12.読み専が案ずる親バカ問題

 本エピソードは少し厳しいことを書いたので、批判されるのが嫌いな人は次回をどうぞ。または自分のために作品を書いている人には関係のない内容でしょう。

――――――――――

 自分でも小説を書いてみて、一つ問題となるに気づきました。


 その名も「親バカ」(笑)(……ここは笑うところですよ!)

 

 はい、自分が書いた小説が、まるで我が子のように思え、そして、世界で一番素晴らしいと思えるのです。

 

 子供を持つ親の方はこの気持ちが理解できるでしょう。

 なぜか我が子が一番かわいいのですよね! しかも何か問題があっても、他人から何を言われようと、最後には「まあ仕方ないな~我が子はかわいい!」と大抵は許せるのです! 無償の愛ですね。

 

 もし子供を持っていない方。

 あなたが生み出したその作品に対する「自分の作品は素晴らしい」という思いは、実際の自分の子供に抱く気持ちと何ら変わらないのですとだけ言っておきます。

 

 そして、自作品を改稿しようとして読み返して、あまりにも面白く思って、何を改稿すればいいのか分からなくなったりしませんか? せっかく書いた文章を削りたくない、とか。

 私はなります。(技術が無いという問題は別に置いといてですね……)

 

 こういう、我が子や我が作品を無条件に素晴らしいと思ってしまう。

 それが「親バカ」という病気です。

 

 さて、この病気の本質は、自分の作品に対する思い込みが大きすぎて、、という点です。

 

 

 創作系の本を読むと必ず書いてある推敲の注意点、ご存じですか?

 

「書いた後、一週間、できればそれ以上空けてから推敲すること」

 

 要はそれくらい空けないと客観的に読めないのですね。そうなると冷静に文章を修正できないからです。

 推敲が重要なことは全ての作家の共通認識でしょう? ならば、それが正しくない状態が問題なのは分かりますよね?

 

 親バカとはつまり、このようなことです。

 

 私は今現在この問題に対する完全な処方を持ち合わせていません。それはプロや経験豊富な作家の方の創作論などを読んで参考にしてください。

 とりあえず簡単な方法は、間を空けて待つしかないかなと思います。

 もしくは誰か他の人に読んでもらう。ただ、それもある程度分かって読んでもらえる人が必要なので難しいかも知れませんが。

 

 書籍化では、担当編集さんがこの客観的に指摘するという役割をするらしいです。これが、単にWebに投稿することとの一番大きな違いでしょうか?

 

 

 さて、読み専としてこの問題を見た場合、大きく二つの問題点に気づきました。

 

 一つ目。推しの作家様や仲間の作品が、どれもすごくよく見えるようになってしまう問題。

 

 おそらく、親バカが親戚にまで波及した、甥や姪に対するのと同じ感覚かなと思います。推しすぎて、親と同じくらいの感情移入してしまっているのかも知れません。

 推しの作家様の書くものは全てすごいのだ……と。いや、ほんとにすごいと思うのです、実際。

 しかし私の場合は一応心理学的な自動ブレーキは働いています。

 まだ「我が子」ほどではないので、かろうじて客観視はできます。すごいと思っていても、一応問題点は見えますし、必要であれば指摘できます。

 

 

 二つ目。作者様が自作品への愛が深すぎてしまって作品の問題点が見えなくなっている問題。

 これが本エピソードにおける最大の「親バカ」問題です。

 

 その愛自体は何も悪くはありません。子供(作品)に対する愛は当然です。

 では、何が問題か。

 

 過剰な愛、過保護は、子供を甘やかしてダメにします。

 それと同じ事が起こるのが問題なのです。

 

 もし、書籍化を狙っているとします。もしくはもっと読んでほしいと願う。

 しかし、思ったよりもPVも星も伸びない。

 

 何か問題があるからですね。それ自体は仕方ありませんし、直せばいいだけです。

 ところが、作品に対する愛が強すぎて、周りが見えなくなっている。もしくは、無意識に見ようとしない状態になっている。そのせいで、何を改善しないといけないかが、いや、そもそも改善しないといけないという事実自体が、見えなくなっている。

 それが問題なのです。

 

 そういう場合が散見されます。

 

 

 もしこれが現実の子供なら、アドバイスしたりして、変わって成長していくのを助けるでしょう。甘やかすのは本当の愛ではない。時には厳しくする必要があると大体の親は分かっているはずですね。

 

 これが自分の書いた小説なら?

