第32話『捜索』(※)



 やっぱり人が多いと、トイレに行くだけでも一苦労だな。はやくメル達の所へ戻らないと。

 

「はて、悠人や。メルと一緒やないのか?」

「メル? 一緒じゃないよ?」

「そうか、メルもさっきお手洗い行く言うて降りてったんやけどなぁ。まぁ女子は混むからなぁ」

「どうする? 見てこようか?」

「そやな、何や言うてもちょっと心配やしな。でも大丈夫か悠人。調は」


「うん、だよお婆ちゃん。ちょっと行ってくるから待ってて」




 メルは背が低いから探すのが大変だな。顔が見えたら特徴的だからすぐにわかるのだけれど。


 うわ、凄いな。行列が出来ている。

 流石に中には入れないし、出て来るのを待つしかないか。


 見上げると満開の桜、こんな風景を描いたらとても楽しいだろうな。

 そんな思考を巡らせていると、フワッと吹いた風に乗り女の子の声が僕の耳に飛び込んできた。


「な、何なのじゃっ!」


 メルの声だ。


「は、はなしてくれなのじゃっ!」

「おじょーぢゃん、そう言わねでおっちゃん達と飲もうよ~?」


 帰って来ないと思ったら酔っ払いに絡まれていたのか。

 僕はすぐに駆け付けて抵抗するメルの手を握った。その瞬間、僕は星を見た。


 ——!

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