第105話「霊山に集う」 シラン
妻が産気づいている。
若くて健康なのも手伝ってかさほどに苦しんではいないと産婆が言う。ならば早くひり出せばいいものを、礼拝の儀式のように時間が掛かっている。やはり腹を押したら出てこないものか?
今正に西勇軍が禁軍を打ち破ってオウレン盆地に突入したとの報告を受けた。早く前線に出ねばならぬ。
それに加えてビジャン藩鎮軍! あのサウ・ツェンリーが一人から始めて作り上げたその軍と、自分が出せる実力で持って作り上げた軍とが衝突する場面に立ち会わず、参加せず、何とする。
流石の皇太后もこの大事となっては口を挟まぬ模様。ここで代わりの将軍など送ってきたら無視している。
ヤンルーの防備は非常に固い。長丁場になろう。
出産時期でも見計らってか、クンチョン都公ウハン・フォモンから南部産の果物が届いている。身寄りの無い高級娼婦一人如きで随分と義理堅い。日持ちしないので氷を入れた箱に詰めてわざわざ早馬を使って運んできた。
ジャーヴァル原産だという檬果なる果物だ。赤の強い橙や黄色の混じった色合いで、実が大きく水っぽく、いかにも南国の物という見た目がよろしい。味は勿論素晴らしい甘さで香り芳醇、果汁が溢れるぐらいにあって食べ応えもあるではないか。どうにか工夫して近くに栽培所でも作れないものか?
三つ目の檬果を、切るのも面倒なので丸ごと食べようとしていると、ヒンユが初老の西域の人間みたいな顔でやってくる。
「お食事中失礼します」
「構わん」
「食べ終わってからお見せした方が良いものなのですが」
何やら不吉に言うではないか。
「構わん」
「では」
ヒンユが風呂敷を広げる。そこには、塩漬けにされて水分が抜けた隠密の首と……見忘れる訳も無いメイツァオの胴体の皮で丁寧に作られた革の服だ。皺の配置、乳首の形に位置、白黒の鱗紋様、正に奴だ。
「メイツァオは生存しているのか?」
「手足無く、阿片や酒漬けにされて正気を奪われた状態で地下牢にいらっしゃいます」
龍人の捕縛ともなるとそう手の込んだ事になるか? ……なるな。
ヒンユが手紙を一通差し出すので受け取り、読む。
”ルオ・メイツァオの身柄を返還して欲しいのならば、目立った手口で賊軍を裏切り実績を作ること”
自分にとって何ものにもメイツァオは替え難い。真に最後の身内だ。健康な内はいくらでも作れる妻に赤子とは比較にならぬ。
しかし引き換えに南朝を裏切れとはまた、厳し過ぎる要求だ。するにしても時期というものがあるのだ。そのあたり交渉の出来る相手であるか? 否、魔神代理領の遠征軍は引っ掻き回すのが目的で、そのような確実で長期に渡る計画に加担する気等無いだろう。これから十年以上に渡ってアマナに留まって行動するというのならまだその展開はあり得るが、彼等にとってそんな動員を続ける理由も、アッジャール朝の侵略で受けた大損害から復興していない状況でその余裕も無いと見る。
「救出は困難か?」
「マザキ預かりならばこの顔で可能でしたが、直接捕らえたセリン海域提督の管轄では困難であります」
「お前でも難しいか、現実的でないか、か」
「はい。恐ろしく勘の良い小人の兵士が目を光らせています」
鼻と耳と歯に所々削がれた生首に目がいく。拷問されたのではなく、元からこれだ。
「小人、小人が人間とか。西域でそういう事があったと話は聞いたが」
「その兵士、ルドゥと呼ばれていた者です。尋常の小人ではありません、一級です」
ヒンユが一級と評するとは怖ろしい相手だな。
「この者はどうか?」
「失敗した者ですね。成り代わりに関しては最高の技術を持っておりました。ならば他の者でも困難でしょう」
「顔削ぎ衆でも駄目か。お前でも確実という言葉は出てこないか?」
「はい。アマナの機微は前から研究しておりましたので不自然さを出さない自信はありますが、海賊上がりの魔神代理領正規海軍の機微ともなれば時間が必要です。今やれば鈍い者相手でなければ喋り方で発覚するでしょう。魔神代理領西部からやってきた者達ですので、我々が知っている東部の者達は性質がかなり違います故」
「分かった……救助か介錯が可能ならばやって欲しいが、無理をする必要はない。今後慮外とせよ」
「承知いたしました」
メイツァオは死んだものとする。戦場に出る者の習いだ。
「敵指揮官級の暗殺や脅迫の可能性は?」
「脅迫は挑発にしかならないでしょう。暗殺は困難な相手であり、既にその首の通りに警戒態勢です。毒殺ならば何人か仕留める事は出来ましたが、皆殺しは難しく、特に魔族二名は常人と異なるので不可能と考えるのが妥当でした。それに毒殺をしてしまっては政治的な敵対関係から個人的な敵対関係に発展してしまいます。特に、その機会に相応しかった結婚式で行っては尚更感情を煽る事態になり得ました」
「結婚式?」
「はい。小人を率いるグルツァラザツクという将軍とセリン海域提督です。式に毒を盛れば、あのアスリルリシェリの再来になりかねないそのセリンと、列席していた古い魔族ルサレヤは激怒したでしょう。百年に渡る報復が行われると考えてよろしいかと」
いつか去るであろう嵐を釘付けにするのは愚策であるな。ならば正面から破るしかない。海軍への支援強化か? しかし今は陸での戦いに資源を投入したい時期だ。内部分裂の様相を呈している海軍に支援をしても効果は空しいと思うが。
魔神代理領海軍が嵐ならば、沿岸部からの避難で凌ぐか? それでは南朝が窒息するな。内戦が無ければ問題も少ないが、あるものはどうしようもない。
「アマナ方面については最低限とし、後はヤンルー攻略を最優先、凡愚廃帝を下す事に全力を注ぐよう行動しろ。沿岸部の被害抑制案を通せるようにリャンワンで事前工作しておくように」
「承りました」
さて、今食べようとしていた檬果をヒンユへ差し出す。
「どうだ、日持ちしない物らしい。珍味だぞ」
「失礼ながら、私はそれを食べると不調を来たしますので遠慮致します」
「不調?」
「体が痒くなり、発疹が出るのです」
「む、軽い毒でもあるのか?」
そう言われると何となく体がむず痒くなってくる気がするが、いや気のせいだ。
「個人差があります。そうならない者もおりますが、あまり一度に多く食べられると分かりません」
「そうか、収めておこう」
三つ目は明日以降にしよう。しかし、日持ちがしない。冷暗室に保存しても限界があるだろう。
「方術にて冷凍保存し、半分溶かした状態で食べるという方法があると聞いた事があります。常より数倍日持ちするようで、そのようにされては?」
「なるほど……おお、そうか! 素晴らしいぞヒンユ、それは良い、良い事を聞いた」
「お役に立てて何よりです」
■■■
ヒンユが去った後、最前線から届く報告書を整理して分析する。
西勇軍が先導役になり、皇太后の後支えもあって一斉攻撃を行っている心算だったが、それは我が軍だけで、他の軍はフォル江から実質的に先に進んでいない状況だ。
表面的には進んでいるようだが、行っては引き返しをしている様子が情報から伺える。その分、一応は敵の軍勢を引きつけてはいるのだが、どうやら談合してまともに戦わないことに南北の軍閥が合意した様子である。気持ちは分からなくもない。
お遊びのような戦いで、負傷すら出さずに両軍撤退した状況もあるらしい。フォル江での水上戦闘でも被害が極端に少なく、軍が上げる戦果報告はどう考えても水増し勘定された数値だ。
全ての軍がそのような状態にあるわけではないが、隣がやる気無く戦っている以上、真面目な軍もおいそれと動けない。さすがの皇太后も一斉攻撃を命じる権力はあっても、軍閥全てに無理矢理死闘をさせるような圧力は持っていないのだ。
今、やる気のある我が西勇軍だけが敵地へ進撃している。そして我が軍を迎撃するのは、命の掛かっている禁衛軍、遠路遥々やってきたビジャン藩鎮軍の両軍、やはりやる気のある軍だ。お互い南北朝は、軍閥貴族共が囲んで観戦する中で殺し合っているのだ。
馬鹿をやっている。
酷い馬鹿をやっている。
南北朝で潰し合い、最終的には軍閥共がこの天政を千々に切り刻む心算だ。そして、南北朝が完全に弱るまで奴等は尻尾を出さないだろう。どうしたらいい?
軍閥対策を考えていると、リャンワンから皇太后直筆の手紙が届いた。公的ではなく私的なものなので配達人お出迎えの儀式はしなくて良かった、
内容は龍帝殿下への助力要請の催促である。交渉をルオ家が一任されているせいでどうしても催促がくる。その催促を断ることは出来ない、拒否されるのが分かっていてもだ。龍帝殿下もお察しして下さっているとは思うが、何ともやるせない。
今回は手紙に本人が直接出向けと今度の指示がある。一官吏に拒否は出来ない。
遠隔地からとはいえ、ヤンルー攻撃の指揮をしていると分かって言っているのか疑問になってくる。そこまで馬鹿じゃないだろうと思っていたら、そこまで馬鹿であったという事は無い話ではない。妻の膨れた腹に付き合っているからこの位良いだろうという気であるかもしれない。
出かける支度を手早く整え――手紙を見て露骨に嫌な顔をする――当主に霊山に参る許可を取ってから出発する。
何故か都合の良い時のみに開かれる霊山へ参る為、家の裏にある参道、階段を上る。階段となる石は自然の物を削ったものだが、加工が丁寧で磨かれてすらいる。雨に濡れれば滑りやすくて少々肝が冷えるぐらいだ。
都合の悪い時は階段を上り切ると巨大な岩が森の中に鎮座している場所へ到達するが、そうでなければ赤い霧が現れ、ふと気付けば霊山の階段を上って入るという幽地の境にある場所である。今日はその霧が現れた。
霊山は天龍の一族が住まう霊峰。仙人がいるとされるが、お目にかかったことはない。もしかしたら自分のような者の事を言うのかもしれない。
この地は大いなる方術にて存在は秘匿され、許された者しか入る事が出来ない、とされる。実際に許されざる者が侵入を試みて、成功したと報告して帰ってきた者は詐欺師のみ。
この山で見る空は常の空には見えぬ赤と白い雲のような何かの斑紋様。幽地の際を越した底に近い何か、別宇宙なのかもしれない。
においも湿り気も変わり、明らかに薄くなった空気を吸いつつ龍帝殿下がいる方向の山道を進む。
山道は尾根のようになっており、標高も谷底も霧でどうなっているやらまるで知れぬ崖で両脇が挟まれている。遠く見える山々が異様に巨大で、遠近感が狂ってくる。ここでは正気を保って前を進まないと底が知れぬ谷に落ちてしまう。あの山々の絶景や、得体の知れぬ赤と白の雲は見飽きぬが、足元に気を配る余裕は持っていなければならない。これこそ幽地の世界であろうか?
下界では見る事の無い、そして懐かしい姿の草花を時折観察して、まるで虫や鳥もいない事を昔通りと確認して進む。
風が生暖かい。高地は寒いものだが、ここは違う。裸になってその辺に寝転がっても冷えぬ程に温かい。
一向に喉は渇かない。仙人は霞を食って生臭など喰わずとも生きられると言うが、この霊山に来ると嘘には思えない。この地に住んでいた時期があるが、まともに食事は取らずとも成長したものだ。貧民共をここに押し込んでやればいいのだ。
道が徐々に広がりつつある。それが遂に地平の彼方まで広がったところで目的を見失わぬよう、道しるべとして石柱が並び始める。石柱は一抱え程の太さで、高さは人二人分程。風化して磨り減っているような物もあれば、磨きたての新品のように艶のある物も混じっている。誰が造り直していることやら。
石柱が途切れた所で地面も途切れ、途端に断崖絶壁となる。
ここで龍帝殿下に拝謁。白い羽毛の髭と髪、大樹の枝のような無数の角、地の底から鎌首をもたげる蛇のような白鱗のお姿は、神々しく恐ろしい。このような圧倒的な何か、下界にあろうはずもない。
跪く。
巨体から唸って聞える息遣いだけで体が震える。
「シランよ、宮仕えも大儀であるな」
お姿に似合わぬ人の声で、そして跪くなりそのお言葉である。とりあえず、ルオ家が呆れられているわけではない事がこの一言で分かっただけでも朗報だ。特に老人方、当主は相当に気を揉んでいたはずだ。
「龍帝殿下、再びのお願いあって本日参りました」
「申せ」
「退位を認めぬ廃帝レン・エイシュ並びにその配下の討伐にご助力頂きたく存じます」
「出来ぬ」
「話をお聞き下さり感謝申し上げます」
「下がれ」
「失礼します」
立ち上がり、頭を下げたまま振り向かずに五十歩下がり、そこで振り向いて家を目指して帰り道を行く。
正に徒労である。昔を懐かしみ、下界で見られぬ絶景を見るという楽しみでもなければ気分は最悪であった。
「だーれや?」
突如、女と分かる細くて柔らかい手が顔に、両目を覆うように触れる。
「今用事が終わって帰るところですが、ご用件は?」
「シランよ、宮仕えも大儀であるな」
「な!?」
内臓が口から出るかと思う程吃驚して、振り返ってその手を解く。
「どうやぁ? 今日はこの事含めてお話があるんやわ、のう?」
勿論目の前にいるのは黒龍公主である。あの声、龍帝殿下と思っていた声……。
「馬鹿にするにも程があります、殿下。戯れで誤魔化す心算ではないでしょうね」
「殿下ぁ? あら嫌他人行儀やね、ランラン怒っちゃやーよー」
黒龍公主は心底楽しそうに笑って、半分隠れるように石柱に抱きつく。その石柱を打撃で粉砕しても良いかどうか考える。方術を利用すれば破砕した石片が突き刺さる程にはなるはずだ。
「今のはどのようなご冗談で?」
「冗談ってのはあの置き物のことかの?」
「何と?」
「今日、こっちに招いたのはもうちゃんと全部言うためや。あんな生きてるような何なのかわけの分からん本に気色の悪いデカブツは前座や前座。ランランには頭入れ替えて貰おうと思ってな」
石柱の陰から出てきて、黒龍公主は指先で自分の唇をなぞる。
「あれはそうやのう、何にも知らん下界の連中に使うための虚仮脅し人形やのぅ。あれ見たら人間、普通は敵わんって思ってしまうんやわ」
「龍帝殿下とは何なのです?」
「さぁ? 昔からああやったわ。喋っても叩いてもあの調子、息してるだけで無反応。そもそもこの霊山ってのもわけが分からんわ。行き来の仕方は自力で掴んだけど、何やろね?」
「殿下でもご存知無い?」
「ご存知無いのう。あと殿下は止めてちょうだいね、名前で呼んでー、ね?」
頭が真っ白というか、幼い頃からの価値観をあっさりと引っ繰り返されてわけが分からない。
「ランラン、こっちおーいで」
黒龍公主に手を引かれ、抵抗する気力も無く、石柱の道を行く。途中で行きには無かった分かれ道を進み、気がつけば幼少の頃過ごした黒龍公主の屋敷の門前に到着していた。
「ほれランラン」
「……ただいま?」
「はいお帰り」
鏡のように波一つ立てない池と、石のように固められた土の地面、飾り気はないが造りそのものは非常に重厚でしっかりしている瓦葺の屋敷は昔からそのままだ。方術か何か、霊山の妙な何かで本当に時間が止っているとも考えられなくも無い。
屋敷に上がり、客間に通される。そこに座っていたのは自分と同じ黒い官帽官服姿の痩せこけた男だ。
「君、あのウィー・ソンニか?」
「その通りだルオ・シラン。君なら理解してくれると思っているんだが、どうか?」
どうか? だと? 痩せ果てる程の激務とでも言いたいか。しかしあの口の減らぬウィー・ソンニが何て様だ! 南朝の丞相、若手官僚派閥筆頭の今がこれか。総把軍監以外に一体何人の官僚が倒れているか知れたものでないぞ。
ウィー・ソンニの向かいに座る。黒龍公主はどこかへ消えてしまっている。
「君、黒龍公主殿下とはどのような関係であるか聞いても?」
「同志だよルオ・シラン。私も必要ではないと考えた」
皇族が、である。
「俄かに信じ難くもあるが、この霊山に来た以上は本気であるか」
「そうだ。丞相の任は大変だ。それは覚悟していたから辛いながらも臨めた。しかし、あの、んん……」
「皇太后のババアか」
「ババァ!? そう、あのエンの女狐め! 苦心して決めた事を引っ繰り返すは、またそれを引っ繰り返すはで何も進ませぬ。隙を見つけては演説を振るって邪魔をする。終わった事を蒸し返して再検討させにくる。顔が名が好かぬと決めたばかりの人事を改めさせ、果ては占星術によればと方針を決めてくる。そして何より見渡す限りのエン、エン、エンの類縁ばかりで鼻が曲がる! ルオ・シラン、君、リャンワンから解放されている君がいなければ何も進まなかったよ。ありがとう」
まるで餓鬼のような目でウィー・ソンニが言う。怨念の後に感謝とは、大分精神の均衡に危うさが見て取れる。
「失礼、ここであるか?」
強く張った女の声。黒龍公主の何やら甘ったるいものとは真逆の良い声だ。
客間に新しく入ってきたのは、男のように背が高く、首が長く、全てが直線。肌が白く、唇が赤く、編んだ髪は長く黒くて青。目が黒なのに彩光を放っているかのよう。一部も欠けたるように見えぬ麗人、女であるのが非常に惜しまれる程。これが夫人になれば、並んだ夫が誰であろうと光の陰に霞むであろう。
自分とウィー・ソンニは座ったままその女を見上げる。誰だこいつ? そしてもしや、である。
「本物のサウ・ツェンリーであるか?」
「左様である。偽物にはお目に掛かった事は無いので知らぬが、そちらはルオ・シランか?」
「いかにも」
あの”チンチクリン”のサウ・ツェンリーがこれになったとでもいうのか!? 何やら怪しげな方術でも使ったのではあるまいな?
