第27話『もう少しだけ知りたいのじゃ』


 ……


 うぬぬ……恥ずかしいのじゃ……乗れたけど、恥ずかしいのじゃ!

 そんなメルの気持ちをよそに婆っちゃはスイスイと先へ進むのじゃ。

 うぅ、悠人の背中、こうして見ると思っていたより大きく見えるのじゃ。


 ——っふぎゃっ!?


「ごめんごめん、段差に気付かなかったよ。大丈夫かい、メル?」


 いきなり激しく揺れたせいで咄嗟に悠人に抱きついてしまったのじゃ。悠人の心臓の音が背中越しに聞こえてくる……

 トクントクンと、軽快なリズムじゃ。


「危ないから、ちゃんと捕まっててね」

「お、おうなのじゃ」


 メルは悠人の腰をギュッと掴んだのじゃ。あ、危ないから仕方なくじゃ!

 すると婆っちゃが何故か笑ってるのじゃ。


 後で気付いたけど、子供用の座席に手すりが付いていたから、それを掴んでたら良かったのじゃ。

 メルは河原に着くまでずっと気付かず悠人にしがみついていたのだから婆っちゃの笑う気持ちもわからなくはないのじゃ。

 でも、悠人の背中は意外と心地良いものではあった。悪くないのじゃ。


 メルは別に悠人のことなんて何とも思っていないのじゃ。

 ただ、もう少し、悠人のことを知りたい。

 婆っちゃと仲のいい悠人のことがもっと知りたい、それは確かなのじゃ。

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