第39話『サプライズ』(※)


 そろそろ家を出ないと。

 今日はお婆ちゃんにお呼ばれしているから。どうやらサプライズで誕生日パーティーをしてくれるみたいだ。でも、サプライズなのにもうバレてしまっているけれど……そこはご愛嬌って事で。


 僕の家は所謂お金持ちの家だ。床は大理石、天井にはシャンデリアまで吊るされている。

 自分の家が嫌いな訳でもないし、勿論母さんや父さんの事は尊敬している。僕の好きなように大学にも通わせてくれて、その上帰って来た僕に対しても優しく受け入れてくれた。

 本当に頭が上がらないな。


 でも、僕はお婆ちゃんの駄菓子屋の雰囲気も好きだ。いや、寧ろ大好きなんだ。

 昔ながらの駄菓子屋、優しいお婆ちゃん。それに、今はメルもいるしね。


 そう言えばメルとはあれから会ってないな。図書館ですれ違って以来だけど……何だか少しだけ気まずいな。楠木さんの事、どう思っただろう。


 変な勘違いしてなければいいのだけれど……


 いや、僕は何を心配しているんだ。メルと僕は別にそういった関係じゃないんだから、思い上がりもいいとこだよ。



 ……


 僕は坂を登って夢咲町が良く見える場所で一息ついた。ここからの眺めは僕のお気に入りだ。

 おっと、見惚れていても仕方ない。


 こうして僕は二人の待つ駄菓子屋へと足を運んだ。自分でも何だか浮き足立っているのが分かる。少し気まずいけれど、早くお婆ちゃんとメルに会いたい。二人といると、嫌な事も忘れられる。



 ……


 僕が駄菓子屋に到着すると何やらドタバタと階段を降りてくる影が。


「お、おうなのじゃ……悠人、メルは忙しいから上で待ってるのじゃ。サプライズプレゼントの準備もしないといけないのじゃ」

「そ、そうなんだね。分かったよ」


 だからサプライズなのに先に言っちゃうと……まぁいいや。驚いたフリをしてあげよ。

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