第13話『絵本』(※)



 コーヒーを一口飲んだ僕は、メルちゃんに絵本を読み聞かせてあげた。


 メルちゃんは終始食い入るように聞いている。とても真剣な表情で、綺麗なタッチの絵を見つめながら、完全に世界に入り込んでいるようだ。



「……こうしておちた天使は人々を幸せにしたんだとさ。おしまい」


「……むぅ……」

「どうだった?」


「おちた天使は、もう二度とお母さんに会えないのじゃな……かなしい話じゃ」


 全く触れられていなかった部分に……普通なら皆んな幸せになりましたって話なんだけど。


「ありがとうなのじゃ。メルはそろそろ帰るのじゃ。婆っちゃが待ってるからの!」


 メルちゃんはピョンと跳ねるようにしてスマホ入門と書かれた雑誌を抱き抱え笑顔を見せる。そして少し危なっかしい走り方で僕の前から居なくなってしまった。


「あ、行ってしまった……」


 婆っちゃ、お婆ちゃんのことかな? 良かった、ちゃんと健在なんだな。少し安心した。

 という事は……あの子はお婆ちゃんの孫?


 何にせよ少し変わった女の子だったな。

 また、駄菓子屋に顔を出してみようか。


 僕もお婆ちゃんに会いたいしな。


 

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