第30話『お弁当なのじゃ』
婆っちゃには敵わないのじゃ。
ふぅ、まだ心臓の高鳴りがおさまらないのじゃ。悠人は天然なのか? 女の子のあんなところをギュッと握るとは、非常にけしからん!
お、思わず声が漏れてしまったのじゃ……変な目で見られてないか?
「わぁ、凄い気合い入ってるね!」
「わしとメルで朝早く起きて作ったんやで」
ムフフ、そうなのじゃ。
昨日から仕込みをして朝に二人で作ったお弁当なのじゃ。とはいえお菜の里芋の煮っころがしも、鶏肉と大根の煮物も、婆っちゃが作ったのだけど。
メルは一口ハンバーグをこねこねしたのと、おにぎりをにぎにぎしたくらいじゃ。えっへん!
でも、メルも日々進歩してるのじゃ。
例えば——
「あ、お婆ちゃんのだし巻き卵、久しぶりだなぁ! さっそくいただきます!」
悠人はだし巻き卵を口にしたのじゃ。メルの心拍数はじわじわと上昇中なのじゃ。
「うん、美味しい!」
婆っちゃはメルの顔を見て悠人にバレないようにクスクス笑うのじゃ。とはいえ目の前だから悠人はどうしたの? と首を傾げたのじゃ。
「悠人、そのだし巻き卵はな、メルが焼いてくれたんやで?」
悠人は豆鉄砲でも撃たれたような表情に。
そ、そんなに驚くことはないだろうがっ!
メルが頑張って焼いたのじゃ!
「メル、凄い! 完璧にお婆ちゃんのだし巻き卵を再現してる! メルは料理が上手なんだね!」
ちょ、ちょっと待ってそれは違、ぅ……
まぁいいや。褒められるのは悪い気分じゃないのじゃ。たんと召し上がれ、なのじゃ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます