第29話『感触』(※)
「……むむぅ……」プルプル
もしかして自分で降りられないのかな?
「よいしょっ!」
僕は彼女の脇のあたりを両手で掴み自転車から降ろしてあげた。その時、僕の耳に思ってもない声が飛び込んできた。
「きゃっ」
「ご、ごめんっ……」
正直驚いた。
メルがあんな声を出すなんて想像だにしなかったから。しかし、よくよく考えると当たり前の反応だったのかも。僕は彼女を子供扱いし過ぎていた。
見た目は子供っぽいが彼女は自称大人なのだから。いきなりあんな場所を掴まれたら驚くのも頷ける。少し軽率だったな。
「も、もう少し優しく降ろしてくれなのじゃ。び、びっくりしたのじゃぁ……」
彼女は頬を赤らめ僕を見上げる。
「悠人、顔が赤いのじゃ? もしかしてメルが重くて疲れたのか?」
違う、そうじゃないよメル。だからそんな真っ直ぐな瞳で首を傾げたりしないでくれ。
「おーい、悠人?」
手のひらの感触が頭から離れない。
所詮僕も男だな。彼女の身体が思った以上に女性的で、とても柔らかくて、力を入れると壊れてしまいそうで、胸がドキドキした。
メルはちゃんと大人だと、その時はじめて僕は認識して、少し恥ずかしくなってしまった。
「ほれ、二人共見つめ合っとらんと、座って作ったお弁当食べよ」
「なっ!? 婆っちゃ!」
「お婆ちゃんっ……」
「若いっていいなぁ~、弁当食べる前からもう満腹やわ、ご馳走さまですぅ」
本当にお婆ちゃんには敵わないな。
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