「変わらず官僚とは思えぬ筋骨であるが、さてそちらの御仁は? 見覚えはあるのだが全く名前が浮かばぬ」
「ウィー・ソンニだ」
「なんと? まるで病人ではないか。溌剌としていたあなたはどこへ行ったのか。賊軍の行政は如何になっている」
「まずは座れ」
サウ・ツェンリーが敵方の官僚を慮ってか渋面を作りつつ座る。座って腰の高さが並んでもこちら二人より背が高い。
これで三選挙にて同期の首席を占めた三人が揃った事になる。互いに同じ官帽官服姿で相争っていて、そしてこのように面と向かえば非常に奇妙奇天烈。
しかし、こうなると霊山という場所は一体何処にあるのかが気になってくる。明らかに遠隔地にいる者と短時間にて会えるとは、方術にしても規模が巨大すぎる。天才だとか力の器が海程底無しであるとか、そのような次元の話に思えぬ。
「まあ、三人して同じ格好やのう。おかしいわぁ」
三人で囲む卓の中央に見覚えのある、自分の部屋に置いておいた盆栽を黒龍公主が忍び笑いをしながら置いた。霊山なら場所を超越できるので可能な事だが、急にそのようにされると気味が悪い。
「ツェンツェン、これ、ランランから贈物やて」
「ルオ・シラン、君がか?」
確かにその心算で自分の部屋に置いておいたものだ。花苔が生した石に根を包むように張った梅で、花は接木で白梅と紅梅と黄梅が混じっている物である。
何故か知らないが、サウ・ツェンリーはハイロウのダガンドゥにて盆栽を嗜んでいたというから用意したのだが、思いも寄らぬ趣味があるものだ
「これは巧い! まさに匠の業よ。これは匹敵するものを作ってみたくなる」
サウ・ツェンリーが目を大きく開いて感激する。その顔が何とも、愉快。笑ってしまう。
「失礼、見っともないところを見せた」
サウ・ツェンリーは取り繕うが、中々喜色は隠せていない。
「我の強い作品だ。失望しないでくれれば幸いだ」
「そんな事はない、良い物だ」
「楽しそうやね。妾はちょっと、失礼しとこかの」
黒龍公主が去る。ちょっとじゃなく失礼して頂きたいものだ。
「君等はそう、昔からそうだ」
ウィー・ソンニのその声には暗い感情がありありと出ていた。ヤンルーで三選挙に向けて勉学に励んでいた時期を思い出せば、何やら分からないでもない。
我々三人は、官僚登用の選挙の一年前より最終仕上げとして同じ師に仕えて学んでいた同門だ。
「何がだウィー・ソンニ。この盆栽にまた文句でも八百とつける気では無いだろうな」
その”何やら”が分かっていないサウ・ツェンリーが言う。そこはまだまだチンチクリンのままだ。
「そんな物を弄っている暇のある官僚等今の時期何処にいるというのだ。紙面の藩鎮はお気楽でいられるのか? それとも優勢を見せ付ける心算だな」
「お気楽だと言ったか。我がビジャン藩鎮のために働き、死んでいった人民を愚弄する言葉だ。公武上帝の御前でその言葉吐けるか胸に聞いてみろ」
「吐けるとも、無能によって悪戯に人民が死んで疲弊していったとな。君こそどのようにして擦り潰していったかを立法上帝の御前で申し上げてはどうか?」
サウ・ツェンリーが目を吊り上げ、
「黙れッ!」
一喝。部屋が震える程の声量、身動き取らせぬ迫力。視線と声から血の臭いがしてきそうだ。
元はチンチクリンだが、ビジャン藩鎮等というわけの分からない所へ単身飛ばされ、そうしたと思ったらハイロウと周縁部を手に入れ、あまつさえジャーヴァルにて数十万規模の戦を行って勝利し、ユンハル部を撃破し、ベイランを完全に破壊してきた猛者なのだ。辛く苦しいとはいえ中原の奥座敷で暗闘に終始して来たような”箱入り”のウィー・ソンニとは同じ官僚でも毛色が違う。血と埃に塗れているのだ。
「天下を分断し人民を不幸の底へ突き落とす賊軍がそれを言うか! 族滅で済むと思うな」
言葉尻を取って嫌がらせをしては宦官のように高い声で足を引っ張ってきたウィー・ソンニには刺激が強過ぎたようで、病人面の上に弱って見える。
しかし、族滅で済むと思うな、か。他人事ではないがこれは笑える。ウィー・ソンニの顔が特に笑える。
「そのくらいで止そう。本題は別だ」
「そうしよう」
そう言ったのはサウ・ツェンリーで、ウィー・ソンニは叱られたように――叱られたというか脅された――俯いてしまった。
「折角の機会だ。戦中戦後問わず、この天政についての重要事項には南北関係無く一定の合意は取り付けておきたいと考えるが異存は?」
別に中立的立場にあるわけではないが、この三人の中で進行を司るのならばこのルオ・シランだろう。
「異存無し」
「賊軍方が二名であるが……いや、忘れてくれ。異存無し」
「よろしい。あれこれと細かい合意等しても流動的な情勢では意味も無いだろうから、大きな事項だけにしよう。黒龍公主殿下が時間を作ってくれたが、何昼夜もかけて議論する訳にもいくまい」
「異存無し。皇族の存続についての是非をどうするか考えたいと思うが、どうか?」
「内戦勃発の原因であるか。議論の余地ありと認める」
これになるか。