 

 改稿したり、フォーマットを修正したり、考え方を変えたり、テーマを変更したりして、新たな成長の可能性を見つけなければならない。市場や読者が求めているものは何か? 自分のテーマは何か? どうやったらすりあわせられるか? どうやって宣伝するか? 等など。

 そして、売れている小説はどんな風に書かれているのか? レーベルの傾向は? 等などの研究が必要です。

 

 親バカが進行すると、そういう行動が難しくなります。

 そして、さらに悪化すると……。

 

 読まれないのは読まないやつが悪いのだ。批判するのは単にそうしたいだけだからだ。批判されて傷ついた。サイトの仕組みのせいだ。コンテストは出来レースだ。妄想を書くのが小説だ。プロットなんか要らない。他の人もそうしている。有名な作者がそうしていた。

 不満を言い始める。全て人のせいにする。自分のやり方を正当化する。


 それでいいのでしょうか?

 

 子供の場合は、いずれ成長して、子離れして、自立した大人として離れていく存在なのだと自覚しなければ危険です。本当の親なら、自分がいなくなった後に子供が自立できるように育てるのが、真の愛でしょう。

 

 それと同じで、自分の作品も自立した「商品」として客観的に見て育てないと、その作品は日の目を見ないまま埋もれてしまいます。

 

 

「良い作品だから読まれるのではない。

 読まれる作品に仕上がっているから、読まれるのだ」

「読者は読者が面白いと思う小説を読むのだ。作者がどうやって書いたかなんて関係ない」

 

 こういう事実を受け入れて、自分の愛を昇華して、真実の愛に目覚めないと、いつまでたっても星の増加や、書籍化は難しいと思います。

 

 なお、「プロットを書く書かない」問題ですが、読者にとってはどうでもいいのです。できあがった作品の内容に一貫性があればいいだけです。

 そうではなかったら読者は途中で読むことをやめるだけです。

 プロットを書かずに、長編を一貫性持って書ける? すごいですね! その道を進んでください。

 読まれて売れるんだったら何だってOKです。

 

 しかし、肝に銘じておいた方がいいです。執筆とは、妄想をにすることです。

 今は脳内だけで書けても、いつかその方法では書けなくなる日が来ます。いろいろ試して習得するなら若いうちの方がいいですよ!

 

 

 ソフトウェア開発の世界では常識ですが、もし一人でもバグ報告=批判コメントをくれるということは、その背景に100人は同じ問題=感想を持っている人たちがいると見なした方がいいと思います。

 ほとんどの読者は黙って離れるだけですから。ということを認識しましょう。人を味方に付けましょう。丁寧に教えを請えばきっと親切に教えてくれます。その手の読者はなのです。

 大事なのでもう一度いいます。一人批判コメントがあるということは、その背景に100人同じ事を思っている人たちがいます。

 あなたはそれでもそれを無視するのですか? 

 

 読み専としていろいろな小説を読んでいますが、そういう作者の作品は、非常にもったいない。あと一歩! しかしその一歩が出せない。出そうとしない。マジでもったいない。少しこれを変えてアレを変えればもっと良くなるのに! と思ってももはや何も言えません。誰も言ってくれないでしょう。いや、褒められてちやほやはされるでしょうが。

 

 

 と、むっちゃ偉そうなことを書きましたが、要は、作品を見られるようになりましょうという事です。そして「商品」として仕上げましょう、と。

 できれば人の意見にすくなくとも耳を傾けましょう、と。

 


 そのためには、自分が親バカ状態になっているかどうかの確認と、自覚が必要です。

 

 できるだけ他者の作品を読みましょう。

 トップランカーの作品。星が三桁以上あるやつですね。もしくは書籍化された作品。もちろん紙の書籍を買ってもいいですね。

 それらと自分は何が違うのか、考えてみる。

 

 自分の好みの小説を探してみる。その過程で、自分が面白いと思うものと、面白いと思わないものの両方を読んでみましょう。

 面白いと思わない場合。なぜそう思うか考えましょう。

 それが反面教師になる可能性があります。

「人の振り見て我が振り直せ」です。「絶対的に客観的に見られる作品」を読んでみることはとても重要です。そして、その時の感覚を身につけて、自分の作品に対するときもそういう風に見られるようになると強力な武器になります。

 

 

 適度の親バカは健全です。自信を持つことは大事です。

 何でも過剰なのは良くないということです。

 あなたはどうでしょうか?

 

 

 なお、親バカにならない人もいますし、問題なくすごい作品を生み出されている作者の方々も大勢います。

 もしまだ成長途中だと自覚されている作者であれば、一度自分の状態を見つめ直してはいかがでしょうかという、読みまくりの読み専であり、作者としての気持ちを一応理解しているつもりの私からのアドバイス、というか参考意見だと思っていただければ幸いです。

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