特別エピソード:タイトルの考察と印象のお話
今回のエピソードは、「読み専が見る『タイトル』」で紹介させていただきました、私の一推し作品「浮遊するランダムナンバー」の作者である西条彩子様による特別エピソードです。
皆様がタイトルを付ける際の参考になればと思い、西条彩子様に許可をもらって、ここに転載いたします。
西条彩子様のページはこちら:https://kakuyomu.jp/users/saicosaijo
本エピソードの元のページはこちら:http://veneerduck.net/web/diary/123
(なお、元ページはKYU-PLUSへの参加が必要です。誰でも参加できます。本小説を読んでいただいているあなた、ぜひ交流しましょう!)
なお、以下の「+」は要素の組み合わせ(つなげる)という意味になります。単語の順序は関係ないという点ご注意ください。
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はじめまして、西条彩子(サイジョウサイコ)と申します。
新作のタイトルに悩んで、作り方を一度見直そうと思いたち、備忘録的にこれを書いています。
私自身がタイトルをつけるときの選定方法は
・物語のキーとなる単語を書き出す
・つなげる
これだけです。
ではその『つなげ方』とは、どんな方法があるでしょう。
おおざっぱに以下のパターンが考えられますが、どんな印象があるかも踏まえて考察してみます。
・名詞
直球勝負。印象深い一方で、WEBだと埋もれがち。造語だと興味を引く。
例)奪取 グラスホッパー ソードアート・オンライン もののけ姫
・動詞
これも直球で印象強いけどWEBで埋もれるやつ。エゴサもしづらい。
例)ゆれる
・名詞+名詞
内容を端的に示せる。つなげ方で印象はがらりと変わる。意外性がないと『ふーん』で終わる。
例)日本以外全部沈没 姑獲鳥の夏 大砲とスタンプ 夏と花火と私の死体 殺意は砂糖の右側に
・名詞+動詞
動作を表すので、「何が何をする物語」か、「何で何が起きる物語」かなどを想起させる。これも意外性があると強い。
例)すべてがFになる はたらく細胞 今宵われら星を奪う 月の船でゆく
・名詞+形容詞・修飾語
センスの塊。文食いはやられる傾向がある一方で、イメージが湧かずスルーされることも。
例)月は無慈悲な夜の女王 限りなく透明に近いブルー あまりにも騒がしい孤独
・名詞+~したい・して
物語の終着地や方向性、主人公の願望を示せる。
例)かぐや様は告らせたい ライ麦畑でつかまえて
・名詞+否定形
物事を断定する否定形は、『なんだろう』と印象に残りやすい。
例)傘をも持たない蟻たちは 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 西部戦線異状なし
・名詞+仮定
否定形同様印象に残るが、こちらは『どうなるんだろう』となりやすい。
例)さもなくば喪服を 転生したらスライムだった件
・名詞+命令形
インパクト大。テーマ性が強い印象がある。拒絶反応を示される可能性も。
例)青を心に一、二と数えよ 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ カメラを止めるな
ほか
・あいさつ系
例)悲しみよこんにちは さようならギャングたち
・無分類
例)好き好き大好き超愛してる。 ものすごくうるさくて、ありえないほど近い 春にして君を離れ
タイトルに正解はありませんが、読了したそのときに『だからこのタイトルか』と思わせられるものは、総じて素敵だなあと感じます。
ターゲティングするための最初の顔でもあります。読む人は基本的に『好きなものしか読みたくない』ので、ターゲットを絞ったほうが親切だし、「こんな話だと思わなかった」と言われずに済むのです。
うまいな、とつい思ったのは『かぐや様は告らせたい』でしょうか。
『かぐや様』の時点でお嬢様や高圧的な人物の雰囲気があり、『告らせたい』と続くので、そう仕向けたくてもできなくてのたうち回るのだろうというラブコメ要素がひしひしと伝わってきます。
『すべてがFになる』も、理系やプログラミングをかじると『16進数かな』と発想しますね。
タイトルひとつで個性が出るので、なんとも面白いものですね。
ここまで書いてやっと新作タイトルも固まる気がしてきたので、それでよしとすることにします。
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さて、私のコメントを少し。
「読了したそのときに『だからこのタイトルか』と思わせられるものは、総じて素敵だなあと感じます」
これは、まさにそうです! タイトルに、「お!」と魅入られ、本文を読んで感動し、最後にタイトルの意味するところを理解する。
その瞬間、私はその作者のファンになります。
そのセンスの良さに惚れるのです。
ただし、これはプロットが完成しており、話し全体があらかじめ分かっていないとつけれないですよね。
つまり、この手の意味深なタイトルはよくできている作品を暗示していると思うんですよね。
あと、「ターゲットを絞る」という意味では「キーワード」をいれるというのは効果的ですね。
例えば、私も、VRとかAIとかメイ……とかのキーワードには、まるで光に集まる虫のごとく引き寄せられます。まあ、単純で効果的ではあります。
そして、もしそのキーワードが物語の重要な意味を示す場合、すごいと感じて、その作者のセンスに惚れるわけですね。
でも、タイトル詐欺の場合は、ちょっとその作者は……となります。そうなると、その作者の他の作品の信頼度も落ちるでしょう。
私的には、キャッチコピーには「名詞+仮定」、「名詞+命令形」が好みです。
タイトルだと、「名詞+動詞」、「名詞+形容詞・修飾語」が惹かれますね。
「名詞+名詞」は王道なような気がします。
皆さんも自分が好きと思うタイトル、または好きな作家が付けてるタイトルを分析して、それを元に工夫してみるといいかもしれません。
なお、なろう系ロングタイトルは、もはやツイッター並みの文章力が必要でしょう。作者の短文作成能力を存分に発揮し攻略しましょう。
西条彩子先生、有り難うございました!
次回作楽しみに待ってまーす!
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