第34話 心変わり
アレから、数時間。
俺達は未だ
「なぁ、ゴブ美ちゃん。俺さ……思ったんだ。どっかの下についてちゃ意味がねぇんじゃねぇかって。それによく考えてみると可笑しい」
「え、何がですか?」
「だって、初心者用の採取クエストだぞ?
「そう……ですね」
「そうだ、そう言われてみればたしかに可笑しいゾ!」
「だろ? どうもきなくせぇ気がする」
ないと思うが、シュメールの冒険者、あるいはテイマーは初心者の時点で黒蛇をいとも容易く
仮に英雄募集をしてるから元からある程度強い人材が入ってきやすいのだとすれば……初心者の時点である程度の実力があることを前提としているってことか?
「……分かんねぇな。だが、もしかすると何か裏があるかもしれない」
「そうですね」
「うん。それで、下についてちゃ意味がないっていうのハ?」
「あぁ、ちょっと……魔王に乗っ取られてる間、俺精神世界ってとこに行ってたんだ。そこで、親父と会った。親父と戦ったり、話したりして新しい力も手に入れた。その時にさ、俺の憧れの人と戦うことになったんだ。いや、本物じゃなくて作り物なんだけどさ。そこで気付かされた。憧れってのは視野を狭くする。憧れに向かって走るだけじゃ、結局その人の結末と同じ結果になるだけなんだって。だから俺、国の下につくの辞めるわ。もっと遠回りになっちまうだろうけど、俺だけの人生を歩みたい。俺にしかできない人生を。だからわりぃけど、戻ったら話断ることにするわ。爺さん……親父にも会いに行きてぇしな」
「そうですか……。まぁ、私はウィリアムさんに従いますよ。実際お爺ちゃんに色々聞きたい事が出来たのも事実ですし」
「うん。まぁ僕も別にいいんだけどサ、そもそも断れるの? 一回受けちゃったのニ」
「んー、分からん。でももうどっかの国の英雄になるってのじゃ満足できねぇんだよ。そもそも俺の最終目標は魔物と人間の差別を失くすってもんなんだぜ? 魔物殺してる国の下についてる奴があーだこーだ言っても意味なくね?」
「あ……うん。それもそうだネ。なんだか僕らって、寄り道ばっかりだネ。この際だから言うんけどサ、ウィルの英雄になるって目標、曖昧過ぎなんだよね。具体的にどうやってなるのかとか、どういう英雄になるのかとか。全然聞いてない。だからとりあえず英雄を募集してるってことでシュメールを推したんだけど……」
「あ、そういえばそうですね。誰かを助けたいっていうのは分かるけど、どんな英雄なのか全然わかりませんね。ていうかそもそも英雄って何なんだろう……」
「俺は……まぁ、グレートでクールなヒーローを目標にしてる」
「具体的にどんな感じなんです?」
「え、俺にこれを事細かに語らせたらクッソ長いよ? いいの?」
「別にいいです。今までのように何も分からないまま適当に走るよりはマシです」
「僕もゴブ美さんに同意だヨ」
「了解。んじゃまずグレートでクールなヒーローってのはな……」
それから暫く俺はグレートでクールなヒーローについて語り続け、
「……聞くんじゃ、なかっタ」
「……もういいです、十分ですから。御願いします」
最終的に2人が説明の中断を懇願してくるまで話が続いてしまった。
「え~、ここからがいいとこなのに……」
「だったらこれまでのは何だったんだヨ!! 話長すぎるヨ!!!」
「ウィリアムさん、もしかしなくても説明下手でしょ。長すぎてとにかく凄いしか伝わりませんでした。ていうかなんかもはや明るくないですか?」
「ん……? あ、そういえばそうだな」
「何がそういえばそうだなだヨ!!! 明るくなってきた、つまり朝になろうとしてるって事だロ!?
「あー、んじゃとりあえず帰ろう。ユーリとハルを迎えに行く。で、そのままどっかに逃げちまおう」
「あー、もゥ! とりあえずさっさとここから逃げよゥ! なんか色々問題はありそうだけド!」
そうして俺達は、脱兎のごとく洞窟から逃げ出したのだった。
剣士ウィリアムの幻想冒険記 滝千加士 @fedele931
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。剣士ウィリアムの幻想冒険記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます