「吟遊詩人コダーマのP」の異世界に飛ぶ


 何気なく 街角を曲がると、そこは雪国だった。


抜けるような南国の蒼い空


そして雪が降ってる……


と思ったら小さな豆粒ほどのウサギで、どんどんと降り積もったソレは、無言ではい登ってくる。


その向こうを純白のミーアキャットと白テナガザルが跳ねていく。


白い……悪夢……


ただ白い空間に、私は呆然として立ち尽くす。


その時、声がした。


「オフトゥゥゥン!


ああ!オフトゥゥゥゥゥゥン!」



爪弾かれるウクレレの音と陽気な歌声


振り返ると、そこにはヨーロッパに住むという伝説の吟遊詩人スナフキンのようなトンガリ帽子姿の、巨大な猫がウクレレを胸に歩いていた。


突然猫は足を止めると、正面を向いたまま小さく呟くように問いかけた。


「ユグノー戦争で非業の死を遂げた黒衣のとばりンヌのことは?」


辺りを見渡して見たが、この白い空間には、この猫と私しかいない。


猫は返事を待つように、じっと黙っている。


そしてひたすら足元から這い上る……ウサギ。


異常事態だ……


「あ……いえ」



ユグノー戦争のことすら遥かなる過去、テストの終了と共に置いてきた私は、とばりンヌなどという名は記憶になく、力なく首を横に振るしかなかった。


すると猫はおもむろに、ウクレレを持ち直すと


「夜のぉぉぉとばりぃ

黒きぃとばりぃぃぃ」


先ほどの能天気な明るさとは正反対の、涙を誘う切々とした声で、哀愁に満ちた歌を歌い始めた。


あんなに蒼く晴れていた空は掻き曇り、降っていた雪……もといウサギはやみ、どこからか薄く色づいた桜の花びらが舞い始めた。


ああ!なんてことだ!


胸の震えを抑えきれず、私は手にしていたゆず&シトラスラベンダーセージティーを啜った。


実は私には、恐ろしい呪いがかかっている。


本当はsakuraピーチ&ラズベリーティーフランペチーノも、ルビーベリーブロッサムも楽しんでみたかったのだが、スタバのカウンターで口を開くと、先ほどまで口の中で復唱していた言葉が溶けていき、パブロフの犬の如く、ゆず&シトラスラベンダーセージティーか、せいぜいキャラメルマキアートしか出てこないのだ……


私はその悲劇と共に、とばりンヌの死に涙した。


心が……震える。

いや、心ではない。


それは常識が崩れていく、脳の震えだ。


閉ざされた空間の中で、私はまだ猫の歌声を聴き続けている。



「吟遊詩人コダーマのP」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054918500507



こんな得体の知れぬポエムを作れる著者の頭をのぞいてみたい、と思うのは私だけではないはず。





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