第33話『来年も皆んなで来たいのじゃ』



 帰り道も悠人の自転車の後部座席なのじゃ。ゆ、悠人の頬がメルの手形で真っ赤なのじゃ。

 いきなり手を繋がれて咄嗟に平手打ちを喰らわせてしまったのじゃ。しかも往復で。だって、

 新たなおっちゃんが現れたと思ったから。


 でも、助けに来てくれた悠人は、ほんの少し、ほんとにほんの少しだけ、格好良かったのじゃ。


 夕焼けが綺麗じゃ。少し疲れたから、悠人の背中をかりるのじゃ。少しはしゃぎ過ぎて眠い、のじゃ、ムニャ。




 ——メルの身体に、あたたかい何かが溢れているのじゃ。とても、とても心地良いのじゃ。

 ——メルの心が、癒されるようじゃ。この気持ちは、何なのか、メルはもっと知りたい、のじゃ。




 夜、目が覚めると隣には婆っちゃがいて、スヤスヤと眠っていたのじゃ。

 時計は夜中の一時。メルは眠ってしまったみたいじゃな。今のは夢だったみたいじゃ。


 悪くない夢、だったのじゃ。


 楽しかったのじゃ。来年もまた、皆んなで来れたらいいな。



 皆んなで。

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