第13話 つまりは、そんなもので、
青田からの連絡が来たのは、2学期と一般的に言われる9月も半ばになった頃だった。
拓郎が一華の部屋を訪ね、もろもろの話を聞かせてくれた。とはいえ、半分はテレビで流されたことだし、新聞などにも公表していることだった。
だが、佐藤が粟田家の家政婦時代に窃盗を働こうとしていたとか、粟田家が脱税を働こうとしていたなどの話しは当然初耳だった。
沢口が、故郷から戻らず退学届けを出したと報告したのは拓郎の方からだった。田舎に帰り、親のありがたみと、幼馴染の優しさに、一人寂しい想いをして暮すことに耐えかねたのだと言った。
地元にも栄養学を学べる学校があるというので、そちらに編成できるように手はずを整えた。それは、理事長の、めったに見せない親切だった。
「殺人予告とか、それが三通あったりとか、最初はすごく複雑で、どんなことになるのだろうと思いましたが、」
そういって助手の小林君がコーヒーを淹れてきた。
「終わると、あぁ、なんだ、そんなことか。って思っちゃいけないんですよ、いけないんですけど、なんだか、そんな感じがしてしまって、」
「所詮犯罪のプロが考えに考え抜いた犯罪じゃないからね。そこいら変に居るオバさん、おじさんの気の迷いだから、そんな奴らの考えたことが、複雑怪奇になるはずはないよ。そんなことになっちまったら大変だもの。まぁ、つまりは、そんなことなんだよ」
一華は新しく編み始めるように買ってきた毛糸の色を合わせ、「さぁて、今度はなにを作ろうかな、秋用のカーディガンにしようか。いい色の赤が手に入ったからね」
と赤い毛糸をひと玉手に取った。
だが、秋はまだきそうもないほど日差しは熱い―。
殺人予告 松浦 由香 @yuka_matuura
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