第298話「峠越え」 ベルリク

「手洗いうがいを徹底しましょー!」

「徹底しましょー!」

『徹底抗戦! 小さな奴らは陰に潜んでいる!』

「ご飯を食べる前に手を洗いましょー!」

「手を洗いましょー!」

『疫病を鉄槌粉砕して防疫闘争に勝利!』

「ご飯を食べる前にうがいをしましょー!」

「うがいをしましょー!」

『疾病を殲滅掃討して労農軍務に邁進!』

「突撃に清潔せよ!」

「突撃に清潔! ホーハー!」

『ホーハー突撃!』

「突撃に洗浄せよ!」

「突撃に洗浄! ホーハー!」

『ホーハー突撃!』

 広報の妖精達が楽隊とともに防疫行進曲なる演奏をトンチキピーパフ鳴らしながら野営地を行進して回り、宣伝をしている。

 ランマルカの疫学研究所から最新の研究発表があった。一部の病気の原因は細菌という目に見えない生物が生み出す毒効によるものと判明したそうだ。小難しいことはともかく、簡単な対抗手段として手洗いうがい――当然ながら綺麗な水で――をして、体外にある汚い物を体内に入れないようにすれば大半の病気を高確率で回避出来るという。

 細菌の概念は難しいが、腐った死体や糞溜りの近くにいたり、病気持ちの動物を食ったり、性病患者との性交で罹患するというのは馬鹿でも分かる理屈。そういった病気の元になる汚れ、汚れの中に潜む細菌から身を守る方法が、まずは手洗いとうがい。

 徹底するなら手法の数に限りが無いぐらいだが、戦時に徹底は困難なので簡単な方法を広めようということだ。石鹸――洗濯用品を流用――を使うと尚良い。手洗いはともかく石鹸水でのうがいまではしなくて良いようだ。

 いつも通り面白いことやってるな、という感じで手洗いにうがいをしないで食事に入ろうとした人間の兵士がその妖精達に腕を引っ張られて連行される。

「うがいしなきゃダメ! 風邪ひいちゃうよ!」

「手を洗わないとダメなの! ぽんぽん痛くなっちゃうよ!」

「やんなきゃダメー!」

「死んじゃ嫌なのー!」

 抵抗すれば殴られ、銃剣を突きつけられ、手首に縄が回り、煮沸した水が溜めてあるところまで引きずられて短剣を口に突っ込まれては噛んで閉じないように縦にし、清潔を強要される。

「銃殺隊構え! 疫病発生源を撲滅する。反抗する者は間接的潜在敵である!」

『潜在敵を撲滅せよ!』

「清潔か死か!」

『清潔か死か!』

「清潔然らずんば死を!」

『清潔然らずんば死を!』

「手を洗わずば手を落とし!」

『手を洗わずば手を落とし!』

「うがいをせぬなら息を止めよ!」

『うがいをせぬなら息を止めよ!』

 憲兵隊が整えた横隊に射撃準備をさせ始めた……騒動になる前に総統が手本を示す時だろう。皆から見えるところで手洗いとうがいをしてから飯にする。

 濡れた手はナシュカの前掛けで拭いた。「邪魔だ糞ボケ」って言われたからおっぱいのところでも口周りも拭いたら「おい糞城主てめぇ」とも言われた。乳首に見当つけて突っついたらケツを蹴られた。

「総統閣下もやっている! 皆も後に続け!」

『総統閣下ホーハー!』

「総統閣下こそ防疫闘争の核心! 飛翔する先駆け!」

『総統閣下ホーハー!』

「総統閣下こそ殺菌の名将! 将兵こぞって滅菌包囲網を構築せよ!」

『総統閣下ホーハー! ホーハー! ホーゥフゥアー!』

 そして”総統閣下が人民の模範たるべく手洗い、うがい闘争を実行せし地”という看板が立てられた。ついでに銅像を立てる基礎工事まで始まった。

 それからは広報以外の妖精兵、主に憲兵がその辺を歩いては相手の眉間に向かって指差し「君はもう清潔をしたか?」と指摘して回るのが流行った。そのような強迫性を強調した宣伝絵も張られる。


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 個人的に気になる手紙を受け、出す。会話と違うので受けても直ぐに出す必要は無い。

 腹違いの妹エレヴィカとは頻繁に文通していてお家の話もそちらでしている。その代わりに父とは年始の挨拶程度しか手紙を交していない。それが今回、オトマク暦での新年、春を迎える前に手紙が公的な装丁で届けられた。まず良い報告じゃないだろう。

 内容はセレード王国議会で国内居住者以外への領地継承を禁じる法律が通ったとのことだ。つまりイューフェ・シェルコツェークヴァル男爵位の継承権が自分から腹違いの弟サリシュフに移ったということになる。

