第48話『婆っちゃの待つ駄菓子屋』


 メルは幸せなのじゃ〜

 これがメルの知りたかったモノ、かも知れないのじゃ。メルは自分が何者か分からないのじゃ。

 気が付けば一人路地裏にいて、寒さで凍えそうな時、手を伸ばしてくれたのが婆っちゃじゃった。


 誰もメルに見向きもしなかったけど、婆っちゃだけはメルに手を伸ばしてくれたのじゃ。訳も分からず、ただ泣いていたメルを……


 なぐさめてくれた。


 あったかい、フワフワした気持ち。

 メルの惹かれた、ヒトの不思議。


 そうか、メルはやっぱり、こっち側じゃないのじゃな。少しだけ思い出した気がする。

 でも、それでもメルはヒトでありたい。

 そう思うのじゃ。




「メル?」

「のじゃっ?」


 び、びっくりしたぁ……い、いきなり話しかけてくるのじゃから……悠人め。


「考え事をしているみたいに見えるけれど、気分が優れないのかい?」

「そ、そうじゃないのじゃ。ゆ、悠人、もし、メルが人間じゃなかったら……どうするのじゃ?」

「えっ、どうしたのさ」

「も、もしもの話じゃ!」


 悠人は間髪入れず即答したのじゃ。


「そんなの決まってるよ。今まで通りさ。おかしな事言ってないで、そろそろ帰ろうか?」

「う……そんなにサラッと。ま、まぁ良い。暗くなる前に帰るとするか」

「送って行くよ」

「あ、当たり前じゃ。メルは女の子なんだから、ち、ちゃんと最後まで責任を……」

「はいはい、それじゃ行こうか。お婆ちゃんが待ってるよ?」

「婆っちゃ、そうじゃ、婆っちゃが待ってるのじゃ。悠人、早く行くのじゃぁ!」


 帰り支度を済ませたメルは悠人のお母さんにちゃんと挨拶をしたのじゃ。偉いじゃろ?

 そして大きな屋敷から外に出て、婆っちゃの待っている駄菓子屋に向けて出発したのじゃ。


 婆っちゃ、今、帰るから!

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