「従来天子様は祭祀儀礼の役目に限定されていたはずだが、大きな実権を持つ東西南北の王へ縁戚が任命され易く、政治的混乱がある状況では現在の皇太后のように明らかに影響力を得てしまう。またお子様方が強力な政略結婚の道具となり、やはり間接的ではあるが強大な影響力を得る。皇太后のように嫁いできて、その嫁ぎ元である外戚がまた強大な影響力を得る。天子様自体に政治権力が無くても、その周辺が振るうというのが現状だ。この現状があるからこそ、天子様の位を巡っての闘争に価値が出てきてしまう。私としてはその周辺の排除が望ましいと考える。相当に長い道程にはなるが、これと同時に自己の利益しか考えぬ軍閥も排除し、祭祀儀礼に専念する皇族、政治に専念する官僚、生産に専念する人民と三層構造に造り直す。軍は完全に官僚の管轄とする」
「ルオ・シランの案は非現実的である。今の内戦以上の荒廃をもたらすのは間違いない。私は皇族を廃し、龍帝殿下を陛下と改め、黒龍公主殿下を下界での顔役として唯一絶対の象徴になって頂くのが最善と考える。流れる血は最低限に済む」
「三者三様であるな。私は賊軍を破った後、従来通りと考えているが」
「同じ事の繰り返しになるぞ!」
サウ・ツェンリーの従来通りという考えにはウィー・ソンニと同様に、流石に賛同しかねるな。
「では二人のようにこの内戦より継続する内戦を望むか? それこそおぞましい量の血が流れるぞ。ルオ・シランの案は非現実的だ。世代を越えての殺し合いの果てに達成される可能性はあるが、確実ではないし、戦乱によってその君が憎悪している軍閥が更に拡大する可能性の方が高いと考える。ウィー・ソンニの案は本人の意見を良く良く聞かないとどうにも返事し難い所だ。黒龍公主殿下の影響力の下で望ましくない者を粛清していくというのは中々悪くは無いとも思うが、しかし皇族の廃止は否定する。祭祀儀礼分野においてあれ程望ましい人材と考えれば他にいない。皇族無くして誰がやるのだ? 貴族か人民か? まさか官僚か? 天政の最も長き伝統を貶める行為には決して賛同出来ない」
皇族論議で決着は難しいか。
「では、皇族の前に軍閥について決着させた方が良いと思うが、どうか?」
「同意出来る部分を足がかりにしたいとは考える。同意する」
「分かった」
「では、軍閥だ。まずそれぞれの立場で感じたとは思うが、軍閥は天政にとって害悪である。賛同するか?」
「賛同」
「中原内においては賛同」
藩鎮節度使たるサウ・ツェンリーがそう言うのは当たり前か。
「言葉が足りなかった。諸藩鎮は確かに軍閥の一種だが、広大な天政下を治めるに必要だ。訂正する」
「私も藩鎮は必要と思う。進めよう」
「中原内の軍閥廃止には三者の合意が得られたが、次はその方策だ。私が特務巡撫として南部で活動し、直に奴等と接触した感想でもあるが、奴等は自分の国を構えていると勘違いしている。己の欲望かその地域の利益しか考えず、天政全体について考えるという思考が無い、表面的な義理程度だ。そうなってしまった理由はその地に土着してしまったという事が要因だ。所領を任され、その地を世襲し、そこから得られる利益が己の懐に入るという体制ではその地に塗れてしまうのも当然だ。であるから貴族特権を廃する。皆殺しとは言わないが、金持ちの人民程度に引き下げる。その為に強権が必要だ。都合良く私は特務巡撫の立場にあり、自由に動かせる軍を編制出来、権限にて貴族を攻撃する口実をいくらでも作れる。現に罪状をでっち上げて小貴族だが襲撃し、財産を取り上げて軍資金とした事がある。これを応用する。北部については敗北すれば貴族の一掃はより簡単に進む。サウ・ツェンリーの軍や影響力があれば思うより早く事が済む。南部については論考行賞等と一時まごつくだろうが、そこを利用して貴族を食い合わせる。後は虱潰しだ。目障りな存在ではあったが皇太后の影響力、そしてここにいるウィー・ソンニ丞相がいれば決して不可能ではない」
「それも良いが皇太后の気紛れは分かっているはずだ。そこに黒龍公主殿下を据えればより確実だ」
「皇族の方々に多少の犠牲が出るのは血縁上止む得ないが、皇族の廃止は変わらず否定する。廃止をせずに黒龍公主殿下の影響力を持ち込むのならば否定しない」
「そこはそれで良いだろう。さて、南北どちらが勝利した形であればそれが実行し易いかであるが、軍閥はともかく、中央政府としては南朝の方が中央に権力が絶大に集中している。北朝では従来通り、権力は分散してしまっている。私のような特務巡撫の存在を許すのは南朝である。北朝には敗北して貰いたいが」
「是非頼む」
「その方針で行くならば南朝勝利がよろしい。しかし、天子エイシュ様のお命を渡す訳にはいかない。そうなればそちらの僭称天子トインが納得しないだろう」
「その問題で行き詰る。だから黒龍公主殿下を据えようと言うのだ。殿下なら助命は容易い。それにエイシュ様は龍人であらせられる。この霊山にでも一時引いて頂ければ命まで取らずとも良いではないか!」
ん?
