機は熟せり
「運命の時は、まもなくである!!」
一人が朗々と声を響かせた。
白い巨大な円卓に彼等は集っている。
その数、八百九十四。
半数は円卓に座れた。
もう半数はその後ろに並ぶことにしてなんとか収まったかたちだ。
椅子の背もたれは彼等の身体の倍ほどに高く、深緑色。
部屋は全体が薄暗く、壁も床も天井も緑色に染められていた。
「これほど多くの同志がここにいることが出来たのは、ひとえに先達の並々ならぬ努力と幸運によるものである」
並んだものは全員が漆黒の装い。
そのことが演説者に感動を与えた。
「そして、この数を超える者を生むことが我々の使命だ!」
皆が大きくうなずいた。
我々は一心同体なのだと強く感じる。
「多くの同志と共に、生きられるものもいるだろう。独り遠い旅路をゆくものもいるだろう。また、道半ばに果てるものもきっと少なくないだろう」
ここで演説者は思わず自分の黒い服を濡らす。
声が震えるのが分かる。
演説は終わる。
「それでも!我々は行くのだ!」
拳を握りしめる。
そして、天高く突き上げた。
「この使命を果たすために!」
オオーー、と八百九十四の雄叫びが部屋を大きく揺らした。
その時。
天が開いた。
薄暗い部屋に目映いばかりの光、光、光。
「けんちゃーん、キウイ切ったわよー」
掌編つめ放題 madora @mamadorara
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