 この手の法律は神聖教会諸国では国内分断を防ぐために割と古くからあり、エデルト王国も同様。セレード王国では従いたくない主君には逆らっても良い、ただし保護が無くなって殺されても文句を言うな、という伝統があったのでわざわざそのような法は必要無かったのだが……第二次東方遠征で忙しい時を狙って来たか。

 とりあえず話は把握したと簡単に返信しておこう。実際にどうこうするかは後だな。

 次にザラからの手紙。エデルト語での挨拶から始まった。話せるようになった言葉を文字に起こしているらしい。この時期にその言葉とは中々、政治に対しても触覚を伸ばしていると見える。賢いなぁ、何であんなに賢いのか意味不明だなぁ。

 さて主な内容とは第四子、男子誕生! である。ダーリクが描いたという似顔絵付きで、赤ん坊は大体そんな顔しているだろうという肉団子。そしてやはりあのハゲからは一言も無い。

 名前はやっぱり悩むなぁ。祖父母あたりから取るのは考えるの楽だけどなぁ……ランダン王殺害記念にウズバラク? もうちょっと強かったら良かったんだが。うーん……よし、ザラに決めさせよう。頭の中にもういくつか候補ぐらいあるだろう。五歳でもう名付け親かぁ、凄いなぁ。


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 遂に訓練が完了したラグト両翼方面軍十万、前線配備となる。ランダン北方コルチャガイに配置され、代わりに北ハイロウ臨時集団は解散。督戦隊を中心に見込みのある者達がハイロウ方面軍として教導団に教育され、正規軍として再編される。他は日常生活、生産活動に戻らせる。大分磨り減ったし、警備体制も確立してきたので安全と判断した。テイセンが泣いて喜ぶだろう。その顔を見れないのが残念だ。あいつの涙が見たい……だが喜びの涙はちょっと微妙だな。

 また続々と到着している魔神代理領各州からの義勇兵の数がまとまり、こちらもコルチャガイ方面に配置する。シャミール大総督がいるので指揮権の序列をどうしよう? という問題は生じ辛いだろう。替わりにワゾレ方面軍に重砲兵群は配置替えて東進に組み込む。我が先鋒を行く軍容に火力不安があるので丁度良い。

 イラングリ方面軍はランダン臨時集団を分割再編したランダン、アインバル、ハヤンガイ臨時軍三個を前面に立てて、今まで適当にしていたアリダス川方面からランダン包囲に加わる。その片手間にオング高原方面も攻略する。ハイバルくんが先んじて侵入したようだが、成果はいまいち不明。運は良さそうだが。

 北陸、南洋戦線に分割された派遣することになった親衛軍の片割れもようやくザカルジンに到着したそうだ。南方総軍のゼクラグにこの戦力の補充が必要か問い合わせている最中。不要ならイラングリ方面軍と配置を交替させ、三個臨時軍を教導団に訓練させたい。

 軍の再配置は順調。憂いなく東進する前線は、トンフォ山脈登山口に当たる都市ゾマドの攻略に移る。

 前面にチュリ=アリダス臨時集団を立てて尖兵戦術に突撃させる。その後方で中央軍が督戦し、砲兵支援を加える。ヤゴール方面軍は北、左翼側から、レスリャジン男女二万隊に黒旅団は南、右翼側から迂回浸透して都市外にいる敵軍の野戦撃破に移る。

 三方から同時攻撃を仕掛けたが敵野戦軍は素早く後退。ウラマトイの軽騎兵ばかりで帝国連邦騎兵でも追撃は難しかった。馬だけで言うなら、火薬慣れ以外では互角である。装備についてはこちらの方が重装備、機動力で負けた。

 ゾマド攻城戦だがこれも素早く敵守備隊が後退してしまった。この守備隊も全てウラマトイの軽騎兵で、最後尾の集団は先回りしていたレスリャジン騎兵が捉えて新型小銃で一方的に壊滅させたがそれ以降の集団は逃がしてしまった。

 尖兵を突入させた市内の家屋は全て焼かれ、井戸には糞尿土砂に死体が投げ込まれ、食糧や火薬どころか薪に石炭も全て燃やされて奪う物が無い。そして市内には腐った死体、殺された病人が転がされていて基地には直ぐに使えない。それから戦意を喪失した市民も残していったので戦える男はチュリ=アリダス臨時集団に組み込んだ。


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 ゾマドを突破し、トンフォ山脈を東西に分ける関門、センチェリン峠を攻略する。

 まず登山道を横断して塞ぐように森林が繁茂している光景が見られる。敵の方術で異常成長した樹木が大きく、異様に密生して壁や迷路のようになっていて容易に進軍が出来ない。速度が大事なので、砲弾供給量を考えた上で砲兵には森林を砲撃、粉砕。伐採、株抜きの手伝いをさせて道を開かせた。

