第49話『赤と黒なのじゃ』


 ルンルンルン、ふふんふ〜ん!


 悠人に送ってもらってるのじゃ〜、メルは上機嫌なのじゃ。でもでも、


「悠人、こ、恋人なら手くらい繋ぐのじゃ〜」


 いかんいかん、ついつい甘えてしまう。

 悠人が悪いんじゃ。メルは悪くないのじゃ!


「えっ……はい、これでいいの?」

「のじゃ」ふふん♪


 悠人の手はメルよりずっと大きいのじゃ。そして少しばかり汗ばんでるのじゃ……そんなに暑くないのに、悠人は汗かきなのじゃ。



 坂を越えて、夢咲モールも、大きな白い建物、確か学校って言ったか、それも越えて、婆っちゃの待つ駄菓子屋まではあの角を曲がってすぐじゃ。

 なんだか今日は騒がしいのじゃ。


「……サイレン。珍しいな、この町がこんなに騒がしいのは。何かあったのかな……っ……!?」

「んのじゃ、き、急に止まらないでくれなのじゃっ……顔を打ってし……まっ……え?」


 角を曲がった時、メルの視界に広がったのは、


 赤と黒じゃったのじゃ。


 頭がグルグルする、あそこ……あそこは……


「お婆ちゃんっ!!」

「はっ、ゆ、ゆゆ悠人っ!?」


 何が起きてるのじゃ?

 あの赤は……あの黒は……何なのじゃ!?


 ……はぁっ……はぁっ……分かってる……


 メルは本当は分かってるのじゃ。


 今、目の前で起きているのは……


「婆っちゃ!」

「危ないから離れて!」


 だ、誰なのじゃこの人は!

 はなせ〜、なんのじゃぁっ!!

 悠人は行ってしまった……熱い、あついのじゃ……肌が焼けるように熱いのじゃ……


 婆っちゃのところに行かないと、でも、男の人が離してくれないのじゃ。


 婆っちゃ……婆っちゃがっ!!


「あっ、君!?」

「のんじゃーー!!!!」


 行かなくちゃ……!

 婆っちゃ、今行くのじゃ。だから……だ、か、


 ……ら、


 あれ……苦しい……の、じゃ……




 ば、っ……ちゃ……?


 婆っ……ち……ゃ……たす、け……


 ……


 ……


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る