第8話『アスパラショップなのじゃ』



 リサイクルショップの一角にティーン向けのアパレルショップが併設されてるらしいのじゃ。

 アパレルの意味が分からないけど、きっとアスパラベーコンみたいなものじゃな。

 ……ジュルリ。


「今日はメルの上着でも買おうと思ってな」

「上着? アスパラじゃないのか?」

「アパレルな。服屋さんや、よお知っとるやろ? まだまだ若いもんには負けとらんで」


 婆っちゃはそう言って顔をくしゃくしゃにして笑ったのじゃ。上着か、


 でも、もう少しであたたかくなるから構わないのじゃが……そう言うと、婆っちゃはメルの頭を撫でながら言ったのじゃ。


「今日は、婆っちゃとメルが出会ってちょうど一年になるからな。メルの誕生日わからんから、今日を誕生日にすればいいと思ったんや。

 だからプレゼントを買いに来たんやで?」


「誕生日……?」


「そうや。メルはあまり自分のこと憶えてへんて言うし……まだ、一回もしてなかったやろ。帰りにケーキも買って二人でお祝いしよ」

「……誕生日、婆っちゃ! ありがとうなのじゃ! 嬉しいのじゃ!」


 正直、メルは自分が何歳か、何者か、なんて憶えてないのじゃ。

 婆っちゃと出会う前の記憶が、


 少しばかり欠けているから。


 ……


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