第13話「老騎士ガランド」 ベルリク
移動司令部に使っている広い馬車の中、地図を見ていると眠くなってくる。工兵が道を整地してくれたおかげで走りの揺れが心地良い。
ウトウトしていると、ラシージが近くの騎兵に馬を託して馬上から馬車に乗り移ってきた。迎え入れてやると、珍しく変則的な問いをしてきた。何時も正確簡潔を心がけているラシージらしくない。
「閣下、良い報せと悪い報せがありますが、どちからから聞かれますか?」
「じゃあ、悪い方」
ラシージは懐から一通の開封済みの手紙を出して寄越した。マトラ県議会からイスタメル州総督宛の手紙である。
総督不在とはいえ、イシュタムか自分が立ち会う前に開封したことに対して混乱しそうになった。このラシージが道理に違う行動に出るのか? と。しかしそこで怒ったり問い詰めたりするほど信頼していないわけではないので読んでみる。
”イスタメル州総督ルサレヤ殿へ。我らがマトラ県議会では防衛上の不安により、マトラ県防衛能力の向上が必要と全会一致で認められた。現状の枠組みでは防衛能力の向上が不可能であるため、マトラ自治人民共和国として魔神代理領からは離脱せずに大きな自治権を要求したい。徴税、予算作成、軍隊の編成、公共事業、福祉事業、自治法の制定と執行、以上六件を自決する権限が最低でも必要である。またバシィール城連隊をそのまま我が国の軍とし、城主ベルリク=カラバザル・グルツァラザツク・レスリャジンを英雄的国家名誉大元帥として迎える。そして……”
とまだ続くようだが、読む気が失せたので止める。
「つまり?」
「交渉術を勘違いしています。危急の状態にある相手に要求を出して交渉を有利に進めるやり方を身内にすると、まるで背中を撃つようであり、買わなくて良い恨みを買います。不合格。兼ねてよりバシィール城連隊拡充の要望を我々は出してきました。段階的に認められてきている現状への追い風のつもりかと思われますが、明後日の方角に吹かせているので向かい風です。不合格。時勢も読めずに馬鹿な手紙を送ってくる馬鹿の集まりに政治は任せられないと判断されるおそれがあります。不合格」
手紙をラシージに渡すと無表情のまま破り、少し悩んだように静止、懐に入れ直す。
「再教育」
珍しくラシージの眉がピクリと動く。こいつが感情的になるとは怖い怖い。
ルサレヤ総督ならこんな手紙は「これが妖精の冗談なのか?」と笑って済ませそうだが、イシュタムだと真面目そうだからちょっと怖い。それにしても妖精連中、そんなに兵隊になりたいのか? 稼ぎ先に困れるほどイスタメルは復興しきってないぞ。
「内々の処理で済ませてやってくれ。お尻ペンペンとかな」
「分かりました。鞭ですか? 棒ですか?」
「拳骨と説教でいい」
「分かりました」
昔からそうしてきたのかな?
「それで良い報せは?」
「魔族化したと思われるシルヴ・ベラスコイが我が方の軍艦二隻を撃沈。片方はセリン提督が乗艦する旗艦ハギンアシール号です。死傷者、行方不明者は多数とだけで、正確な数字は出ておりません。尚セリン提督は重傷により戦線を離脱しました。その後シルヴ・ベラスコイはナシュレオンに上陸、補給線上で破壊工作を行いながら本隊に迫ってきています」
「それが良い報せか? ラシージ、お前……」
思わず手が出る。
「俺のことを良く分かっているな」
頭ナデナデ。
現在シルヴは敵中孤立状態にあり、見つけ出せれば護衛がいない分打倒が容易であろう。勿論シルヴもそんなことは承知だろうから自陣に一旦引き返すための策があるはずだ。抜け道を行く、悪路を突破、敵中突破、陽動攻撃、擬似降伏、変装、いずれか複数同時ってところだろうか?
