第40話『プレゼント』(※)


 二階に上がってみると綺麗な飾り付けが部屋中に施されていた。かなり大掛かりだな。

 これをメルとお婆ちゃんで準備したのかな。


「おぉ悠人か。座って座って、皆んなでワイワイご飯しよ」

「お婆ちゃん、こんにちは」



 少しするとメルもパタパタと二階へ上がって来て僕の隣にちょこんと座った。時折僕の顔を覗き込むようにチラチラと見てくるけれど、僕の顔に何かついてるのかな?


「のじゃっ……な、何をジロジロ見てるのじゃ?」


 それはこっちのセリフなんだけど……


 その後、僕達は豪華な昼食を囲む。そして手作りケーキの登場だ。綺麗に飾り付けがされていてチョコレートの板には少し下手くそだけれど文字が書いてある。多分メルが書いてくれたんだね。


 明かりを消してロウソクに火がついた。

 するとメルとお婆ちゃんが歌い始める。メルの音程が微妙に外れてて微笑ましいな。それでも一生懸命に歌ってくれている。


 歌い終えたのを見て僕はロウソクの火を一息で消す。何て楽しい時間なんだろうか。

 こんな風に誕生日を祝ってもらえるなんて、僕は幸せ者だ。


 するとメルが後ろに隠していた所謂サプライズプレゼントを取り出し僕に差し出した。


「こ、これ……メルが選んだのじゃ。あ、あ、あげるのじゃ」


 頬を赤らめるメルからプレゼントを受け取る。メルに開けてもいいかと問うと、許可が下りたのでその場で包装紙を開けてみた。


「こ、これは……」


 メルからの誕生日プレゼントは大人のお絵描きセットだった。かなり本格的な物で百以上の色鉛筆がズラリと敷き詰められている。

 これは凄いな。これで夢咲の町を描いたら綺麗だろうな。


「ゆ、悠人は絵が好きだと言ってたから……」

「うん、ありがとうメル。嬉しいよ!」

「そ、そうか、良かったのじゃ!」


 その時、パァーッと表情を晴らしたメルの笑顔に僕は心惹かれそうになった。

 いや、違うよね。僕はメルの事が……


 ハッキリさせないと。中途半端な状態でこの気持ちは伝えられないし。



 この日は僕にとって、とても大事な思い出になった。いっぱい笑った。色々話した。メルのプレゼントで絵も描いた。

 メルが目を丸くして驚いてたのが印象的だった。


 最高の一日をありがとう、お婆ちゃん、メル。


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