第34話『遭遇』(※)
僕は今日も図書館にいる。
今日はあの人が来る日だ。あの人は何故地元に帰った僕にわざわざ会いに来るのだろうか。
その人の名は
迷惑な訳ではないのだけど、何故僕なのかなって。そろそろ来る頃かな。
「ゆーうーと、君っ! お待たせ!」
どうやら未加奈が来たようだ。
僕は振り返って、やぁ、と返事をする。すると彼女は少し膨れて悪態を吐く。
「もう、遥々東京から会いに来たんだよ? それを、やぁ、の一言?」
「いや、ごめんね。僕はその辺疎いみたいでさ。気にしないで」
「ふ~ん? 悠人君、調子はどう?」
未加奈は真っ直ぐ僕の目を見つめながら言った。彼女は僕の事情を知っている。学校を辞めた理由も知っているのだ。それを知った上で何故わざわざ会いに来るのか、僕には理解し難い。
正直、楠木未加奈という人物が僕は苦手だ。
しかしこうして会いに来るのだから会わない訳にはいかない。そう僕は思っている。
「調子はまぁ、悪くはないかな」
「そっか、それは良かった! ねーねー、はやくご飯行こうよ? みか、またあのお店に行きたいなぁ?」
あのお店とは街から少し離れた場所にある個人のイタリア料理店で一度彼女を連れて行くと気に入ったみたい。
未加奈は僕の手を引いて催促する。
僕は引きずられるように図書館のロビーへ。すると僕に突き刺さるような視線が。
視界に入ったのは、メルだ。
メルは未加奈に手を引かれる僕を見た。そしてすぐに目を逸らしプイッと本館の方へと去ってしまった。しかも小走りで。
「どうかしたの悠人君?」
「あ、いや、何でもないよ?」
「変な悠人君」
——メルになんて思われたかな?
僕は奥へと姿を消したメルが気になったんだけど、仕方なく図書館を後にした。
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