第20話妹の場合③

〜②の続きから〜


「ち、ちょっと!?楓さん!流石にまずい!まずいから!」

「お兄様!その手を離してください!五寸釘を飲んでくれないと言うならせめて!これでお兄様の息の根を止めてから私も死にます!」

先程より酷いことを行おうと俺の首ギリギリにまで五寸釘を持っていく楓の手を俺は必死に受け止めていた。

確認の為に敢えて言おう。楓と俺は血の繋がった兄妹である、他の家庭がどうなのかは存じ上げては無いが、少なくとも男子トイレにまで押しかけて実の兄を五寸釘で刺し殺そうとする妹は世界広けれどここにしかいないのでは無いだろうか?

「よし、わかった!一旦落ち着こう、落ち着いて話せば分かり合えるから!ちょっ!?楓さん!?ガチで殺る気なの?お願いです、楓様ー!」

すると俺の思いが届いたのか、徐々に妹の力が無くなっていく…

「ごめんなさい…、少しやり過ぎてしまいました」

そう言って楓は頭を下げてきた。

「へ?あ、あぁ。分かってくれて良かったよ(少しとは…?)」

しかし、必死な抵抗をしていた為。今まで蓄積された疲労が一斉に足掛かり、腰が抜けたように座り込んだ。

「楓、お前の気持ちは痛いほど分かったから。次からは時と場所を考慮しような…」

俺は楓では無い何かを見ながらそう助言をした。

「それは?どういう事で………あ、そういう事ですか」

後ろを振り向いた楓もそれに気づいたらしく、どうしようもないようなそんな表情を浮かべていた。

「そこの少年の言葉を借りるようだけど…。君達、そういう事は時と場所を考えなさい」

まぁ、防音対策がされてはあれど、あれほど中で暴れていたのだ。

通報を受けて駆けつけたのであろうお巡りさんが、またどうしようも無いような表情でこちらを伺っていた。

俺は、心の底からホッとし、同時に言いたかった言葉を口に出る寸前で飲み込んだ。


私は被害者なんですと、  《続く》

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

橘カオルとヤンデレ娘(スローペースで更新中…) 龍大悠月 @rader25252

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