 そして従来の森と異常成長の障害林を根拠地として敵の新兵器である、猟犬のように飼い慣らされた虎を連れる山岳兵との遊撃攻撃が始まった。対抗部隊を出すが苦戦と報告。

 敵山岳兵は狙撃手として優秀で強く、それを支える虎が犬以上に賢く立ち回るので森林地帯での戦闘はこちらが圧倒的に不利。とくに夜間の散発的な襲撃は強烈で、襲わずとも虎の吠える声が響くだけで人も馬も怯えた。また遠隔爆破の地雷を少数、散らして撒いて去るので手こずる。

 ルドゥが虎――揃って白子のような白黒縞――を獲って来て、ナシュカに料理させたら肉としてはそんなに美味くなかった。「その乳ぶら下げて何だこの味は?」と言ったら「うるせえ全部食えケツに突っ込むぞ」と言われ、そのおっぱいの隙間に手を入れて脛を蹴られて思いついたことがある。虎に対する恐怖を克服させるため、各将兵に虎を解体して料理する様子を見せて、そして食わせた。妖精が山岳兵を生きながら料理して食べる様子も公開。効果はそこそこあった。怪物は恐ろしいものだが、食える動物となればやってやれないことはないと心持ちが変わったようだ。尚、捕虜証言によると虎は馴虎と呼ばれる幽際――現実と幻想の中間ぐらい――の生物らしい。

 そんな不利な状況に甘んじる気は無いので、まずはグラスト魔術使いと術工兵を中心に森林を計画的に、こちらが罹災しないように伐採不燃の区画を作ってから焼かせた。周辺部からではなく奥の方から、各所、一点一円に絞らず、森林山岳部を禿げ山とするように。竜跨兵にも徒歩の兵士が簡単に足を踏み込めない遠方から焼夷弾を使い、石油を撒いて燃やさせた。風の強い日が良い。また斜面の森林は魔術での土砂崩れで一掃させ、その流れと勢いを殺さないように平面な部分にも流してやると効果的。森林を均す度に虎の襲撃は頻度を減らす。

 虎対策に鋭い杭で固めた小さい防御陣地を側面に細かく配置するようにした。ここには銃兵一人で虎一頭に対応出来る。山岳兵の狙撃も合わさるともう少し人数が必要だが。それから見えていてもいいから罠も数多く設置すると更に被害を抑制出来た。攻撃進路限定させるだけでもやりやすくなる。

 緊急防御射撃体制を築いて毒瓦斯弾を周辺に撃ち込むようにした。フレッテ人の夜襲を思い出せば良い。定期的に、周辺へ予兆も無く突然予防に毒瓦斯弾砲撃、夜間なら照明弾も混ぜる。どうやら敵は虎用の防毒覆面を開発していないようなので効果覿面。山岳兵もその装備を重さ、息苦しさ、隠れて動けるという自信から疎かにしていた。

 虎の知性だとか、主人を拷問した際の反応から高度な感受性も確認されたので人間のように精神を磨耗すると考えた。人と虎の惨殺死体や、出来るだけ死んだ方がマシな生きてる状態且つにゃんにゃんねこさんと、人虎もどき、主従合身などの見せしめも行った。更に襲撃頻度を減らす。

 進めば森林に紛れて敵の塹壕線も見られるようになる。北征軍基準には達しているようで、金茨の障害物、木網と石杭で固められた塹壕が最低でも正面、支援、予備の三重構造になっていて胸壁、背壁、連絡豪完備で堡塁も多く立体的で、重火器も揃っていて火力が充実している。

 チュリ=アリダス臨時集団を尖兵に突撃させるが、開いた道がまだ工事中で狭く、大量投入が出来ないので草原の平地のようには上手く攻撃出来ない。遠隔爆破の地雷は惜しみなく使われて尖兵の足も士気も千切って飛ばすし、強引に敵塹壕へ乗り込ませても火噴の方術で焼け出される。そして突撃が鈍ったとなれば即座に逆襲が始まり、火箭に新型砲を含めた密度の高い砲撃が始まって太鼓にチャルメラ、馬頭琴まで鳴らした突撃で追い返される。違いがあるとすれば”前進”ではなく『フールアー! フールアー!』という喚声と、銃撃の正確さ。

 その逆襲のウラマトイ歩兵は高度な施術がされていて、感覚をわずかに麻痺させる薬草術、わずかに意識共有させる方術で副作用はほぼなく、元からの剽悍さが加わって非常に勇敢である。脅すような魔術、砲撃でも早々簡単に逆襲の勢いを止めずに尖兵達を殺戮して減らして突進。督戦隊も逃げ出し、後ろ支えの正規軍の銃兵、砲兵の水平射撃圏内まで坂落としにやってくる。そんな勇気は銃弾砲弾化学薬品で粉砕出来るのだが、引き際も弁えていて、こちらの迎撃が先読みされると冷静に引くので効果的に殺せないことがある。

