第37話『婆っちゃとお買い物』


 ふぬぬぬ……


 ぐぬぬ……


「メルや、どうかしたんかぇ? こわい顔してからに。せっかくのべっぴんさんが台無しやで?」

「なっ!? 何を言っておるのじゃ婆っちゃは……メルは何ともないのじゃ!」

「ほうか、悠人の事やなぁ?」


 婆っちゃはやっぱりエスパーじゃ!?


「顔に書いとるわ。メルも女の子やなぁ、悠人の事が気になるんやな?」

「そ、そそそ、そんな……っ」

「そんなら、メルは悠人が嫌いか?」

「そんなこと……ない、のじゃぁ……」


 婆っちゃの意地悪っ!


「ほんなら婆っちゃがいいこと教えちゃる。お出かけの準備するで?」

「ど、何処に行くのじゃ?」

「ゆめさきもーるや。向かいながら話したるから支度しいやぁ」

「わーい、夢咲モールなのじゃ!」




 こうしてメルは婆っちゃに言われるがまま夢咲モールへ向かったのじゃ。

 夢咲モールは大きいのじゃ。人もいっぱいいるのじゃ。婆っちゃが逸れないように手を繋いでおかないと。むぎゅ。


 こ、この乗り物は……た、確かエレベーターとかいう乗りじゃ。メルはこれ、ちょっと嫌いじゃ。

 胸の辺りがフワッとして何だか気持ち悪いのじゃ。


「実はな、次の日曜日に悠人を家に呼んどるんよ」

「ゆ、悠人をっ!?」

「日曜日は悠人の誕生日やからな。婆っちゃが久しぶりに祝っちゃろ思うてな。そこで提案や。メルも悠人に何かプレゼントをあげたらええ。それで悠人はイチコロや、間違いないよ」


 ゆ、悠人の誕生日!? そうじゃったのか。

 メルのポケットには一年間貯めた婆っちゃからのお小遣いの残り。それで何か悠人が喜びそうなものを探してあげろと婆っちゃは笑うのじゃ。


 メルが自分で決めるんやで、と頭を撫でてくれたのじゃ。非常に心地良いのじゃぁ!


 しかし、


 悠人の喜びそうなものか……ふーむ、


 うーぬぬ……お、そうじゃ!


「婆っちゃ、決まったのじゃ!」


 ……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る