不安や恐怖、僅かな期待……。


 複雑な心境を引きずったまま、夏祈と母親は再び高速に乗った。

 乗用車は、もうほとんど走っていない。来た道を戻っていく。

 派手なネオンをギラギラと輝かせながら、大型トラックが時々追い越していく。


「ママ、気をつけね」


 助手席から声を掛ける夏祈。


 何かを考えているのか、何も考えていないのか。母親はハンドルを握り締めて、ただ頷いている。


 背もたれを倒して、夏祈は目を閉じた。

 けれども、抜け殻のような聖也の姿が蘇ってきて、なかなか眠りに就くことができない。

 暇つぶしにツイッターを眺めてみるが、書き込むほどの気力もない。


 何かが止まっているのに、変わることなく流れていく妙な時間……。


 マンションの前に辿り着いた時には、ほとんどの部屋の灯りが消えていた。

 間もなく、深夜2時になろうとしていた。







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