 こちらに間接射撃が得意な優れた砲兵がいなかったら長く足止めされていた。非正規の尖兵達に多大な損害、予想以上の砲弾消耗を強いられながら前進した。


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 ウラマトイ軍の抵抗、想像以上に固い。繁茂という方術が森林山岳地帯と相性が良いということもあるが、ランダン軍と違って士気が高くて統率もされている。天政属国の優等生は装備も訓練も、信用されて良くされていたようだ。

 山奥に進むほど陣地がまた固くなる。斜面に築かれた塹壕線は地形を生かし、崖の上や、今度は森を伐採して開けた地形を使って遠く、高い尾根の上に築いた砲台の射線を開いていて精確に撃ち下ろしてくる。その砲台へ行く途中にも塹壕有り、堡塁有り、上と下を繋ぐ坑道があって地雷も敷設と守備厳重。これはかなり厄介。

 縦方向、前に進む、砲弾が直進しないように左右に曲がる攻撃塹壕を掘り進める。

 地下坑道からの爆破で塹壕も堡塁も崖も斜面も崩して、その上で毒瓦斯弾、煙幕弾、榴弾、徹甲榴弾、榴散弾を浴びせて制圧して尖兵を何度も突撃させる。かなり死んで減る。督戦隊も突撃させるか判断に迫られている。

 塹壕、坑道掘りの工事には術工兵が活躍するのだが、その工兵魔術を敵が方術で妨害してくる。目にも見えず音にも聞こえないが、術使いだけが分かる感覚で乱されるらしい。ウラグマ総督のあの魔術が脳裏を過ぎったが、程度は隣で音痴が大声で歌っている傍で美しく歌うように頑張るぐらいに辛い感じだそうだ。アリファマが「申し訳ありません」と、術による坑道掘削の遅れを指先ちょんちょんする感じに報告してきた時は可愛かった。

 その妨害方術に対しては竜跨兵、気球の航空偵察と、感覚の優れた術使いによる逆探知――妨害が飛んで来る方角が分かる――の組み合わせで、術が行われている場所、交代しながら継続している集団位置を大よそ特定して砲撃して殺すか、音、振動、毒瓦斯などで術を使えるような神経ではなくさせて妨害する必要があった。

 そして敵は窮するような状態になると、ある程度まとまった数で気が狂ったような、痛みを忘れた兵士の突撃で後退時間を稼いで来る。捕虜尋問によると超人という方術で、感覚を麻痺した上で怪力を発し、代償に体を動かす時は己の体を破壊してしまうという。聖戦士団のようなものか。戦術の穴を埋めるような策が用意されているのは上手いやり方だろう。

 互いに撃って掘って爆破して突撃と逆襲を軍楽鳴らしながら反復し合う。

 後方連絡線への敵山岳兵と虎の襲撃対策に森林は、トンフォ山脈西側を禿げ山にするぐらいに焼かせた。敵の使う植物を異常成長させる繁茂という方術は遠隔では出来ないので突然に木々に包囲されるようなことはない。禿げを維持出来ている。それでも狙撃、補給物資の焼き討ちが度々行われるので中々、敵の数が少ない割りには苦戦させられる。

 ここで龍朝天政が山脈に属国軍ではない戦力も集中して来たら辛いところだが。さて? 敵にも敵の事情がある。レン朝の残党軍とか居そうで、安易に軍を動かせないという話はあってもおかしくはないが。


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 遂にズィブラーン暦の上では春に突入、低緯度帯の春前にトンフォ山脈突破はならなかった。北の冬は長く、玄天暦法だとまだ冬ではあるが。まあ、気候ではなく暦、数字だけを気にして作戦を進めるのは愚かなことなので気にしない。記念日までに勝利、などという考えはアホ。

 じりじりと攻め上がってようやくトンフォ山脈を東西に二分するセンチェリン峠の要塞に到達した。主要道路が突き当たる正面側は高所、崖を利用した撃ち下ろしの砲台が構え、大軍で近づけない道外れ、斜面に森林沿いには小部隊守備でも苦戦を強いれる山脈尾根沿いの長城が伸びる。そしてその後方に砲兵陣地が築かれていて、壁の前後にも塹壕線が厚く展開されている。そして何よりウラマトイ兵はここまでの後退戦で心が挫けている様子を見せない。これは強い。

 この峠はおそらくウラマトイにとっての最強の場所だ。攻め切れないならその北征軍などと違い多くはない人的資源を消耗させ、ワゾレ方面軍と重砲兵群の到着を待つことにする。攻め切れるならそのまま前進だ。

