところがある。自分の住む高級住宅街はその喧騒より遠いところにあるが、騒ぎが聞こえて来た。
火事か喧嘩か事件か? それを収めるのは警察消防の仕事なので野次馬に出掛けたりしない。若い魔族や官僚が時折やってしまうような、指揮系統外から偉そうに口を挟むことなど論外。邪魔になるのでもう一度寝入ろうとする。
しかし騒がしい……複数、悲鳴、これは暴動か? しかしこの住宅街近辺、暴動を起こす程に暇な住人はおらず、そのような者達が元気を保ったまま、警察に止められずにやって来られる場所でもない。
大火となれば動かなければならないし、目も覚めた。何事も無かったとしてもそのまま仕事へ戻ろうと考えながら寝巻より官服に着替える。
炸裂音、爆竹? 木を叩いた? 車両事故、いや、銃声? 窓から外を見れば月と街灯りに街路から昇る白煙が照らされている。そして点々と発光、間違いなく銃声。これは戦闘か!
外へ出る。騒ぎは一体何事かと近隣住民が顔を出している。
「君達、外に出ないように!」
暴動に野次馬が混ざれば悲惨なことになる。出来るだけ顔を指差し、喋られているという意識を持たせつつ、その野次馬の一人にならぬよう、走って御所へ向かう。急ぎの仕事が無いからと家に使用人も馬も用意していなかったことを少し後悔している。確かに平和呆けしているかもしれない。
表通りに出れば、騎兵銃を手に持った騎馬警官が「避難しろ!」と怒鳴りながら走っている。その流れに逆らうか準ずるか、ただ立ち尽くすか、夜道を歩く住民が右往左往している。
騎馬警官の馬が走る音が遥かに軽やかに聞こえるほど、道路を響かせる馬? の足音。銃声、叩く音に馬の悲鳴。叫ぶ女。威圧感に振り返れば、矛槍を両手持ちに振るって警官の胴体を両断、内臓をまき散らした仕草の重装騎兵である。
住民が表通りから裏通りへの路地に殺到。腰を抜かした者が数名。
魔術にて思考を加速。何事か見極める。
まず、御所反対方向から表通りを重装騎兵が走り、住民には目もくれずに武装した騎馬警官だけを切り殺した。
その不届き者は何者か? 冬装の如き着膨れに見える分厚い兜に甲冑で、意匠はこの地域の物ではない。北方遊牧民の重装甲に似る。得物の矛槍の刃は大きく分厚く、斬馬も容易いだろうが的確に警官だけを切って、主を無くした馬は走り去って行く様子。あれでは騒ぎが加速するだろう。狙ったのか?
重装の軍馬が異様である。まず巨体で、ロシエの重量馬よりも大きいように見える。角飾りの馬甲に身を固めているが、これも着膨れのように分厚く見える。並の馬では歩くのが精々か、足を折るのではないかという重量感がある。道路の石畳みを蹴って削り剥がしている勢いからも窺える。それから蹄が偶蹄だ。鹿の系統? 飾りかと思ったが口元から牙が見えている。何の生物?
近くの住民が魔族である自分の顔に気付き、お助けください、と言う風に間延びに聞こえる声を出し始めた。
どうしたものか? 相手を知ることから始める。
斬殺し終わり、片手に持ち替えて血糊を捨てるように道路に向かって矛槍を振る重装騎兵とすれ違いざまに――近寄り過ぎれば抵抗者と見做されると警戒し、非戦闘員のように――その刃の腹に、そっと指を触れて思考の電流を流して相手の頭に届かせる。
思考言語は……天政官語か!
どうやってここまで? 龍人だけで霊山、龍道、龍脈の道を通って繰り返し出入り? 哲学の話ではないのか? 本当の、歩く道か。道は沼、塩、砂漠、山に谷、荒野、長すぎる道のり。何か抜け道か? 砂嵐に迷子、窒息、沈没、発狂!? 道中脱落者が一万、三万近く。虎が死んだ、蛇が馬が死んで鳥も? 亀は無事? 将軍が激励、残り一万に減る。それよりも目的は……魔都、直撃!? どの程度の攻撃を想定? 壊滅!? どうやって? 騎兵突撃で混乱、歩兵で住民追い払い、勢力圏確保、火……鳥? 何の比喩か、術か?
重装騎兵が走り去る。木乃伊程度の異形だったので、暗がりで痩せた老人か何かにしか見えなかったか。
重装騎兵がやってきた方角から大勢の住民が、中には警察に、昼に元生徒が語っていた義勇兵らしき連中が走って逃げ来ている。その背後には剣に盾に弓矢を持った重装歩兵が、虐殺するよりは追い払いを重視して動いている。歩兵隊列の後方で楽器を鳴らしている者がいて、あの調子はずれのような笛の音はチャルメラか。この辺では楽団か、東方の宗教家や大道芸の者しか鳴らさない。
警官隊が機を見て立ち止まり、振り返って小銃を一斉射撃。重装歩兵の剣盾、鎧兜に弾かれて無意味。そして足を止めて距離が狭まり、剣で簡単に身体を縦横に両断され始めて壊走。一般人を保護する義務など忘れたような走り様。
この通りを真っすぐ行けば御所に付く。魔神代理に直接被害が及べば取り返しのつかないことになる。この情報、早く御所衛隊に伝えなければ。
軍務省にも伝え、訓練中の親衛軍第三軍に魔族軍も近郊から寄せた方が良い。警察では話にならない。それからダスアッルバールには鋼鉄艦隊編制に人と船が集まっている。孤立無援ではないが、どこまで対処出来るのか全く分からない。経験が無い。魔都は大氾濫の時代以後、侵略の手から遠かったのだ。平和に呆けて。
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