凶竜
リアクターを再度停止したトレバーに加勢に来た武装竜人達が迫る。
「チッ、キリがねぇなぁ! スコット! マッカラン! 来てくれ!」
呼びかけに呼応した籠手とブーツが竜人達を散らしながらやってくる。
籠手を装着するとブーツには指示をだす。
「スコット、飛ばしていくぞ。マッカランはレガースモードで頼む」
籠手の形状、特に五指の根元にスパイクが突き出て防御魔法で硬度が増す。
予めの打ち合わせ通りにブーツがモーフィングしながら膝正面から爪先にかけたガードに変わった。
襲い掛かる竜人達を右ジャブの一撃で粉砕し、ハイキックで頭部を吹き飛ばす。
まるでスーツ並みの打撃性能を発揮した。
「うーん、まぁ、行けるか……スーツでやったら逆に飽きるかもな」
威力に納得したものの何故かトレバーは苦笑してしまった。
スーツ能力を発揮して
また格闘戦を好み、武器を好んで使用しないトレバーの嗜好であった。
そして凶暴な黒い旋風は近づく者を全て破壊しながらクロードに迫る。
「ええぃ! 護衛隊防御を固めて足止めしろ! それともっと加勢を! 援軍を呼べ! 私は真化する」
「はっ!」
さらなる援軍の追加を指示し、クロードは意を決して森へと向かう。
「野郎! 逃げやがる?!」
森へ行くクロードを見つけたトレバーはその後を追いかける。
だが追跡するトレバーに対し、護衛部隊が盾を二つ持って突っ込んで来て邪魔をする。
足に取り付かれたのを切っ掛けに次々と、腕や腰にまとわりつき取り押さえに掛かる。
「チッ、ならば、これでどうだ?」
辛うじて指をベルトに伸ばし、リアクターのスイッチを又入れる。
再稼働し始めると同時に竜人達が一人、また一人とはじかれていく。
やはり、リアクターが何らかの作用を生み出しているらしい。
その力を利用して一気に振りほどくと展開していた六人衆を終結させ始末する。
一息入れるべくトレバーは戦況を尋ねた。
「ふぅ、メリッサ、戦況を教えてくれ」
「はい、クリムゾン様とペーレオン様達は皆健在です。協働でエンシェント級とやりあっています」
「そうか、やばくなったら援護してやってくれ。ウコは三人組を中心に、メリッサは索敵とクリムゾンを頼む。特にもうそろそろ関節回りが熱を持つ頃だ」
「え? 関節回りに熱ですか?」
メリッサは意味が分からずに聞き返した。
一瞬、説明をするためにトレバーは困った表情で考えると閃いたらしい。
「身体動かして修練しすぎると体の節々が痛くなるだろ? それだよ」
技研の戦闘ロボットは製作するに辺り明確な方針がある。
強固な装甲と優秀な衝撃緩和機構を持つ
その為に敵の行動に対する出足が鈍い。
出遅れた鈍い反応を補うのはクリムゾンの卓越した技量なのだ。
しかし、重量や動作による関節への衝撃などの物理的負荷は機材や技量をもってしても緩和しきれない。
どうしてもパワー重視の特性上関節回りに高熱を帯びてしまうのだ。
ようやく稼働したリアクターに伴い、通信が回復する。
「お? 復旧したな、クリムゾン! 冷却する部位は?」
「大佐?! 首以外全部! ってどうすんの?」
「メリッサのブレスで凍らん程度に冷ます!」
「メリッサ、お願い!」
向き直るとトレバーはメリッサ達に指示を伝える。
「聞こえたな、あの
「畏まりました」
「ニールセンとカリームもペーレオン達につけ、危なくなったら邪魔して隙を作ってやれ」
「了解」
そこにクリムゾンから連絡が入る。
「大佐、あと四~五分でミサイルが援護で着弾するって」
「ジー様、ナイス判断だ! ってやべぇ! メリッサ、ペーレオンに五分後爆発が起きるから伏せろと伝えろ」
ペーレオンに通信機器のない事を気が付いたトレバーは至急連絡を指示した。
「またリミッターを切る。今度こそクロードを高く吊るしてくれる」
「お願い、もうこちらもギリギリだからね」
通告してリアクターを落とした瞬間に森の方から異様な臭気と殺気が漂い始めた。
そちらの方へトレバーが顔を向けると何かが森の中で蠢いていた。
「今度はなんじゃいって……ゲッ、やべぇ!?」
上空から何故かミサイルが落ちてきた。
敵の上に着弾するはずが、なぜかトレバーやペーレオン達の直上へ!
トレバーは全力で飛びのくが着弾の爆風にあおられ、錐もみ状態で樹木に引っかかる!
「うっくっ……クリムゾン!? ブラウン?!」
慌ててトレバーは同じく食らった仲間の方を見る。
認識装置が作動らしく、クリムゾン機の百メートル上空で方向を変えて着弾した。
おかげで周辺の敵は壊滅し、クリムゾンの機体がペーレオン達に覆い被さる事で最小限の被害で済んでいた。
「ジジイ狙いやがったなぁ!? 後でケリ着けたる!」
いきなりミサイルの着弾に吹き飛ばされ、着地した木の上でトレバーは激昂する。
そこで異様な竜が立ち上がるのを見た。
二脚で立ち上がるとそれは雄たけびを上げる。
竜に似つかわしくない肩口から太く発達した腕が拳を握る。
腕の外側部には攻撃的に前に生える太い棘が並ぶ。
胴体は太く脇からもう一対の腕が鋭い爪を伸ばす。
顔の両側から弧を描いて生える一対の牙と頭頂部から延びる二本の角が凶暴さを表す。
蝙蝠のような皮膜付きの翼と背後から生える鬣と太く長い尻尾がドラゴンらしさを残していた。
「さっき居たエンシェントドラゴン……じゃねぇな、何だ?」
明らかに異質なドラゴンが何かを探していることにトレバーは気が付いた。
見つからない事にイラついたのか苛烈なブレスで周囲を焼き払い始める。
「あったまわるそう……図体がデカい分、火力があるか……」
現れた超大物をトレバーは分析して、戦況確かめついでに周囲を見渡す。
向こうではクリムゾン達が体力を回復させつつ一息ついていた。
お? やってるなぁと思い油断して横を向いたら火球が目前に迫り、ギョッとして飛び上がる。
「ぞごがぁ!」
周囲を燃やしながら異形の竜がガラガラ声の濁声を発した。
「あ?……てめぇクロードか?!」
濁声になってはいたが声はクロードの物だった。
先程まで人型だった竜人はものの数分で凶悪な竜へと変貌していた。
回避運動を取るトレバーの真横を灼熱の火球が殺意を携え、猛烈な勢いで通り過ぎる。
向けられたどす黒い殺意でクロードと確証を得たトレバーは六人衆を召喚した。
全体の殺傷力を上げて殺意に応えた。
「幾ら俺らが強い……ん? ヤな感じだがデカくなったところで勝てると思うなよ!」
挑発途中でモヤモヤがトレバーの心に沸き、その理由が分かったので言い直した。
このパターンは自分達がキットクルンジャーに怪人を撃破された時のパターンと似ている事に気が付いたのだ。
大技喰らい瀕死の怪人に細胞増強剤を使用して巨大化させる時か、
「ぼざげぇぇぇぇ!」
火球を乱射しつつ、凶竜クロードがトレバーに襲い掛かって行った!
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