第36話『人には親切にするのじゃ』


 全く、悠人の奴め。

 おっと、別に何でもないのじゃ。あんな奴はどうでも良いのじゃ。


 天気も良いし散歩じゃな。

 おや?


 あれ、誰もいないのじゃ。確かに気配を感じたのじゃが。気のせいか。


 婆っちゃが言ってたのじゃ。交差点では左右確認をちゃんとするのじゃ。左よし、右よ……し?


「のじゃ?」

「す、すみません……道に迷ってしまったんだけど、教えてもらえませんか?」


 男の人なのじゃ。どうやら道に迷ってしまったみたいじゃな。うむ、メルに任せろなのじゃ!


「何処に行きたいですのじゃ?」


 焦って口調が……落ち着いて対応なのじゃ。


「この地図の場所なんだけど、分からなくて」

「そこなら分かりそうですのじゃら。……えっと、案内しましょうのじゃか?」


 男の人は安心したように笑ったのじゃ。

 メルは人に親切にするのじゃ。いつも婆っちゃにしてもらっているみたいに、メルも人に優しくしないとなのじゃ。


 メルを必要とする人達に、なのじゃ!


 地図を頼りに歩くこと十分ほど、少し人気のない路地裏に到着したのじゃ!

 えっへん、褒めるのじゃ!


「ここっぽいのじゃ!」


 あ、また口調が……ま、いっか。


「ありがとう、あ、そうだ。お礼にジュースでも買ってあげようか?」

「おぉ、いいのか!」

「勿論。何がいい?」

「オレンジジュースなのじゃ!」


 ふふん♪

 いいことしたら、いいことが返ってきたのじゃ。

 メルは買って来てもらったオレンジジュースを美味しく頂いたのじゃ。

 いい男の人で良かったのじゃ。


「お、いけないのじゃ、もう帰らないと!」

「あっ……」

「そ、それ、残りはあげるのじゃ!

 もう迷子になってはいかんのじゃぞ、

 バイバイなのじゃ〜!」



 ふふん♪

 いいことしたら気分が良いのじゃ!


 それはそうと、大きなリュックじゃったな。何が入ってるのか気になるくらいに。

 ……重たくないのかの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る