魔術を使いすぎると消耗し、俗に言う渇きを覚えてしまい、無理をするとぶっ倒れ、最悪死に至るというのは常識。いくら魔族化したとはいえ、いくらシルヴとはいえ日に何度も大暴れは出来ない……出来るとして考えるが、そこを頭に入れて行動しているとも考える。
そんな中でやるとしたら首狩り戦法、こちらの司令部に単騎で殴り込みをかけて司令官級を皆殺し。統制があまり取れていないイスタメル兵が暴走という物語は想像しやすい。自分とラシージを失った妖精達の行動は少々読み辛いものの、正常な指揮が取れなくなると予測はしてくるだろう。
さて空想はこのあたりにして現実の方を、地図を睨む。彼我の戦力差は、民兵の大量動員でもしない限りはこちらが圧倒的。アソリウス島騎士団の正規兵力は多く見積もって三千人、少なくても二千人弱。こちらは後方要員と海軍を除いて二万人。
あちらが地形を活かさぬ手は無く、セルタポリへ向かうなら避けて通れない位置にある、イルバシウスの門なる地が利用されると見込まれる。そこは乱立する崖や丘のせいで大軍を広く展開し辛いのだ。
ちなみにイルバシウスとは五百年は昔の聖戦軍側の英雄で、少数の手勢で魔族の大軍を足止めしたという伝説が残っており、その伝説の候補地の一つがそこらしい。
ただこのイルバシウスの門はこちらにも有利な地形となる。こちら側から上れる丘がいくつかあるので、イスタメル兵を囮にしている隙に砲兵隊を丘へ上げてしまえば砲門の数で勝るこちらが撃ち勝てる。
そしてここがもっとも守りに適して強固な地形であり、ここを抜ければ比較的平坦で障害物もない平地が続いてセルタポリに至る。最強を破壊した後には脆い部分のみが残るというのは単純な論理であり、忘れてはいけない原則だ。
次に最強なのは、セルタポリがある丘から先の山岳地帯。セルタポリを放棄して山に篭られると勝ちは確定するが面倒が多い。山を包囲して頂上に追い詰める作業なんて地道過ぎて考えただけで吐きそうだ。
ルサレヤ総督がいれば、包囲した後に頂上からあの硫黄の火で追い散らして楽に掃討できそうが、一体後何ヶ月でこっちに帰ってくることやら。
■■■
今後の予定を考えていると、敵の攻撃があると奴隷騎兵が伝令にやってくる。距離はまだあり、互いに休まず進めば一、二時間ほどで接触するらしい。窓から外を見れば日が傾き始めようとしている。野営地の設営に少々困る時間帯に攻撃してくれたものだ。予定通りかな?
報告によれば敵は千名余りの、ほぼ徒歩の騎士達。甲冑着込み、槍や小銃を持ち、皆帯剣していて、盾を持つ者もいて、隊列と歩調はあまり整っていないとのことで、エデルトが訓練した最新式の軍隊ではまずない。見た目は怖いが、銃撃を加えるとバタバタと可愛らしく倒れる手合いだろう。
進軍を停止させ、馬車の周りにいる伝令達にラハーリを始めとする高級将校達を集めさせてから手短に指示を出す。
「前面に出て騎士達を迎撃するのはラハーリ殿の軍、イスタメル兵に任せる。州直轄軍を督戦隊及び予備兵力としてその後方に配置するぞ。後方側面警戒は我がバシィール城連隊と海兵隊が行う。陽動攻撃の可能性があるので周辺警戒は厳とすること。向こうは小突いてこちらの隊形を乱して遅滞させるのも目的だろうがそこは冷静、慎重、確実に対応するように。少数の相手を侮って拙速に攻撃的になると、惜敗ならずとも被害が出過ぎて辛勝だなんてことになりかねない。そうなると恥ずかしいぞ」
彼らを解散させる。各隊が指示に基づいた戦闘陣形に移行した。前面のラハーリが率いるイスタメル兵は一万人、大砲は八十門。まさかこれで負けてくれないよな?
