第7話『婆っちゃが迷子なのじゃ』


 む、綺麗なお姉さんなのじゃ。


 綺麗なお姉さんはメルに笑いかけてくるのじゃ。

 メルはとりあえず笑顔を見せてみたけど、何故か上手く笑えないのじゃ。


 ……あれ? 視界がちょっとボヤける……


「泣かないで、大丈夫だよ? ほら、今お姉さんがお父さんかお母さんを呼んであげる。こっちにおいで?」


「ば、ば、婆っちゃなのじゃ……!」


 な、泣いてなんかないのじゃ!

 ちょっと目に埃が入っただけじゃ。


 お姉さんはメルを連れて店の入り口付近まで連行したのじゃ。

 いったいどうするつもりなのじゃ?


 するとお姉さんは黒いアイスクリームみたいな物を手に取り、あろう事かソレに語りかけるのじゃ。


 ——ピンポンパンポーン


『……お知らせいたします。只今、レジ前にて……えっと……し、小学生? くらいの女の子がお、お婆様……』

「婆っちゃじゃ!」

『えっ? ば、婆っちゃをお探しに……な、なられておりまして……』


 ……


 プンプン、メルは大人じゃ!

 しかも小学生とは……非常に不愉快じゃ! 小学生とはいつも駄菓子屋に寄り道しにくる子供達ではないかっ! けしからんのじゃ!


「お嬢ちゃん、すぐに婆っちゃが来てくれるからね? もう少し我慢出来るかな~?」

「むぅ……」

「それまでこの飴でも舐めて待ってようね~?」

「お、ありがとうなのじゃ! はむっ。」


 甘くて美味しいのじゃ!

 ふむ、これはイチゴ味じゃな。

 仕方ないなぁ、メルを子供扱いしたことは水に流してやるのじゃ。感謝せい。


「おお、メル、探したよ?」

「はっ! 婆っちゃ! 探したのじゃ! いったい何処をほっつき歩いていたのじゃ?」


 婆っちゃは綺麗なお姉さんと顔を見合わせて、クスクスと笑うのじゃ。

 何がおかしいのじゃ? 全くもう。

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