【後日談】ジークフリード
色々な方々にジークを応援して頂いたので、本編の先も書いてみました。
良かったね、ジーク( ;∀;)
ではよろしくお願いします!
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ティリアーナとニコラスの元に爆弾を落としたジークフリードは、1人しんと静まる自室のデスクに腰掛けていた。その表情はすっきりとしていたが、微笑みは何処かぎこちなく切なげだ。
このまま自分がティリアーナを攫ってしまえば良かったものを、ニコラスと結ばれるように仕向け、後々になって少し傷付いているのだから格好悪いったらありゃしない。
こんな締め切った場所で黄昏ていたら、益々気が滅入ると思ったジークフリードは、風に当たる為に中庭に出た。春らしい温かな風が柔らかな髪を撫で、それが自分を慰めているようでジークフリードは悲しげに瞼を閉じる。
後悔はしていない。
あれは何処からどう見たって彼らは想い合っていた。が、想いを抱くことすら許されなくなる事に、ジークフリードの胸は張り裂けそうだった。
「……殿下。宰相閣下が探していらっしゃいましたよ」
不意に後ろから美しいソプラノが聞こえ、ジークフリードは振り返る。そこにはティリアーナの親友でありジークフリードの友人でもあるベイカー辺境伯令嬢アリシアが困ったような微笑みを浮かべ佇んでいた。
夜会に戻るのは今は流石に気が乗らず、ジークフリードは肩を竦めて見せた後、アリシアに背を向けて黙ったまま星を見上げる。
「……よろしいのですか?」
「……今日くらい息を抜かないと詰まりそうだからね」
アリシアはジークフリードの声が沈んでいるのに聡く気が付いた。夜の淡い光と相まって、その影掛かった背中は心做しか丸まっているように見える。
「ティリアーナさんとニコラス様、進展致しましたの?先程、ダンスフロアで甘い雰囲気を惜しげも無く撒き散らしていましたわ」
アリシアはティリアーナと付き合えるだけあって、可愛らしい見た目とふんわりとした声とは裏腹に言葉は辛辣だ。ジークフリードは可笑しそうに笑みを零すと、腕を組んで柱に寄りかかった。
「そうみたいだね。僕は……途中で抜けてしまったから本当の所は分からないけど」
「そうでしたか」
頷いたアリシアは穏やかに続ける。
「ここにいらっしゃるのは、失恋して、ティリアーナさんとニコラス様を見ているのが辛いからですのね」
確信的なことを直接ぶつけるアリシアに、ジークフリードは苦笑して振り返る。その口元には笑みこそ浮かんでいたが、瞳は普段のジークフリードからは考えられない程冷たく、アリシアを非難していた。
「君は強いね。君こそニカを想っていただろう。良く変わらずに居られるな」
「……傷付いていない訳ではありませんわ。2人を見るのは今は辛いのです。ですが、わたくしは想いを本人に伝えて、きっぱり断られたお陰で、引き摺らないでいられるのです」
ジークフリードは目を瞠った。しかし直ぐに華やかな王太子然とした笑みへと変わる。
「……何れ昇華出来る。何も問題ないよ」
「本当にそうですか?後悔しているのでは?」
「……」
黙ってしまうジークフリードにアリシアは気にせず畳み掛ける。
「……わたくしは殿下に必ず告白しろと申し上げているのではございません。ですが、あまりにも折り合いを付けられていないような気が致しましたので」
「……っ……」
「素直に気持ちを言葉にしても許される時は必ずあるのですわ。それは殿下が彼らと共に過ごす時によくお分かりでしょう」
「…………」
ジークフリードの外套が夜風によってはためく。キラリと反射する飾りにアリシアは目を向けた。
「殿下の外套の留め具はティリアーナさんから贈られたものだそうですね」
「……っ……どうして……」
「ティリアーナさんから。彼女、嬉しそうにしていました。『わたくしのプレゼントを大切に使ってくれるジークがジークらしくて、友人として誇らしく思うわ』と。どうか、ご自身の想いも大切になさって下さい」
ジークフリードは俯いて1つ溜息を吐いたあと、真剣な眼差しでアリシアを見つめた。アリシアはそんなジークの表情を見て、嬉しそうに微笑み、何も言わずに頷いてみせる。
「……振られたら、話を聞いてくれるか」
「はい。わたくしでよろしければ」
ジークフリードは酷く情けなく微笑んだ。
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第42代アルカディア王国国王
ジークフリード=アルカディア=ヴィルヘルム
第42代アルカディア王国王妃
アリシア=ヴィルヘルム
アルカディア王国王太子
ルードヴィク=アルカディア=ヴィルヘルム
アルカディア王国第二王子
アイザック=アルカディア=ヴィルヘルム
アルカディア王国第一王女
ティリシア=アルカディア=ヴィルヘルム
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(出典:アルカディア王国記第三章)
END
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読んで下さりありがとうございました!
柊月
無口な幼馴染に大嫌いって言ってしまった 柊月 @hiiragi-runa-6767
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