徒歩の騎士達が悠々と現れる。甲冑が日に輝いてちょっと懐古趣味的に格好良いと思った。馬車の屋根に上って望遠鏡で見ると千人より頭数が少ない気がして、良く目を凝らせば矢を射られた跡が甲冑や盾についている。奴隷騎兵が親切をしてくれたようだ。
彼等の先頭に立つのはあの総長代理ガランド・ユーグストル。望遠鏡越しに目が合った気がした瞬間、あのシェレヴィンツァで自分を殺そうとぶん回していた両手剣を構え、単騎駆けに突っ込んできた。他の騎士達はそれに引きずられることもなく、下手糞ながらも隊列を維持しつつゆっくり進んでくる。
ガランドは、イスタメル兵の士官達が戸惑いつつも行った一斉射撃は物ともせず、兵士を斬ったり踏み台にしたりしながら一気に中央突破。人間の体力では不可能な軽敏さ……魔族化しているのか? そして州直轄軍の布陣も斬り抜け、自分目掛けて斬り込んで来た。こんなに惚れ込まれると嬉しくなってしまい、笑えてくる。
あっという間の出来事で混乱も起きている。素早く各隊へ「単騎掛けの騎士はこちらで処理するので前面の敵に集中しろ」と伝令達を飛ばす。ラシージもガランド対策のための人員と道具を細かく指示した雑用紙を、権限の大きい伝令士官に持たせて飛ばす。そして最後の伝令を飛ばしたあたりでガランドが目の前に到着する。息すら切らしていない。
「逃げないでやったぞ爺さま、嬉しいだろ?」
余裕を持って馬車の屋根から降りる。
「武将ならば当然のことよ。覚悟は良いようだな」
「後はシルヴちゃんの到着待ちだな。海で暴れて服が汚れてるだろうから俺が手伝ってお着替えしないとな」
「まだ言うかこの戯けめ!」
「お前みたいな主君放り投げて国外に遊びに行ったような放蕩者に戯け呼ばわりはされたくないな」
「くぅ……ええい、戯言はここまでよ!」
刀を抜いて投げつけるが――これは囮――難なく弾かれ、早抜きに拳銃で顔面を狙い発砲。腕の良い職人が作った拳銃を買ったおかげで狙い通り、眼球に命中。ガランドは吠えながら顔を抑えて身をよじる。これで身体は殺せずとも正気は殺した。いくら鋼の意志をもつ老兵でも、いくら鋼の身体をもつ化け物でも、眼球をやられては正気は失うものなのだが、
「ぬぅ、何のこれしきすぐだわ」
すぐに正気を取り戻した上、顔を覆っていた手を外せば眼球は元通りだ。
「それじゃあかかって来いよ。ビビってんのか腰抜けジジイ」
人差し指をクイクイ曲げて挑発すると素直に向かってきて、
「おぅふぁ!?」
間抜けな声を上げてラシージが魔術で仕掛けた落とし穴に落ちる。いくらラシージとはいえ、表面に土の蓋を残すようにして魔術で穴を掘るのは時間がかかる。蓋を支えるための、人が落ちれば崩れる程度に脆いが効果のある土の支柱とか、穴の側面に手や足をかけて持ち応えないように円錐状の穴にするとか、そういう手間があるので尚更。
それからラシージが伝令で呼び寄せた妖精達が到着し、持ってきた火薬樽を穴へ投げ入れ、確実に起爆するよう松明と点火した手榴弾を投げ入れる。爆炎、黒煙、爆風、土砂が穴から一気に噴き上がる。生死を確かめるために穴の方へ耳を澄ますと、なんとまだ唸っている。
油を流し込み、松明を投げ入れて着火。火は程なく消えてしまう。つまり窒息する環境になる。そしてラシージが魔術で穴を土で埋める。そして地面に耳を当てれば這い上がってくる気合が感じられた。
ラシージにはあまり消耗してもらっては困るので待機させ、到着した大砲六門を揃えて砲撃用意を完了させる。