 ここではウラマトイ兵だけではなくユンハル兵も戦闘に加わり始める。兵力の補充は万全か? 彼らもこちらに恭順するなら何れ教導団に送って訓練したいところだが。

 センチェリン峠の攻略は、まずは森林を燃やして正面を広く確保すること。敵に一点防御さえしていれば大丈夫という状態にさせない。そうして燃やしながら塹壕、堡塁、砲台、長城、砦、塔を砲撃して破壊しつつ、敵の新型長射程砲の展開を察知したら対砲兵射撃に移行、もしくは予備砲兵に対応させて先に叩き潰す。敵砲火力の削減を優先。

 敵は防御しながらも左右から虎を連れた山岳兵に、ユンハル騎兵も小出しに出撃させて遊撃戦を仕掛けて来る。

 ユンハル騎兵は士気が低くて割と簡単に降伏する。戦力が補充出来て丁度良いと思ったが、その中にはウラマトイ兵も混ざっており、仲間に加えた後から決死に補給物資、特に砲弾諸共と自爆しようと特攻を仕掛けて来たので危なかった。弾薬庫の見張りが任務に忠実な妖精でなければ危なかったらしい。

 将来の戦力であるユンハル騎兵を粗雑に扱うことは考えものである。臨時集団にして尖兵に突っ込ませるのは勿体無い。何か策は無いかと考えていたら有志が現れた。一目見て、王族か何かか、目つき顔つきが違った男だ。

「私ならばユンハル同胞とウラマトイ人、見分けがつきます。選別が出来ます」

「じゃあお前、ユンハル軍……いや義勇軍だな。その将軍やれ。名前は?」

「イランフです。我らが王は向こうで復天治地明星糾合皇帝である貴方様をお待ちです。この峠、必ず突破しましょう」

「……何?」

「我らの天下を復して大地を治める輝ける星、皆を一つに纏め上げる王の中の王ベルリク=カラバザル・グルツァラザツク・レスリャジン万歳」

 真顔の熱視線で静かにそう言われたのは初めてかもしれない。

 センチェリン峠要塞にはここの、ウラマトイの最強が固まっている。ここを抜かれたら後は、逆に敵は山の上から撃ち下ろされて不利になり、山を下りられたら広いウラマトイの良質と呼ばれる良い草原が広がっていて防衛線で防ぐどころではないのだ。戦略的にはここがウラマトイの絶対防衛線。天政にとっては違うだろうが、それを破壊する。

 冬である内に、暖かくなる前に、水が凍りつきやすい内にセンチェリン峠の地下に湖を作って大規模爆破呪術で粉砕することになった。

 敵は相変わらず坑道爆破防止に妨害方術を飛ばしていて術工事が難しい。対妨害術射撃であるが、地下湖を作るには工数が掛かるので、大量の砲弾を消費して長期間行わなければならない。

 まずは工事期間を、センチェリン峠陣地の規模から算出させる。算出したなら最低必要な対妨害術射撃用の砲弾も算出させる。その砲弾を貯蓄する間に、敵を損耗させるための尖兵突撃用の砲弾、陣地構築物の破壊と補修妨害用の砲弾、対砲兵射撃用の砲弾、対逆襲用の予備砲弾も算出させると中々、供給される砲弾量が少なくて困る。

 対処法。魔術使いの負担が増えるが、光学魔術式弾着観測応用高精度射撃で狙撃するような対砲兵射撃の回数をかなり上げる。これで狙うのは主に敵の砲弾。人は疲れるが砲弾使用量は減る。他の射撃にまでこの術を使うと疲労が多過ぎるので実施しない。

 次にイラングリ方面軍から砲弾を融通して貰い、その分を先行予約に、到着する日時と調整しつつ予備砲弾に換算して現有している砲弾使用量に上乗せする。これがただの帳簿合わせにならないようにする。実際に有効活用されるのは地下湖爆破後だろう。爆破後の突撃と突破時にも当然砲弾は必要であるから無駄ではない。

 後は鉄弾を肉弾に変える。チュリ=アリダス臨時集団を絶滅させても良い勢いで突撃させることにした。督戦隊も動員する。遠慮しないで使い切る。

 イランフのお陰で障害少なくユンハル軍を吸収の目処、つまりは新たな戦力補充の可能性が生まれた。今削り切る予定の尖兵の代替がある。完全に信用――彼自身というより壁の向こうの王――するわけではないが、多少はそういう不安定な部分に頼る。

 そもそも臨時集団の肉壁尖兵達は軍のおまけである。いないより居た方が被害を抑制出来る便利道具程度の存在で、戦力外なのだ。帝国連邦軍の本領はそこにはない。

 工夫を重ね、砲弾を備蓄し、対妨害術射撃を実施しながら、妨害方術の加害範囲で地下湖の建造作業が進む。妨害さえ無ければ訓練された我が術工兵と、こちらのやり方に慣れたグラスト魔術使い達の掘削速度と無駄の無い計画工事により必要な空間が岩盤を掘り抜いて作られ、注水が行われて氷結、大規模爆破呪術の刻印と専用使い捨ての発動要員が設置される。

 爆破は、風の弱い日を選んだ。

 地面が鈍く重く揺れて、その先で盛り上がり、立ち上がり伸びて、頂点から弾ける。相変わらず大規模爆破呪術による地雷爆発のこの光景は素晴らしい。

 噴き上がった土砂、防御施設の残骸、敵兵、敵火器が降る。距離は十分に取り、前線部隊は塹壕に隠れられるようにしておいたが、斜面の落差から落下物の飛散が広く、物が転がって飛び込んで来たので被害が多少あった。敵は尚更。

「化学戦用意」

 最前線に立った古参親衛師団”三角頭”は防毒覆面を装着。大規模爆破呪術で地表が引っくり返った地雷爆破圏は足場が非常に悪くなっているため、随伴工兵の装備は、自衛火器は最低限として仮道路敷設、架橋装備準拠となっている。

 航空偵察で判明している堡塁、人と物の出入りの頻繁さから掩蔽壕や側防窖室が設置されていると予測された地点を最優先に光学魔術式弾着観測応用高精度射撃で狙い撃ちに徹甲榴弾による集中射撃で破砕開始。敵の隠れ場所を潰す。それで地下施設の位置を予測して砲撃を集中させる試みは一部成功、地下弾薬の爆発と見られる土砂粉塵混じりの火柱や、塹壕を走る火炎爆風が確認された。重砲が無いので火力面での心配はあったが、同地点に複数着弾させることである程度補えているようだ。

「同胞同志諸君! 東方征服による生存圏東進による大拡大こそ我らの約束を永遠にし、兄弟姉妹と子々孫々を栄光にする! 行けよ突撃、敵を殺す突撃兵! ホッハーホッハーホッハー!」

『ホッハーホッハーホッハー!』

「突撃隊のお歌!」

『おー!』


  突撃隊、前進せよ!

  資本家が財産を狙っている

  だが西の果てから極東まで、

  突撃隊が撃滅せん!


  突撃隊よ、武器を手に進め

  一心軍務に敵を討て!

  前進突撃、突撃前進

  最期になるとも突撃だ!


  突撃隊よ、武器を手に進め

  一心軍務に敵を討て!

  前進突撃、突撃前進

  最期になるとも突撃だ!


 重要施設への集中射撃後に移動弾幕射撃開始。弾着地帯は予め諸元を設定していた予測地雷爆破範囲から始まり、その範囲より手前に無事な地上防御施設があれば一部は移動弾幕射撃を後退させ、それ以外は前進する。有効射程圏内に万遍なく着弾。速度重量が乗る徹甲の弾頭が地面や屋根に深く刺さってから遅延信管が起動、爆発。金茨を千切って飛ばして木柵、繁茂樹木、石杭、地雷も城壁も塔も砦も破壊、塹壕を抉って木網を爆砕に土壁ごと崩して敵兵が爆発と破片に刻まれなければ生き埋め、それで死んだら埋葬。高精度射撃を逃れた掩蔽壕、側防窖室の屋根が薄ければ突き破って内部から爆砕。

 表面上の固い施設が破壊され、穴だらけになってから毒瓦斯弾射撃に移行。土砂崩れに埋まって窒息するか、空気の通りが良くなったところに、防毒覆面の保管庫をある程度潰された状態で目と呼吸器をやられるか、火薬量が少ないとはいえ生じる爆発と破片効果で死ぬ。防毒覆面を被って破片爆風をやり過ごした敵兵は、悪い視界と聴覚、苦しい呼吸で能力が低下。指揮統率、対応能力が減る。

 続いて通常榴弾による掃射。敵を殺すことも目的だが、優先されるのは地表で爆風を起こして金茨、木柵、繁茂樹木、石杭、地雷とそれ等残骸を吹き飛ばして掃除することが目的。道を平らにする。その過程で塹壕に直撃、地上を間抜けに走っている連中を吹き飛ばし、隠れている者達に爆音を聞かせて神経を萎えさせる。

 そして隠れている敵は殺せないが、榴散弾を敵防御陣地上空で満遍なく炸裂させて鉛の通り雨を降らせて不用意に身を露出させている間抜けを穴だらけにする。

 仕上げに相互連絡を困難にし、視界を塞いで混乱させ、尚且つこれから突撃するこちらの兵士を狙い撃たせないために煙幕弾を撃ち込んで白煙を撒く。

 この壮大な移動弾幕射撃の後ろを付いて歩くように古参親衛師団”三角頭”の中でも先鋒を切る親衛突撃連隊”前進”が前進していた。地雷爆破圏は既に踏破済み。


  突撃隊、前進せよ!

