第20話『お婆ちゃん』(※)



 そんな考えを巡らせていると、二階からお粥を持ったお婆ちゃんが降りてきた。


「あんれまぁ、どうしたのや?」

「えっと……」


 困ったな。


「まぁ、メルは甘えん坊やからの。大方、悠人を婆っちゃと間違えてしもたんかね」


 違う、お婆ちゃん……メルは確かに僕の名前を呼んで……最後、何を言いたかったんだろう。


 僕は小さなメルを抱き上げ布団に寝かせてあげた。さっきよりかなり落ち着いた様子で眠るメルは何かいい夢でも見ているような表情だ。なんだかこちらがどっと疲れた気分だ。


「また寝てしもたみたいやな。お粥は起きたらやるかの」

「そうだね、それじゃ僕はこれで」


 僕が立ち上がると、お婆ちゃんは静かに口を開いた。僕を呼び止めるように。



「悠人や。何かあったんやな? わしにも話せんことかえ?」




 お婆ちゃんには敵わないな。




「何でも、お見通しなんだね」


 ……お婆ちゃんはいつもそうだ。

 何でも知ってて、全てを理解してくれる。

 ほんと、この人には敵わないや。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る