ガランドが地面を下から掘って這い上がってくる。甲冑どころか衣服も無く、皮膚すら無くて筋肉が剥き出しの状態だ。本当に化け物じゃないか。
「撃てぇ!」
六門同時砲撃の散弾を浴びせる。散弾同士がぶつかってバチバチ火花が散るほど濃密。ボロ雑巾という言葉が相応しい状態になって倒れても、ガランドの身体からは肉芽が盛り上がって再生を始める。そして不器用に立ち上がろうとするが、砲兵の装填速度には及ばなかった。
「撃てぇ!」
六門同時砲撃の散弾を再度浴びせる。またボロ雑巾になって転がる。そしてまだマトモに動けない内に妖精達が油をかけて火を点け、薪をくべて火を絶やさないようにする。
こんな敵が一人いるということは、もう一人いてもおかしくないということ。そのもう一人のシルヴはどんなに強いのか? セリンが負けるということは、彼女の実力は大雑把にしか分からないが、結構なものなんだろう。
イスタメル兵の砲撃が鳴り始める。ようやく戦闘開始か。ガランドを燃やしている妖精達には異常があったら報告するように言ってから観戦のために近くの丘へ上る。
イスタメル兵と騎士達が撃ち合いを開始。流石に頭数が揃っているイスタメル兵の射撃は一見派手だが、下手糞な上に小銃の有効射程距離ギリギリくらいな間合いなので花火で遊んでいるのと大差ない。騎士達もそれにお付き合いし、ガランドのように突撃することはせずに耐えるように細々と射撃を繰り返している。どう考えても勝つ気の無い戦い方だ。
ほとんど当たらない下手糞な砲撃とはいえ、一撃当たれば何人も同時に死ぬ砲弾を受けても怯む様子はないので、騎士達の根性が腐っているわけではない。十倍以上もいる敵を前にして隊列組んで撃ち合いをしている時点でやはり根性がある。だから時間稼ぎをしていると予測される。これはやはりシルヴのための陽動か?
奴隷騎兵の伝令がやってきて、イシュタムが奴隷騎兵達を揃えて側面攻撃すると予告してきた。
上手く合わせろということだろうが、イスタメル兵はウチの妖精と違って錬度が低くく統制も利き辛いのが少々怖い。「イスタメル兵による同士討ちの可能性が高いので行動は慎重に行われたし」との返事を伝令に託して帰す。
妖精から「何かねー、焦げ臭いだけになりました!」と報告がくる。
ここにきてようやくイスタメル兵の隊列が騎士達に向かって前進、間合いを詰めだす。それはいいが、大砲の発射間隔が長いのは素人砲兵ばかりだからか? イスタメル兵は死にまくる突撃以外は苦手かな? 嫌みが頭の中を巡る。任せた以上は失敗でもしない限り口出ししたくないのだが、隊一つ一つの動きが鈍くてイライラする。
ラハーリめ、部下の命だけを大事にしているのか? 間合いの詰め方以外にも状況の展開が慎重に過ぎる。もう空の色が赤くなってきている頃だぞ……まさか、少数の相手を侮って拙速に攻撃的になると、って言ったのをそう理解したのか? エデルト士官ならばまず念頭に攻撃ありきと教えられているので、隊列を確実に組んで、指揮系統を確認し、総員の武器点検をしてから通常通りの攻撃に移ると解釈するのだが……これはこちらの思慮不足だなぁ。
「城主さまあれー!」
急にそばで待機してた伝令に袖を引っ張られる。意外と礼儀は守る妖精らしくないと思いつつその妖精の指差す先、空を人が飛んでいた……シルヴだ! こちらに目もくれず、落下して地面を蹴っ飛ばして馬鹿みたいな勢いで跳躍してあっと言う間に素通り。服はボロボロだったようだ。
何故首狩り戦法どころか挨拶すらせずに素通りした? ルサレヤがいると思って力を温存しているのだろうか?