  地主が土地を奪い来る

  だが北の地から南洋まで、

  突撃隊が撃滅せん!


  突撃隊よ、武器を手に進め

  一心軍務に敵を討て!

  前進突撃、突撃前進

  最期になるとも突撃だ!


  突撃隊よ、武器を手に進め

  一心軍務に敵を討て!

  前進突撃、突撃前進

  最期になるとも突撃だ!


 突撃兵は残存している敵兵を小銃、拳銃、散弾銃、棍棒で掃討して道を拓く。

 随伴工兵は木板を敷いて拓いた後に道を作り、防盾付き最軽量の突撃砲を前へ運べるようにする。

 毒瓦斯と白煙の中、砲弾痕に乱れた地面を踏んで突撃兵は前進。金茨、木柵、繁茂樹木、石杭、地雷などまだ残存している障害物を撤去する随伴工兵を護衛。

 堡塁を高精度射撃で破壊した上で視界を塞いでいるので敵の反撃が弱い。

 突撃兵は塹壕に接近出来れば手榴弾を投げ入れて残存敵を掃討。

「手榴弾どーん!」

 塹壕まで距離があれば迫撃砲や擲弾銃で同じく掃討。

「擲弾ずーん!」

 塹壕内は念入りに火炎放射器で焼いて掩蔽壕や側防窖室を無力化。偏向噴射口という、正面から構えなくても曲がり角から的を狙える金具が採用されたので場合によっては一方的に。

「燃える油がどびゅびゅびゅ!」

 慎重なだけではなく、時には拳銃、散弾銃と棍棒を持って塹壕に踏み込んで敵集団に掛かって叩き潰す。

「がおー!」

 そして塹壕を何線も越えて行く。


  突撃隊、前進せよ!

  教会が人心を貶める

  だが日の下から地底まで

  突撃隊が撃滅せん!


  突撃隊よ、武器を手に進め

  一心軍務に敵を討て!

  前進突撃、突撃前進

  最期になるとも突撃だ!


  突撃隊よ、武器を手に進め

  一心軍務に敵を討て!

  前進突撃、突撃前進

  最期になるとも突撃だ!


 白煙が散って薄くなった箇所には選抜射手、重小銃兵が回されて動く敵を見つけ次第狙撃に移る。

 徹底したつもりの砲撃にまだ破壊されず、抵抗力を残している火点があればそこへ突撃砲が優先的に回されてその防盾が展開され、土嚢、残骸や死体も集積されて簡易防御陣地が築かれる。そして素早く後方に伝令が送られ、色付き発煙筒が投げられた地点を光学魔術で観測し、実際の目標を確認し、方眼地図を参考にし、その地点より少し敵側奥に着弾するように高精度射撃が始まり、慎重に弾着修正が重ねられ、しかし練度により素早く効力射に移行して該当火点を粉砕、前進に繋げる。

 移動弾幕射撃の着弾帯が峠の頂上を越え、敵後方陣地に到達。航空偵察と連携し、敵の塹壕線に沿った形で着弾位置が停止するよう、砲弾の足踏み。これで敵の頭を抑え続けて逆襲を防ぐ。前進するこちらと待ち構えるあちらを幕で分ける。

 弾幕射撃に参加していなかった予備砲兵の前進が終わり、航空偵察と連携して対砲兵射撃を開始。弾幕射撃中の砲兵の有効射程圏外に待機する敵砲兵を狙う。毒瓦斯弾による全般的な行動抑制からの、榴散弾による砲兵馬匹殺傷と大砲、弾薬の退避行動を阻止、そして榴弾による大砲、弾薬の直接破壊を敢行。

 気球隊はともかく竜跨兵の疲労が気になる。グラスト魔術使いを乗せ、交代で休ませて輪番を組んでいるが、腹の下を砲弾が飛び交って毒瓦斯が舞って煙幕が立ち上っているから疲労は割り増しだろう。アクファルは遠慮しないで無理なら無理と言ってくるけども、戦闘開始前から峠界隈で高高度から方眼地図を作成していてほぼ休み無しだ。気がかり。竜の数、増やせないものか? それかその代替か。気球のおかげで負担は相当減っているけども。

 親衛突撃連隊”前進”がセンチェリン峠の頂上を確保したと報告が上がる。目印に帝国連邦旗も揚がっている。自分も頂上へ行こう。

 現在進んでいる峠への道の補修が完了次第、頂上にも砲兵隊を配置させる。山の天辺から撃ち下ろすのだ。

 センチェリン峠の要塞は突破された。そこを中心とする敵の前線と化した後方陣地は着々と、敵の予備砲兵が反撃しているので多少被害はあるが、制圧中。頂上に到達すると良く見える。あー、自分も参加すれば良かったかな? 次やるか? いや今からやろうか?

