君が何色か喩えるなら

君がなに色か喩えるなら

僕が染めた涙の色


僕と君の始まりは

なんでもない日常のひとコマ

働くことに疲れた僕らが

ようやく探しあてたオアシスだった


そして僕は気づかぬまま

君にすべてを賭けていた

君はそれを憎んでいたんだね

四六時中僕は

君を夢の中で押しつぶして惨めにした

これこそが終わりだ


君をなに色か喩えるなら

僕が染めた血の色


記憶喪失になった僕の

喪失した記憶の彼方から

君の面影がどす黒い

言葉と一緒に浮かび上がる

変色し切ったその古い言葉は

僕が君に投げたワガママ


君は傷つき果てて

レンゲ畑にいる夢を見たかい

白い胸に突き立った

僕が放った矢を抜くには

もっと強い愛情が必要だった

君は夜露で傷口を洗い

降り注ぐ神の恵みに身を横たえる


君がなに色か喩えるなら

僕が染めた哀しみの色


今ひとり僕は苦痛に身悶えしている

何故君の心に寄り添わなかった

何故勝手な理想の君にこだわった

君はもう帰ってこない

宝物は自分の過失で失うものだ


もう一度君の姿が見たい

僕の望みはそれだけなのに

僕の手は震え

君の写真を持ち上げることすら出来ない

僕の目は怯え

君の写真を見ることさえできない


誰かにもし「愛していたの?」と

聞かれたなら

僕は迷いなく「もちろん」と答えたろう

その誰かが、「それは支配」と

つぶやいたとしても


僕の心に色を付けるとしたら?



きっと誰もそんなことをしてくれない


s600122



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第3章詩はこころのおやつだったりくすりだったり 海乃もくず @uminomokuzuroompart2

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