「長命な龍人そして皇族という立場で祭祀儀礼の長になって頂けばその間の皇族間の揉め事は調整しやすいか」
「腰を折って悪いがウィー・ソンニ、何と言ったか、龍人であると?」
「そうだ君。ルオ・シラン、聞いていなかったようだな」
「子が成せぬとは聞いていたが、そういう理由か。分かった、続けよう」
黒龍公主に聞きたい事は出来たがな。
「次にだが、魔神代理領海軍についてである。彼等の撤退についてだが、早期に可能か?」
「彼等は内戦が続く以上は支援に回って貰うし、終結したならば帰って貰う。その約束で動いている。丞相ハン・ジュカン同意あっての事だ。進退については私の手を離れている」
そうなっているか。
「よろしい、では、まとめた上で少々捕捉もつける。皇族は存続させるが、多少の落命は許容する」
「同意する」
「同意する」
「気紛れな皇太后エン・キーネイの影響力を排除する為に黒龍公主殿下をお招きする」
「同意する」
「同意する」
「エイシュ様は免罪し、霊山に一時お篭り頂いた上で祭祀儀礼の長に据える形でその方面の協力を仰ぐ」
「同意する」
「同意する」
「諸藩鎮は従来通り存続し、中原内の諸軍閥は特務巡撫の権力を十分に生かして粛清する」
「同意する」
「同意する」
「サウ・ツェンリー、北部の残党狩りではビジャン藩鎮軍の協力が必要だ」
「であるな」
「ウィー・ソンニ、粛清と復興を同時にしなければならない。計画を立てなくてはならないがやって貰う」
「命を懸けよう」
「あらまぁ、まとまったようやの」
突然現れるのにはもう慣れている。囲んだ卓に酒瓶一つ、盃三つ、短刀一つ。古風だな。
「これは、殿下」
「ソンソンや、あとちょっとや頑張りや」
「はい!」
「さて、ランラン。一番歳が上やの」
「はい」
自分から行くか。短刀で親指を切り、滴る血を酒瓶の口に落す。次はサウ・ツェンリーに短刀を回す。
「南の次は北だ」
「ここに来て順番等いいだろう」
サウ・ツェンリーが短刀で親指を切り、滴る血を酒瓶の口に落す。次はウィー・ソンニに短刀が回る。
「二人とも聞け、この顔の通り先は長くない。腹が容易に物を受け付けないのだ。出来ることはするが、その先は任せたぞ」
ウィー・ソンニが短刀で親指を切り、滴る血を酒瓶の口に落す。
「さ、どうぞぉ」
黒龍公主が酒瓶をゆるゆると回し、そうしてから三つの盃に注ぐ。
「その前に黒龍公主殿下、よろしいですか?」
サウ・ツェンリーが待ったをかける。当然の権利だろう。
「なんやのツェンツェン」
「黒龍神道の乱とは殿下が起こしたものですか?」
「おい!」
ウィー・ソンニが声を荒げる。
「ええ、ええって。あれはの、黒龍の旗の下、反抗勢力を炙り出してまとめて粛清するという大芝居やったな。思った以上にその勢力が多くての、しかも民衆暴動が連鎖してしまってあれには困っちゃった」
困っ”ちゃった?” 言葉尻を一々捉えても仕方の無い方であるが。
「天政を清く正しくより良く保つ為にはの、定期的に代謝が必要じゃ。これは八大上帝の代から大なり小なり定期的に行われてきた事やからの」
「それでは天子エイシュ様が龍人である理由は?」
それは自分が聞きたかった。
「あれはのう、何というか手違いかの?」
「手違い?」
「手違いですと!?」
「あん、ランラン大きい、痛いわ」
大声を出してしまった。
「ふふ、大きい大きいね。さっき言ったけど、定期的に代謝が必要やって言うたやろ? それの為にはいくら妾とは言え手駒がいくらかいないと無理な話やの。だからちょっと強めの手駒が欲しいなぁって思って、継承順位が低いほうの次男のエイ坊に仕込んだんやけど、元気だった長男が死んでしもうてのう、エイ坊が継いでしまったんやわ。あの時は妾も吃驚しちゃった」
自分もであるが、三人は絶句してしまった。
あまりに酷い、全部お前が悪いんじゃないか。
「だって、こんな事になるなんて思ってなかったんじゃ! 妾、悪くないもん」
「悪くないもん!? そんな童女のような物言いで済ませられるおつもりか!?」
思わず、普段は有り得ぬが、黒龍公主の胸倉を掴んでしまった。
「悪いのは世襲制天子に揺らぎが見られた程度で内戦まで起こす人の子等じゃ。天子になったエイ坊が大体ええ頃合の歳になったら死んだ事にして継承順位順に継承させれば何も無かったやないの。妾はその心算やったし、出来たし、それを引っ繰り返そうとしたトイン坊とキーちゃんに言うたらええ事やと思わん?」
黒龍公主は時に天政へ大禍をもたらす事すら行う。この方の言う事を全て鵜呑みにしてはいけない。嘘が無かった場合でも真実を言わぬような、人を煙に巻く性分である。
ウィー・ソンニが袖を引いてくる。
「落ち着け、殿下の仰る通りではないか」
一番に激昂するかと思ったサウ・ツェンリーは静かなままだ。
「ランラン、妾としてはもうちょっとくっついていたいけど、どう?」
「む? むぅ……」
黒龍公主が自分の手にその白い手を這わせてくるのに感覚と目が行く。
手を離す前に一発ぶん殴ろうかと思ったが、腕がぐらつく?