 対砲兵射撃を行った線より後方の敵塹壕より、太鼓とチャルメラ、それに馬頭琴の演奏までつけたウラマトイ兵の逆襲が始まった。

『フールアー! フールアー!』

 喚声を上げた歩兵が防盾付きの軽砲と斉射砲を引き連れ、その頭上を超越して連機火箭による猛爆撃が……見当外れに、最前線の突撃兵より手前に着弾……苦し紛れだ。これ、本隊を逃がすための殿部隊じゃないか。あちらとこちらを分ける砲撃は続行中なのに。

 高い位置を取っている古参親衛師団は砲撃と狙撃でその最後の殿部隊を撃ち殺しまくる。砲撃支援要請で弾着修正がされ、その逆襲進路上に榴散弾が降り注いで敵の立った群れを叩いて寝かせる。

 奪った塹壕に控えた親衛突撃連隊”前進”は、それでも突撃してくる敵兵を拳銃、散弾銃の猛射で薙ぎ倒し、それでも塹壕に飛び込んできたら余裕を持って棍棒で滅多打ちにして殺す。

 古参親衛師団の前進に合わせて後続部隊も移動。残存敵を殺し、ユンハル兵ならば捕虜として迎え入れる。

 峠越えが敵殿部隊の全滅でもって確認された。

 それから投入時期はどうしようかと思っていたユンハル義勇軍指揮官のイランフがやってきた。

「ユンハル軍に寝返るよう説得して来ます。先に行かせて下さい!」

 突撃の機を掴んだ時の顔をしている。これは間違いなく前線から後方までの状況が天から見下ろすように見えている。

「良し、行け!」

「はい!」

 ウラマトイ軍はあの殿部隊を犠牲に、主力軍は重火器類をあっさりと放棄して素早く撤退したことが分かった。逃げるとなったら早い。


■■■


 トンフォ山脈を東へ降りた。西から登った時のような抵抗は無かったが、相変わらず山岳兵と馴虎の組み合わせによる散発的な襲撃は絶えず、森は燃やして対抗部隊を派遣した。防御体制も築く。

 ユンハル義勇軍であるが、説得により離反したユンハル軍と合流し、そして兵の見分けがつくと言ったあの男、イランフ王がやってきた。王自ら身分を偽り、センチェリン峠要塞から出撃して捕虜になってユンハル兵を可能な限り守ったとは、面白いことをする。

「伝説みたいなことしますね」

「危険を冒して信頼を勝ち取ろうと考えました」

「なるほど」

「ユンハルに残した女子供が危険だから直ぐに走って行きたい。既に報復せよと報せが行っているはず。その報せより早く行ければ追い越せるか、軍が到着する前に戻れます。そうしたらユンハル総員、戦えます」

「信用します。早く行ってあげてください。追撃は適当で構いません、移動優先で結構」

「感謝します!」

 ユンハル軍には撤退するウラマトイ軍への追撃に義務を課さないことにした。それから鹵獲した天政の小銃と弾薬は欲しいだけ渡してやった。

 ウラマトイ軍と天政中央から来たと見られる軍が山を降りた先の街道沿いに防衛陣地を築いていると偵察情報。ユンハル軍の迂回、帰郷になど構っていられず、防御を固めているとのこと。この広い草原、遊牧の軽騎兵を重装備で追い回せるものではないから当然の帰結。

 それからワゾレ方面軍がゾマドを通過したとの報告。順調。

 加えてオング高原北側諸族の平和的な帰順が成ったと報告もあった。詳細は不明だが、事前にハイバルくんが諸族の若者を募兵して軍に組み込んで連れて行ったおかげで交渉が速やかに済んだらしい。お祝いに大将の証代わりになる一番の勲章と、部下に配って回る分の下級勲章詰め合わせに新型小銃と弾薬を贈らせよう。下賜用の装飾刀も在庫があればハイバルくんに渡すよう指示しておく……そうだ。

「ルドゥ、あの虎の毛皮で外套と帽子作っといてくれ」

「もうある」

「よし、一組下賜用に包んでくれ。それから新興部族の大将格用に良い作りで数揃えておいてくれ」

「上級将校程度だな。分かった大将」

 外套、帽子も一緒に贈って箔を付けてやろう。珍しい白黒縞だから目立つ。ハイバルくん目立っちゃうなぁ。良い効果が望める。

 既存の部族に依らない勢力拡大の先例が出来つつある。民族練成は着実な一歩を重ねている。到達点は未だに先、坂の上の峠の位置。峠越えは遠いがそのための道は見えている。

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