9.読み専が惹かれる作家のこだわりとセンス

 どんな作品を好んで読むかと聞かれて、あなたはどう答えますか?

 まずはジャンルをあげるでしょう。

 SFが好き、とか、ラブコメが好き、とか?


 私も最初はそう考えたのですが、どうもしっくりこない。


 私はSFが大好きです。特にハードSF。

 そして異世界ファンタジー。まあでも、ファンタジーなら現代でも異世界でも正統派でもどれも好きです。

 ラブコメも、恋愛も、ホラーも、ミステリーも、エッセイも。

 歴史も、ハードボイルドも。

 R18も。

 子供向けも。

 絵本でさえOKです。わたしは『おまえうまそうだな』で泣けます。


 まあ、どんなジャンルでも内容でも読むのですよ。なので、ジャンルだけでは自分の好みを表現しきれない。

 それに、最近の小説は純粋に一つのジャンルだけなんてあり得ないですよね。


 となると、属性の組み合わせ?


 そういう意味では、私は、VRやAIがあり、かわいい後輩やメイドさんが出てきて、魔法で世界を救う系が大好きですね。

 生産系、主人公最強系も。アンドロイドとかも。

 または、胸がキュンキュンするような恋愛・ラブコメ。

 もしくは、壮大な物語。時空を越えるとか、人類の行く末を予言するとか。

 そして、ハッピーエンド。


 しかし、単に好きな属性があればいいのか?

 

 そうでもない。例えば単にAIが出てくればいいのか? そういうわけじゃないでしょう。アイデアた描写や表現力や文体が良くないと。

 

 では、好みの作者?

 確かに私には推しの作者様たちがたくさんいます。

 しかし、ではなぜその作者様たちが好みなのか?


 文体? テーマ? 性格?

 

 考えました。一体何が「この作品を読みたい!」という私の情熱の元になっているのだろうかと。


 そして、その答えとして思いついたのは、

 

「作者自身の固有テーマへのと、それを表現する、そして、その二つの作者が、素晴らしいアイデアを基に作品を書いていて、その作品が、私の好みの属性を含んでいる」


 そういう作品を見つけたとき。

 これだと思うんですよね。その瞬間「おー、これはすごい!」と思えるのです。そしてそういう作品を書いている作者に惚れるのです。

 

 作者の皆様、いろいろなこだわりがあります。心の中に保持する、心の奥底から訴えたい何か。意識せよ無意識にせよ、それは自然と小説に現れます。

 

 例えば、社会問題、恋愛、科学技術、アイドル、ロボット、変身願望。

 特定のジャンルの作品を多く各作者は、そのジャンルがこだわりであると明確ですよね。

 または、専門分野出身の作家はそれがその作者のこだわりでしょう。

 

 そして、そういうものを明確に持ち、それを作者自身の言葉でセンス良く表現するすべを持っている。


 真摯な優しい言葉、巧みな表現技術、面白おかしい、常に先端技術を紹介、情景が浮かび上がるような美しい描写、専門知識に裏付けられた内容、ドキドキやエロティック。

 

 そういう光り磨かれたセンス。

 

 この二つ、作者のこだわりとセンスがうまく融合された作者。

 昇華度合いが高い作者、と表現してみます。


 必ずしも「上手」な文章とは限りません。もちろんそれに越したことはないですし、公募に応募されるような方たちは、ものすごくうまいです。

 しかし、そうで無くても、その二つが明確で昇華度合いが高ければ、素晴らしい素地が出来上がる。

 

 その素地の上に、作者の気の利いたアイデアがちりばめられる。

 そうして出来上がった作品が素晴らしいと思えるのですよね。

 そういう作品を読むと、作者の思いがひしひしと伝わってくるのです。


 そしてそのアイデアが私好みの属性を含んでいる時。

 そういう作品に出会う奇跡。

 

 私はそういう作品たちを見つけだして読むことに心血を注いでいるのです。

 そういう作品に出会ったときの感動は、恋に落ちる気持ちと変わらないような気がします。

 ただ多くを読んでいるわけではない。自分が感動できる作品を日夜探し求めているのです。

 それが、狂ったように読みまくる読み専の原動力なような気がします。

 

 

 作者として、

 あなたは、何かこだわりがありますか? それは明確ですか?

 あなたは、そのこだわりを表現するセンスを磨いていますか?

 あなたは、そのこだわりを小説化するアイデアを集めていますか?

 あなたの、それらをうまく融合して、高く昇華できていますか?

 あなた自身はどんな作者のどんな物語が好きですか?


 たまには自問するのはいかがでしょうか?

 

 自分を見つめ直すいい機会であり、何のために小説を書き始めたか初心を思い出す機会であり、自分がどこへ向かっているのかを考え直すいい機会になると思います。



 なお、上記『私』を、『編集』や『レーベル』と置き換えれば、どうすれば書籍化への道が開けるかのヒントになるような気がします。

 結局は彼らは読み専のプロ中のプロ。

 彼らがどんなものを読みたいと思っているのか。それが作者の思いとどれくらい一致しているか。

 そういう観点も重要なのではないかと思います。

 

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