第21話『満腹なのじゃ』



 ここは……どこなのじゃ……?

 おぉ! フワフワするのじゃ~!

 なんだかとってもあたたかいのじゃ~!


 お腹もいっぱいなのじゃ~!


 …………

 ……


「……あれ、婆、ちゃ?」


 一階の部屋なのじゃ。窓の外は真っ赤じゃ。

 お店の方から子供達の声がするのじゃ。子供達がメルの名前を呼んでいるみたいじゃな。


 婆っちゃの声も聞こえるのじゃ。

 ……そうなのじゃ、メルは朝からずっと眠ってたのじゃ。何だか変な夢を見たようじゃ……


 熱はもう下がったみたい。頭も、痛くない。

 ……お腹もいっぱいじゃ。

 おかゆがある。婆っちゃが作ってくれたのかな? でも、メルは満腹なのじゃ。


 着崩れたパジャマを元に戻す。

 髪が寝癖で凄いことに……あぅ。

 ガラガラ、と引き戸を開けるといつもの子供達の姿が視界に映るのじゃ。

 ——視界は、良好。


「あ、メルちゃんだ!」

「メルちゃんメルちゃん! 大丈夫?」

「メルちゃん、病気なの?」


 子供達が群がってくるのじゃ。凄い勢いで足元がふらりとするの、んじゃ!

 まったく、可愛い奴らなのじゃ。頭を撫でてやるのじゃ~。よしよし。


「おぉ、起きたかえ? どうや? 身体の調子は?」

「婆っちゃ、もう大丈夫っぽいのじゃ。看病、ありがとうなのじゃ!」

「それなら、悠人にも今度お礼しときな? メル、悠人に抱きついてたんやで?」


 なっ!? めんたい悠人!? いつのまに!? 抱きついていた? あのめんたいに? メルが?


 ……状況が把握出来んのじゃ……


「メルちゃん、お顔赤いよ?」

「メルちゃんメルちゃん! 頬っぺが真っ赤だよ? だいじょーぶ?」


「ほう、メルや。もしかしたらメルにも春が来たんかもなぁ。若いし恥ずかしがることないよ?」


 な、何を皆んなして笑っておるのじゃ!

 そんなんじゃないのじゃ! メルはめんたいのことなどどうでもいいのじゃ! のじゃらす!


 だって……


 悠人には、あの女性ひとがいるのじゃ。



「ほれ、子供達! メルを馬鹿にしたらこちょこちょの刑じゃぞー!」

「きゃーっ! メル怪獣がきたぁ!」


「だーれが怪獣なのじゃぁ! ガオォ!」

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