あの時、先の大戦終結が知らされたヴィデフト市内。撃ち損ねた大砲、ブチ込み損ねた目標、そりゃ悔しいよな。死んででも機会を待って一発ブチ込みたいんだな、うん分かるぞ。早くシルヴのために帰って来いよババァめ。ぶっ殺すかぶっ殺されるかしろ。
妖精から「綺麗にしてきました!」と報告がくる。何を綺麗にしたと思ったら、燃えカスを綺麗に取り除いた頭蓋骨を持ってきた。これがついさっき自分を殺しに来た化け物なのか? ともすればただの置き物に見えるこれが。
「他は?」
「えっとですね、一つずつ身体の部位を取ってですね、燃えたところを洗ってます。まず頭からやったんですよ! ちゃんとほら、形崩れてないんですよ!」
妖精は頭蓋骨を頭上に掲げ、ニーって笑う。
「この頭蓋骨は箱に入れて隙間無く砂を入れておくように。残りはいいから砕いて土にでも混ぜときなさい」
褒めて欲しそうだったので頭を撫でてやる。
「はーい!」
観戦に戻ると、丁度夕日を背負ったイシュタムを先頭にした奴隷騎兵達が騎士達の側面に現れて弓で射撃。放つ矢には毒が塗ってあり、矢が刺さっても我慢して戦っている騎士が急に苦しんで倒れてもがき出す。そんな十字砲火を受ける形になって死傷者が続出するが、しかし意地があるのか騎士達は全く逃げようとしない。シルヴも去り際に後退命令くらい出してやれば良かったのに。
そして撃ち減らされ、絶望一色になった残りわずかな騎士達が喚声を上げ、ボロボロの旗を掲げてイスタメル兵に向かって突撃を開始する。なかなか悲哀が漂っていて格好良かったが、銃撃と砲撃で接近するまでに五十人程に減り、白兵戦とも言えない戦闘に移行。いくら騎士達が武術の達人と言えど、一人に対してイスタメル兵が何十人も集って銃剣を突き出して、掴んで引きずり倒して滅多打ちにすれば何てことはなかった。
そうしている間に、挨拶することも無くイシュタムは奴隷騎兵達を連れて走り去る。望遠鏡で顔を見ていたことに気づいていた様子だったが、手の一つも振りやがらない。
勝利の感傷に浸っている暇は無く、間もなく日が暮れるので野営地を設営させる。中途半端な時間に場所で攻撃されたので少々気に入らない。暗くなる前に設営が完了しないこと。設営場所が騎士達がくたばった場所であって不潔であること。奴隷騎兵が攻撃を仕掛けた方角以外にも開けた地形があって攻撃されやすいこと。逆に視界が良いはずなのだが、地形に起伏があり、まばらにある林のせいで案外姿が隠しやすいこと。試しに妖精達を走り回らせて確かめると、大部隊での奇襲は無理だが複数の小数部隊で同時に奇襲攻撃を仕掛けるぐらいはできそうだ。警戒人数を増やし、篝火を野営地より離れた場所にも置くことで対処させる。
妖精だけなら夜間行軍だってして良い場所に移動するのだが、イスタメル兵どもだったら混乱してはぐれたり、孤島なのに脱走したりと面倒なことになる。
わずかに生き残った騎士、捕虜達の処遇だが、声をかけても「殺せ」の一点張りである。どうせ大した情報も無いだろうと思って妖精達に任せてみる。少し疲れていたせいか、この判断はあまり考えて出したものではなかった。その時に「好きにしていいぞ」と言ってしまったのだ。
妖精達は、死んだ騎士の首を兜つきで持って、「がおー!」と脅かす。死体から抉った目玉を「えいえい」と投げつけて的当て遊びを始め、切り落とした腕に腸を巻きつけ、捕虜にその腕を投げて当てては引っ張って戻す遊びも始めた。
周囲のイスタメル人に州直轄兵は勿論ドン引きで、嘔吐している者も多い。捕虜を首だけ地面から出して埋める。そしてそこへ他の騎士の首を並べ、首を足場に、川の石を跳んで渡るように遊び始める。三番手の妖精が捕虜の頭に足をかけたところですべり、勢いで首を折って殺してしまった。子供が虫を殺して遊ぶ感覚なのだろうか? いや、子供は虫の脚をもいでも内臓を引きずり出して遊ばないか。
妖精の死体遊びについては止めさせるべきかどうか迷うところである。恐ろしさを喧伝しておけば相当なハッタリが利く。反面、徹底的に反抗される危険性もある。後は味方から不気味がられる分、督戦隊として効果を発揮するが信用されなくなる。州直轄軍と役割分担をすると考えればこのままでいいか? 悩ましい。
早くシルヴが率いる軍に当たりたい。きっとこんなもんじゃない。
セリンへの見舞いに、ガランドの頭蓋骨と一番ボロボロになった騎士団旗を送ろう。普通の女じゃないから喜ぶはず。
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