第12話『呼び捨て』(※)
一月二十二日 火曜日
午後二時七分
「あの~すみません?」
すぅ……すぅ……
気持ち良さそうに眠ってるな。今日はお婆ちゃんはいないのかな?
久しぶりに帰ったから挨拶したかったんだけどまた今度にしようかな。
「あの~」
女の子は飛び起きいらっしゃいませなのじゃ!
と目をパチクリさせた。
黒髪の女の子は僕を見て目を丸くした。そして首を傾げている。
僕の顔に何かついているのかな?
僕はうまい棒めんたい味を三つ購入。
60円を支払って店を後にしたんだ。
壊れたレジでチーンってしてる姿がとても印象的だったっけ。
……そして今、その子が目の前にいる。
「君は駄菓子屋にいた子だね?」
「そうなのじゃ……あ、じゃなくて、えっと、そうなの、です!」
「ははっ……話しやすいようにしてくれて構わないよ? のじゃ! ってね」
「ば、馬鹿にしないのじゃぁ! あ」
「面白いね、君。名前は? 僕は
「メル……なのじゃ」
彼女はメルと名乗って頬を赤らめた。そして僕の持っている絵本に視線を寄せる。
「あ、これ? ちょっと読んでみたくなってね、絵本だけど」
「ゆ、悠人はまだまだ子供じゃな! どれ、天使の贈り物?」
い、いきなり呼び捨てか……
子供だなと言いつつも興味ありそうにジロジロと絵本とにらめっこをはじめるメルちゃん。
「良かったら、読んでみるかい?」
「なっ?」
メルちゃんは頬を染める。しかし、首は縦に振っているようだ。
それならと僕はカフェへ移動した。
ブラックコーヒーを一つ、そしてメルちゃんにオレンジジュースを買ってあげた。
親御さんに見つかったら怒られるかな? というかこの子、いくつだろうか?
この警戒心のなさは少しばかり心配だ。
「お、悠人! オレンジジュースを買ってくれたのか! 悠人はいい奴じゃ!」
この子、誘拐犯に出くわしたら一撃だな。
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