欲望の種族
彼女を送って部屋には私一人、モニターの前の彼女はなにやらため息をはいている。
さて、彼女は応じてくれるだろうか? それはわからない。何故ならそれは彼女が決めることだからだ。そこに干渉することもできるが、それをしてしまえばそれは本物の彼女とは言えないだろう。私が求めているのは本物の鈴木音夢だ。
私は給湯室に戻り空の急須にお湯を注ぐ。昨日知ったことだが一部のお茶は飲んだ後でも再びお湯を注ぐと味が落ちずに茶が出るらしい。事実、今私が入れた急須からは先程と変わらないほうじ茶の香ばしい香りが漂っている。
この星に来てから多くの発見があった、このお茶もその一つだ。まさか薬用以外で植物の葉を煎じて飲むとは、それも種類によっては燻したり発酵させたりするらしいじゃないか。ぺトロ星に自生するは植物は苔しかないのでそれが新鮮だった。
この星に来てから多くのことを考えた。多くは地球文明のことだ。何故彼らはそこまでして欲するのだろうか? さっきのお茶だってそうだ、普通はカビが生えた葉っぱなんて誰も飲もうとしないだろう。食欲、支配欲、自己顕示欲、そして愛欲。地球人は欲望の種族と言っていい。将来、地球文明は宇宙の驚異となるかもしれない。だが、今に限って言えば……
「……彼女は全てを知ったらどう思うのだろうか?」
恐らく彼女は幻滅するだろう、私にも、ぺトロ星にも。だがそれでも……
欲望は星を救う。彼女には救ってもらわなければならない、我が故郷を。
そうよ我らはエイリアン ! 水田柚 @mizuta-yuzu
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