第19話『炭酸』(※)



「お婆ちゃん、薬買って来たよ? メルの様子は?」

「おお悠人かぇ、無理言ってすまんな。いま、眠ってしまったところや」


 僕はお婆ちゃんからお願いされて近くのドラッグストアで風邪薬を購入。

 そしてその足で駄菓子屋へと向かったんだけど、メルは眠ってしまったようだ。


 お婆ちゃんはこの歳でスマホを自在に操る。僕のスマホにラインを送ってきたのだ。


「季節の変わり目やからなぁ。悠人や、少し様子を見ててやってくれんかの? わしはお粥温め直してくるから。何かあったら二階におるから頼まれてくれんかな?」

「勿論だよ、お婆ちゃん」


 お婆ちゃんは二階へ。

 頬が真っ赤だ。汗もこんなにかいて……かわいそうに。氷水がもう溶けてしまってる。

 かなりの高熱なんだな。


「はぁ、はぁっ……」


 ——!


 メルの小さな手が僕の右手を力無く握る。とても熱い。いや、そんなことより……


 なんだ今の……?


 思わずその手を払いのけてしまった僕が感じた今の感覚は、何だ?


「はぁ……はぁ……ゆ……う、と?」


 目が合った?

 目が覚めたのか? しかしなんだろう、この感覚は……

 身体の内側から炭酸が弾けたような感覚……


「ゆ、うと……ゆ、ぅ……」

「あ、駄目だよ起き上がったら!? メル? えっ、ちょ……」


 メルの身体が密着する。熱い。

 小さくて、でもはやい鼓動が直接身体に伝わるくらいぴったりと僕にもたれかかるメル。


「ゆう……と……ご、……め……」


 えっ?


 瞬間、僕の意識が途切れたように感じた。


 メルは僕の膝を枕にしてまた眠ってしまったようだ。……視界が霞む……


 今のはいったい、メルは無意識だったみたいだけど、不思議な感覚だったな。



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