何か大きな音がした気がしたが、火薬臭い。まさか?
「毒婦め」
白煙が部屋に広がり始めている。
拳銃片手に腕を伸ばすサウ・ツェンリーと、頭が半分吹っ飛んだ黒龍公主。角や髪が付いた頭の欠片、脳みそが部屋に散っている。
「うわぁあ!? あー! あー!?」
ウィー・ソンニが喚いて後退る。
「やかましい!」
サウ・ツェンリーが指差して怒鳴るとウィー・ソンニは喚くのを止める。
拳銃、その手があったか。方術で敵わなくても勝てる方法等いくらでもあったな。
一応は母子である。黒龍公主を抱き寄せる。柔らかくて甘い匂いに血臭が良く混じる。
サウ・ツェンリーは拳銃で酒瓶を叩き割って立ち上がる。
「北朝には敗北して貰うだと!? 賊軍如きが厚かましい。正当天政が何故正当たる由縁か知らぬとでも言うまいな。この度ヤンルーにて天子様より直接事の次第は聞いている。先代八徳乾帝が先々代の暴政を正すために鉄火幽帝を黒龍公主に助力を扇いで暗殺し、代償にと次男エイシュ様を霊山に連れ込み不老の龍人とし、そして長男エイロウ様を暗殺。子が成せぬようにしてから、自分の言う事しか聞かぬようしたと思い込んでからエイシュ様を玉座につけるよう謀った。この黒龍公主なる山の妖怪蜥蜴が垂簾の裏から政治の真似事をしようとしていたのだ。愚かなりにも僭称天子トインに皇太后エン・キーネイも何かしようとしたようだが、内戦を起こすとは愚かも極まる! それこそ君等の言う軍閥より愚かだ。不幸の成り行きがあって不老の龍人と化しても天子は天子、玉座に座る権利は何一つ揺るがぬ。不老であって、どの程度の不老かは知らぬ。そして不死ではないのなら何れエイシュ様もお隠れにはなるだろう。だが子が成せずとも皇族の方々がおられるのならば何も問題無いではないか。耄碌したか、それでも三選挙で三百年に一度等と呼ばれた者達か? 天政官僚とは何であるか基本から勉強し直すんだなこの馬鹿者共め! 帰って頭を冷やせ。私は帰る、このおぞましい地より帰る方術の算段はついている。お前等も帰す。何をすべきか考え直してみるんだな、ではさらばだ!」
拳銃が吐いた白煙と取って変わるように赤い霧が濃くなって来る。
方術ではサウ・ツェンリーより自分の方が勝っていると自負していたが、向こうの方が遥か先にこの霊山の謎を解き明かしたか。羨ましい。
■■■
しばし黒龍公主の体を抱いていたと思ったら、霊山から戻っていた。家の裏の階段の上った先、謎の大岩の前だ。手には何も掴んでおらず、鼻を利かせてもあのにおいは無い、木々の健やかな青臭さだけだ。
しかし、まともに怒られたのも何やら久し振り過ぎて何も言い返せなかった。
動揺しているのは確かだ。階段を下りるが、足元に気をつけて滑らないようにする。
階段を下り、下り切る所に使用人が待っている。用事か?
「どうした?」
「先ほどお生まれになりました。元気な女の子です」
男だったらその次におめでとうございますがついたのだが、いや、もういいか。
「直ぐに出発する。馬の手配をしろ」
「若様、どちらへですか? お生まれに……」
「ヤンルーだ。いい加減、足止めはうんざりだ。引き止めたいのなら刺客でも何でも出せ」
幽地の思想にはあまり関わらないが、民間伝承程度に生まれ変わりという話はあるものだ……赤子の顔を見るのが怖い。顔を合わせると同時に目と口を賢しらに開く姿が想像出来てしまう。
あの方は怖ろしい。あれで死んだ等と思えない。体が死んで魂が幽地へ行って戻らぬとしてもその遺志、企みが生き続ける気がする。そしてこれから何かおかしな事があればまず疑うのは黒龍公主になるだろう。
死んでも死なぬとは真に……。
体が痒い気がする。
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